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お題シリーズ2

ハコニア

作者: リィズ・ブランディシュカ



 あるところに、小さな箱庭の世界があった。

 その世界の王様は、同じ日々を繰り返す事をこだわっていた。

 だから、国民達が新しい日々に行きたいといっても、それを許可する事はなかった。


 新しい日々に行けば、便利な発明も増えるし、色々な事も知れるのに。

 人々はみな、不可思議に思っていた。


 しかし、どんなに国民達が説得しても、国王は首を縦にはふらない。

 なぜなら、新しい世界では王様の大切な人が死んでしまうからだった。


 王様の娘は、重い病を患っていた。

 その病は、時間の経過と共に進行していくため、王様は時を繰り返す事にしたのだった。


 新しい特効薬の発明も、治療法の開発も間に合わない。


 だから王様は、娘を死なせたくないというその一心で同じ日々を繰り返していた。


 その日にできる王様の全ての力で、娘を楽しませる。


 ありったけのお金で豪華な庭を造ったり、プレゼントを買ってあげたり。

 それらはすべて明日には、影響しないからこそ、出来る事だった。


 しかしそれは、何よりも愛する娘に、永遠の苦しみを味合わせる事でもあった。


 病状は変わらずとも、思い出は蓄積されていく。


 長い事、ベッドの上にいた娘は、とうとう苦しい日常を我慢できなくなった。


 そのため、娘に説得された王様はなくなく、新しい日々に踏み出した。


 小さな箱庭は崩壊し、繰り返しの世界が滅んでいく。


 そして、あたらしい世界では、王様は何よりも大切だった娘をなくしていた。


 国民達は新しい今日の中で、明日を夢見て歓喜していたが、王様の目には何もうつらなかった。


 娘の為だけにつくった過去の箱庭を思い描きながら、お墓の前で涙を流していた。



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