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お兄ちゃんを取り戻せ!  作者: 秋月真鳥
二章 呪われた子を助けながらお兄ちゃんと楽しく暮らします!
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44.おやつの時間の来訪者

「わたくしたちもご一緒してよろしいかしら?」

「私の分の席もあるかな?」


 おやつの時間、お昼寝から起きたヨアキムくんとファンヌがリーサさんと着替えていたら、子ども部屋に訪ねて来てくれたのは、お兄ちゃんのお祖母様とお祖父様だった。


「叔母上の結婚式なのに良いのですか?」

「カスパルとブレンダに任せて、少し抜けてきました」

「可愛い孫たちにも会いたかったし、そろそろ座りたかったからね」


 カミラ先生のご両親で、お兄ちゃんのお祖父様とお祖母様なのだから、正確な年は分からないが、60歳は越しているだろう。魔術を使っているのか若く見えるし、まだまだ元気な年齢だが、私たちに会う口実として、座りたいと言ってくれているようだと私もお兄ちゃんも気付いた。

 ビョルンさんが来てから、子ども部屋には大人用の椅子が増えた。普段カミラ先生とビョルンさんが使っている椅子に座ってもらって、お兄ちゃんも大人用の椅子に座って、私はちょっと大きめの、ファンヌとヨアキムくんはちょっと小さめの子ども用の椅子に座る。


「おやつ、スヴェンさん、おじぃたまとおばぁたまのぶん、あるかちら?」

「なかったら、わたしのぶんを、わけますね」

「気にしないで、お茶だけで構わないわ」

「みんなの顔が見たかっただけだから」


 もう盛装ではないし、髪も降ろしてしまったので、普段着で恥ずかしい気がするが、お兄ちゃんのお祖母様も、お祖父様も、気にしていない様子だった。運ばれて来たファンヌとヨアキムくんのお揃いのカップと、私とお兄ちゃんのお揃いのカップに、お兄ちゃんのお祖父様とお祖母様が目を細める。


「仲良しなのね」

「いつもお揃いのカップを使っているのかい?」

「わたしとファンヌのおたんじょうびに、かってもらいました」

「よー、うさぎたん、かってゆの。リンゴたーん? リンゴたーん?」


 ヨアキムくんに呼ばれて、大型犬くらいあるウサギのリンゴちゃんが、どすどすと部屋の中に入って来た。薬草畑にたくさん生えるようになった雑草を食べて、薬草は絶対に食べないようにとファンヌに躾けられているリンゴちゃんは、また大きくなった気がする。


「大きなウサギさんだね」

「どうつぶえんで、わたくちのにんじんたんのはっぱを、たべてしまったの。おおきくなったから、カミラてんてーがしょぶんされないように、もらってくれたの」

「カミラも優しいところがあるんですね。初めまして、リンゴちゃん」


 大人しくお兄ちゃんのお祖母様に撫でられるリンゴちゃんは、鼻息も荒く、目を細めている。薬草畑の仕事を今日は自分に任せられたのも、誇らしかったのだろう。


「おかさま! よー、おいけで、おかさまかってうの」

「ヨアキムくんは、金魚を飼っているんですよ」

「あの池の金魚はヨアキムくんのだったんだね」


 来てくれたお兄ちゃんのお祖父様とお祖母様の存在が嬉しくて、ヨアキムくんもファンヌも一生懸命お喋りをして、自分のことを伝えようとしている。おやつが運ばれてきて、食べるのに夢中になってヨアキムくんとファンヌが少し大人しくなってから、お兄ちゃんのお祖父様とお祖母様は、お兄ちゃんに分厚い帆布で作られたお財布を、私に小さな小銭入れを渡してくれた。

 何か重いと思ったら、中にお金が入っている。


「おにいちゃん、おかねだよ!」

「そんな、いただけません」


 遠慮する私たちに、お兄ちゃんのお祖父様とお祖母様は、少し眉を下げたようだった。


「カミラから聞きました。オリヴェル、あなた、アイスクリームも食べたことがないんですって?」

「買い食いくらいしていい年齢なんだから、自分のためにお金を使うことを覚えた方が良いと思ってね」

「自分のために、お金を……」

「わたしには、まだはやいです」

「イデオンくんも幼年学校に行くのでしょう? 自分の文房具が欲しくなったり、お菓子が食べたくなったりするかもしれないよ」


 私の父親が当主代理だった頃、お兄ちゃんは魔術学校の行き帰りに、こっそりと薬草市に寄って、薬草を売って貯めたお金をできるだけ使わずに、貯めていた。いつか逃げ出さないと、私の両親がお兄ちゃんを亡き者にしてしまう可能性があったからで、そのときのための貯えをしていたのだ。

