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お兄ちゃんを取り戻せ!  作者: 秋月真鳥
二章 呪われた子を助けながらお兄ちゃんと楽しく暮らします!
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43.カミラ先生とビョルンさんの結婚式

 結婚式の当日は、朝からカミラ先生もビョルンさんも大忙しだった。

 ルンダール領のみならず、カミラ先生はオースルンド領の次期領主でもあるので、貴族やカミラ先生のご両親にご兄弟がやってきて、ビョルンさんの方もご両親にご兄弟がやってきて、朝から結婚式の準備に取り掛かっていた。

 そんな日でも、薬草畑の世話は休めない。水やりだけでもして、雑草はリンゴちゃんに食べてもらうように頼んで、私たちも大急ぎで部屋に戻って、盛装に着替えた。

 いつも前髪を撫で付けているお兄ちゃんが、私の前髪も撫でつけて整えてくれる。


「すごく格好いいよ、イデオン」

「おにいちゃんも、すてきなの」


 蝶ネクタイの位置を直してもらって、シャツも皺のないようにスラックスに入れられるように整えてもらって、ソックスガーターも着けてもらう。

 ダークパープルの三つ揃いのスーツを着たお兄ちゃんは、物凄く大人に見えた。


「ちょっと腕周りがきつくなって、裾も短くなってきたかも」

「おにいちゃん、せいちょうしてるんだね」

「まだ15歳だからね」


 話しながらパーティー会場に行くと、黒髪の男女が近付いてきた。


「レイフ兄上にそっくり」

「レイフ兄上は、熊みたいだったからね」

「熊さんよりは可愛いよ」


 口々に言う二人に掴まってしまったお兄ちゃんだが、二人ともにこにこしていて、全然嫌味な雰囲気ではない。どちらかといえば、親し気な柔らかい雰囲気だ。

 黒髪に青い目、女性の方はカミラ先生に似ていて、男性の方はお兄ちゃんにちょっと似ている。


「カミラ・オースルンドの妹のブレンダと」

「弟のカスパルです。オリヴェルでしょう? 初めまして」


 ビョルンさんくらいの年齢だろうか、まだ若い雰囲気の二人に挨拶をされて、私とお兄ちゃんは頭を下げる。


「オリヴェル・ルンダールです」

「イデオンです」


 顔を上げたところで、子ども部屋からリーサさんに連れて来られたファンヌとヨアキムくんと合流した。ファンヌもヨアキムくんも、お目目を丸くして、カスパルさんとブレンダさんを見上げていた。


「カミラてんてーとにてるの」

「おりにぃにと、にてう」


 私が考えたことと同じことを、二人とも思っていたようだった。

 カスパルさんとブレンダさんは、にぃっと唇を弧の形にする。


「姉上が、自分が傍にいられないから、代わりに大事な子どもたちを守っていてと言われたの」

「姉上が夢中になるのも分かる。オリヴェルはレイフ兄上にそっくりだし、イデオンくんたちは可愛い」


 名前を告げていなかったことに気付いて、私はファンヌとヨアキムくんに挨拶をするように促した。黄色いふわふわのドレスのスカートを摘まんで、ファンヌが可愛くお辞儀をする。


「オリヴェルおにぃちゃんのいもうとの、ファンヌです」

「ふぁーたんのこんにゃくちゃの、よーでつ」

「ヨアキムくんなの」


 上手く自分の名前が言えないヨアキムくんには、すかさずファンヌの助けが入っていた。

 結婚式会場にリーサさんは使用人として、一番後ろでしか参加できないが、私たちは前に出なければいけない。

 ヨアキムくんにとっては、ルンダール家に来てから、初めての公の場になる。そんなときに、カミラ先生が傍にいないのは心配だと、カミラ先生はカスパルさんとブレンダさんに頼んでくれたのだろう。


「ずっと結婚しないって言ってた姉上が、急に結婚を決めて」

「両親は大喜びで、ルンダール領に当主代理として出して良かったって」

「オリヴェルとイデオンくんとファンヌちゃんとヨアキムくんが、二人を結んでくれたんだって?」

「私たちも、あやかりたいわ」


 良く喋るカスパルさんとブレンダさんに気圧されてしまいそうになるが、結婚式場でちらちらとヨアキムくんを見て「あれが呪われた子」「忌まわしい」と呟く声が、全く気にならなくなるので、逆にありがたかった。それを考えて二人は明るく話しかけてくれているのかもしれない。


