5話 ホルンパートの一日
すみません! 平日は予定が多く、投稿が遅れてしまいました!
今回は、少し部活中のようすにスポットを当ててみたいと思います。
5月21日 月曜日
あれから一カ月ほど経った。
4月の終わりごろに新入部員が入ってきた。
それから2週間ほどで、新入部員にパートが割り当てられた。
今はそこから一週間ほど経っていた。
「2年2組の鍵取ってきて!」
先輩が近くにいた二人に向けて指示を飛ばす。
「急いで行ってきます!」
そう言うと彼女らは譜面台とホルンを持ったまま、急ぎ足で音楽室を飛び出した。
吹奏楽部には「パート練」という、同じ楽器の人たち(パート)が一緒に行う練習があり、それが平日の大半を占める。
主に練習は各クラスの教室を使うのだが、今は2年生の教室5クラスしか練習に使えない。
それに対し、教室を使いたいパートは8つあるので、教室の鍵を取りに行くのは戦争なのである。
今も数人の生徒が鍵を取りに職員室へ向かっているのだろう。
裕司はその必要がないので、だらだらと廊下を歩いていくことにした。
基本的に鍵を取りに行く仕事は1年生がするのだ。
最初は2年生が手伝うのだが、今日は奈菜の当番だ。
ゆっくり歩いてきたので、2年2組の教室の前につくと、もう教室内から話し声が聞こえた。
裕司はドアを開ける。
そこにはいつもの光景が広がっていた。
「ねえねえ、いつ遊びに行く?」
「5月中は無理じゃない?」
「そうですね」
「じゃあ6月で予定空いてる日にしよっか」
「はい!」
「でさ―――」
練習もせず、駄弁っているパートの人たち7人の姿だった。
3年生3人、2年生2人、1年生2人だ。
つい一週間前に入ったはずなのに、もうここに馴染んでいた。
とりあえず教室に入る。
そこでパートリーダーの北野先輩がこちらに気が付いた。
「あ、ゆうちゃんきた!」
「どうも」
「みんな揃ったし、チューニングしてください」
「「「「「「はい!」」」」」」
「・・・はい」
北野先輩の言葉で全員がチューニングを始める。
別にやる気がないわけではないのだ。彼女たちはただ全員揃うまで待ってくれていただけだ。
とりあえず裕司も音を合わせる。
最初にB♭の音を、それが合えばFの音を。それから残りの音をざっと合わせていく。
「あ、ゆうちゃん終わった? 合わせよう」
声をかけてきたのは林先輩だ。
「わかりました」
先輩とB♭の音を合わせる。
「―――ちょっと音が広がってるから、もうちょっと息をまとめて」
「はい」
先輩からの指摘通り、息を調節してもう一度合わせる。
「―――あ、いい感じ。それ続けてね」
「はい」
その後、Fの音も合わせ、終了した。
そのタイミングで残りの人も終わったらしく、全員が席に座った。
ちなみに裕司以外の二人の2年生は、1年生の面倒を見ている。
裕司はそのレベルに到達していないということだ。要は、一番下手。
その事実を改めて突き付けられ思わずため息が出る。
だが仕方ないだろう。彼女たちは裕司が見る限りでも本当に努力していた。
(なんで、俺だけ・・・・・・)
頭では分かっていても、そんな思いが胸の中でうずく。
「じゃあ、みんなでB♭出してください」
北野先輩の言葉で我に返る。
「「「「はい」」」」
とりあえず返事をしておいた。
全員で出したB♭の音。
新人がいるからというのもあるが、少々音が合っていなかった。
裕司は小さくため息をつく。
音が合っていないことにではない、ここからの展開にだ。
「じゃあ、ツムツムしまーす」
「「「「はい」」」」
裕司以外の2.3年は返事をする。
「それ、なんですか?」
1年生の白石が首をかしげる。
「えっと、一人ずつ音を順番に積んでいくの」
「あ、わかりました」
それで納得したようで、白石ともう一人の1年生、前田もホルンを構えた。
「ほら、ゆうちゃん遅いよ!」
「あ、すみません」
裕司もあわててホルンを持ち直した。
ツムツム(通称)を終わらせた。
やはり音が聞きやすい分、合わせやすかった。
「うん、みんな合ってた、よきよき。でも、がんちゃんちょっと音高かったかな。で、ジャーキー音がなんか、ふにゃふにゃぁってしてた。もっとぶおぉぉって息入れて」
「ちょっと擬音多くないですか?」
思わずツッコんでしまう。
「でもこっちのほうが伝わりやすいでしょ?」
「まあそうなんですけどね・・・」
先輩はのんきな口調で言ってきた。
この北野先輩、言葉のチョイスがおかしいのだ。
擬音が多かったり、子供っぽかったり。
もちろんこのセンスはあだ名でも適用される。
さっきの「がんちゃん」「ジャーキー」は白石と前田のことだ。
白石は小学校の時のあだなが「岩石」だったらしく、それを聞いた先輩が考えた。
前田は小学校の時「無邪気」と呼ばれていたらしく、それをもじって「ジャーキー」にした。
こちらは奈菜の考案だ。
だが北野先輩は、オール5を取るような頭脳の持ち主らしい。
普段の言葉や行動からは全く想像できないが。
そして問題なのが、このパートの半数が似たような状況であることだ。
残りの先輩二人はもちろんのこと、奈菜やもう一人の2年生である三浦にも伝染している。
正直、常識人と呼べるのは1年生と裕司だけのようなものだった。
「結局みんなこんな感じかよ」
ぐるりとパートを見渡しながら裕司はつぶやく。
だが、口ではそう言いながらも、裕司はこの空気があまり嫌いではなかった。
こうして全員がふざけてて、裕司がツッコみで場を少し落ち着かせる。
たまにもめごとはあるけれど(基本原因は裕司)、このパートは楽しい。
そんなくだらなくもいきいきとした日常を、8人で過ごしている。
複雑な気持ちを抱くこともあるけれど、裕司はこのパートが好きだ。
裕司は誰にも見られないように、こっそりと笑う。
「じゃあ次Fください!」
「「「「はい」」」」
ホルンパートの8人が、それぞれ楽器を構えた。
「続きを早く出せ!」「この先どうなるか気になる!」という方は、高評価とブックマークしていただけると嬉しいです。
感想も送られてきたものを読み返したりして、元気をもらってます。
この土日で書き溜めして、次は投稿遅れないようにします!