 そのおかげで、下町に捨てられてもお兄ちゃんは雨露をしのげて、飢えずに済んだ。

 そんな経験があるだけに、お兄ちゃんはお金の大切さを知っている。


「カミラは子どもがいないから気付かなかったのでしょうね」


 学校に必要なものしかお兄ちゃんは買わず、食べ物など買い食いすることはなく、同級生がアイスクリームを食べていても、それを見ているだけだった。自分で作りたいと思ったのだから、同級生が食べているときに、お兄ちゃんも食べてみたいと考えたに違いないのに、取った行動は、自分で買うのではなく、お屋敷に戻って私と一緒に作ることだった。


「欲がないのは、美徳でもなんでもないんだよ。たくさんのことを経験して、世界を広げた方が良い」


 それを言うため、お財布と小銭入れをお兄ちゃんと私に渡すために、お兄ちゃんのお祖父様とお祖母様は、結婚式の披露宴の最中に子ども部屋を訪ねてくれた。

 綺麗な青から緑を通って黄色になるグラデーションの織りの帆布は、オースルンドの特産品だ。おやつを食べ終わった、ヨアキムくんとファンヌがお目目を丸くしてそれを見ているのに気付いたお兄ちゃんのお祖父様とお祖母様は、ヨアキムくんとファンヌに、赤からオレンジを通って黄色になるグラデーションのコインが数枚入るくらいの小銭入れを渡した。


「二人は仲良しだからお揃いにしたけど、ここに刺繍が入っているよね」

「どちらでも、好きな方を選んで?」


 片方には端っこに薔薇の花が、もう片方には向日葵が小さく刺繍されている。ヨアキムくんが薔薇を選んで、ファンヌが向日葵を選んだ。


「おじぃたま、おばぁたま、ありがとう」

「あいがちょ」


 小さな胸に小銭入れを抱きしめて喜ぶ二人に、お兄ちゃんのお祖父様とお祖母様は、コインを一枚渡した。小銭入れを開けて、二人はコインを中に入れてもう一度抱き締める。

 嬉しい来訪者が来た後は、朝に終わらなかった薬草畑の害虫駆除をして、夕方の水やりをして、部屋に戻る。

 夕食はカミラ先生とビョルンさんも一緒だった。

 子ども部屋のテーブルに着替えたカミラ先生とビョルンさんが座ると、ヨアキムくんとファンヌの背を、お兄ちゃんが押す。手を繋いでカミラ先生とビョルンさんの前に出たヨアキムくんとファンヌは、お兄ちゃんがレースで作ったポプリの袋をカミラ先生に手渡した。


「けっこん、おめでとうございます!」

「ビョルンさん、叔母上をよろしくお願いします」


 みんなで拍手をして祝うと、ビョルンさんの緑の目がうるうると潤んでくる。


「こんなに祝ってもらえて、カミラ様とも結婚出来て、私は本当に幸せです」

「これから、幸せになるんですよ」


 綺麗な顔を崩して泣くビョルンさん。その背中を撫でて宥めるカミラ先生の青い目も、潤んでいる。

 無事に結婚式も終わって、晩御飯を食べながら、私とお兄ちゃんは隣りの席で話をしていた。


「おにいちゃん、よねんせいになったら、あたらしくおようふく、つくってもらわなきゃ」

「イデオンは、入学式もあの服で良さそうだよね」

「にゅうがくしき? それ、なに?」

「幼年学校に入学する式典みたいなものかな。僕のときは誰も来てくれなかったから、イデオンのときには、ファンヌとヨアキムくんを連れて、行くからね」


 二人で話していると、カミラ先生が話に加わって来る。


「ちょっと、水臭いじゃないですか。私も行きますよ」

「私も良ければ」


 カミラ先生とビョルンさんとお兄ちゃんとファンヌとヨアキムくん。五人も入学の式典に来てくれるなんて、多すぎないかと私はドキドキしてしまうが、誰も譲る気はないようだ。


「可愛い弟の晴れ姿を見ないと」

「いでおにぃに、みるの」

「にぃたまには、わたくちがいないと!」


 ふんっと鼻息荒く言ったファンヌに、恐る恐るお兄ちゃんが問いかける。


「もしかして、ファンヌも幼年学校に入学するつもり?」

「にぃたまがいくのに、わたくちが、いけないわけがないの」

「いや、行けないから」

「えー!?」


 全く予想外のファンヌの言葉に、突っ込んでしまったお兄ちゃん。幼年学校のシステムをよく分かっていないファンヌは「なんで、にぃたまはいけるのに、わたくちが」と不思議そうな顔をしていた。

 あと数日で、私は幼年学校の一年生になる。

これで二章は終わりです。

イデオンの成長や活躍、いかがでしたでしょう?感想などいただけると励みになります。

三章もプチざまぁやちょっとした冒険があります。

三章も引き続きよろしくお願いいたします。


感想、評価、ブクマ、レビュー等、頂けるととても嬉しいです。

応援よろしくお願いします。作者のやる気と励みになります。

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