「叔母上とビョルンさんが来るよ。イデオン、見える?」

「わたしより、ファンヌとヨアキムくんを……」

「ファンヌちゃんは、私が抱っこするわ」

「ヨアキムくんは僕が抱っこするよ」


 ブレンダさんとカスパルさんが申し出てくれたおかげで、私もファンヌも、ヨアキムくんも、背の高い大人たちに埋もれず、ヴァージンロードを歩く二人を見ることができた。

 カミラ先生は細身のマーメイドラインの薄水色のウエディングドレスで、豪華な刺繍の入ったヴェールを被って黒い髪を纏めて、小さなティアラをつけている。ビョルンさんは麦藁色の髪を撫で付けて、光沢のある明るいグレイのタキシードを着て、白い手袋を付けている。ヒールもあるし、カミラ先生の方が背が高いが、それも気にならないくらい、二人はお似合いだった。

 壇上に上がった二人が、誓いを交わす。


「わたくし、カミラ・オースルンドは、ビョルン・サンドバリを夫として迎え、健やかなるときも病めるときも、死が二人を別つまで共に生きることを誓います」

「私、ビョルン・サンドバリは、カミラ・オースルンドの人生を支え、苦楽を共にし、命ある限り愛することを誓います」


 ヴェールを捲って、ビョルンさんがカミラ先生に誓いのキスをする。手を叩いてそれを祝福すると、後ろの方から籠が回って来た。


「花嫁と花婿に祝福の花びらを撒くんだよ」

「行ってきて」


 どうやら、それは私たちの仕事のようだ。降ろされて、赤い絨毯の上に歩み出て、ヨアキムくんと、ファンヌと、私の三人で、カミラ先生とビョルンさんの横に並んで、花弁を撒きながら歩いていく。

 ビョルンさんの腕に腕を絡めたカミラ先生は、物凄く美しくて、幸せそうだった。

 結婚式の後の披露宴は、簡単な立食パーティーになっていて、薔薇園を見ながら、庭で行われた。お兄ちゃんとカスパルさんとブレンダさんの取り分けてくれる料理を、子ども用の座れるスペースで食べる。4歳になったばかりのファンヌや、3歳のヨアキムくんは、お皿を持ったまま立って食べるなんてできないので、テーブルにお皿を置いて、服が汚れないように首にナプキンを巻いて、フォークでお料理を突き刺してもぐもぐしていた。

 薬草畑の世話で朝は早かったし、披露宴ではカミラ先生とビョルンさんはお客様たちに挨拶をしなければいけないので時間は長くなるしで、ヨアキムくんとファンヌが眠くなった頃に、お兄ちゃんがカスパルさんとブレンダさんに一言告げて、先に退席させてもらった。


「すみません、ヨアキムくんとファンヌが眠いみたいなので」

「姉上には伝えておくよ」

「イデオンくんとオリヴェルも、もう戻って良いよ」


 快く送り出してくれる二人に感謝しつつ、眠りかけているヨアキムくんをお兄ちゃんが抱っこして、うとうとしているファンヌの手を私が引いて、子ども部屋に連れて行った。リーサさんも子ども部屋に戻っていて、お昼寝の準備をしてくれていた。

 着替えて二人がベッドに入ったのを確認して、私たちも部屋に戻る。

 楽な服に着替えていると、お兄ちゃんが「あ」と声を上げた。


「叔母上とビョルンさんの晴れ姿、撮影しておけばよかったね」

「そうだった! みとれて、わすれてた」


 せっかく立体映像を撮影できる魔術具を作ってもらったのに、着けていたがその存在を忘れていた私たち。本場の職人さんが記録映像として撮っているだろうが、どうしても二人の姿を写したい気持ちが出て来た。


「おにいちゃん、もどろう!」

「うん、戻ろう。イデオン、シャツ、出てる」

「あ、たいへん。かみもへんじゃない?」

「もう一回整えてあげる」


 着替える途中で巻き戻すように元の盛装に戻して、髪も整え直して、私とお兄ちゃんは首から下げたプレートのネックレスを指先で摘まんで、庭に向かっていた。

 群れる貴族の間を縫って、カミラ先生とビョルンさんの前に出て来ると、二人が私たちに気付いて笑顔になる。


「オリヴェル、イデオンくん、お祝いに来てくれたのですね」

「ファンヌちゃんとヨアキムくんは、お部屋に帰ったのですか?」


 喜んで私たちを迎えてくれる二人の姿を立体映像で撮っていると、白い手袋をしたカミラ先生が私とお兄ちゃんの肩を抱く。


「うちの可愛い子たちを見てください」

「私も入って良いんですか?」

「もちろんですよ、ビョルンさん」


 目の前には立体映像を撮る魔術具を構えた職人さんがいる。カミラ先生とビョルンさんと私とお兄ちゃんで立体映像を撮ってもらえて、嬉しくてにやけながら、私はお兄ちゃんと部屋に戻っていた。


「夕食のときにプレゼントは渡そうね」


 作ったポプリは、全員で渡したかったので、ファンヌとヨアキムくんもいる夕食のときに渡すことに決めた。今の様子では、カミラ先生もビョルンさんも、おやつの時間には解放されないだろう。

 今日のおやつは子どもだけかと思っていたら、意外なお客様が部屋にやってくることになる。

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