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4話 これからの日常

 一話にまとめるつもりが、長くなってしまいました!

「もう疲れたー!」


 座って真っ先に、鈴音が家の壁にもたれかかる。


 今日も一昨日と同じように、鈴音の家の前まで来てしまった。


「テスト返ってきたからな」


「コンクールの楽譜も配られて、練習キツいしね」


 蒼や岬もそうらしいが、やはり鈴音と違い、別に壁にもたれかかるようなことはしていない。


 別に鈴音に遠慮がないというわけではないが。


「あ! テストで思い出した!」


 突然、奈菜が声を上げる。


「どうした?」


 奈菜はこちらに非難の目を向けてきた。


「明石が遮るからテストの点聞いてないじゃん」


「え、それ俺のせい?」


 裕司には心当たりがなかった。

 が、裕司が帰ることを伝えようとしたとき、そんな話をしていた気もした。


「まあ、それならごめん」


 自分でも適当な謝り方だと思ったが、恐らく裕司は悪くないので、それでとどめておいた。


「で、どうだったの?」


 奈菜は先ほどとほとんど表情を変えずに聞いてきた。


「まあ‥…いつも通りかな」


「いや、今回は自信あるから」


「じゃあ自分から言ってくれる?」


 人に聞くなら、自分から言うべきだ。

 これで少しは躊躇うと思ったが、そうはいかなかった。


「数学が八十点、理科が八十二点、英語は九十点だった」


 奈菜はあっさり教えてくれた。

 とりあえず、小さくガッツポーズをした。


「それ勝ったってことでしょ」


 奈菜がため息をつく。


「数学八十四点、理科九十二点、英語八十点」


「うわぁ、ムカつくわぁ、その顔」


 点数を言っただけなのに、周りからジト目を向けられる。

 特に岬はひどく、声にも出してきた。

 恐らく無意識のうちにドヤ顔でもしていたのだろう。


 しかし、岬の言葉に周りもうなずいている。


「何? 俺はテストの話に参加しちゃいけないのか?」


「「「「うん」」」」


 即答だった。

 しかし、裕司が彼等に勝てることなど、手先の器用さと勉強くらいのものだ。

 だから、多少は言わせて欲しかった。


 今回は聞いてきた奈菜にも非がある気がするが、みんなスルーしていた。

 それに、裕司の苦手な英語では負けているのに、それも忘れられていた。


 残りの人はみな「こいつらの後に言えるか!」みたいなことを言ってきたので、テストの話は終わった。

 だが、話題は尽きない。


「あれ、あの人さっきもここ通ってなかった?」


 鈴音が見ていたのは、60歳前後のおじさんだ。

 今度の話題は、目の前の道を通る通行人のようだ。


「私も見た気がする」


「俺らがここ着いたときにも通ってたよな」


 他のみんなもうなずく。

 裕司以外は気づいていたようだ。


「もう一回来るか待ってみようよ」


 その言葉から五分後。


 またその人が道路をゆっくりと歩いていく。


 全員が声を殺して笑っていた。


「なんで同じとこ何回も通ってんの?」


「わかんない」


 なぜかみんなの声は小さくなる。

 馬鹿にしているわけではないが、ずっとこの辺りをぐるぐると回っていると思うと、少し面白かった。



 そんなことをしていると時間はあっという間に過ぎ、もう六時半をとっくの前に過ぎていた。


「じゃあ俺、そろそろ帰るわ」


「あー、明石の家、厳しいもんな」


「じゃあ、私たちも帰ろっか」


 こういうとき、裕司の時間に合わせてくれることが、なんだか嬉しかった。


 カバンは背負ったままだったので、裕司は立ち上がるとすぐに歩き出した。


「んじゃ、また明日な」


 裕司はまったりとしたペースで家まで帰ることにした。



 家に着くと、裕司は制服のまま、ソファに倒れ込んだ。


「楽しかったなぁ」


 六人で他愛もない話をしていた光景を思い出し、思わず頬が緩む。


 彼等といるときは楽しくて、最初は不安だった気持ちも、大分安らいだ。

 あのことも、思い出さずに済んだ。


 だが、裕司が楽しいと感じた理由はそれだけではない。


「砂川さんと帰れるとか、幸せだよな」


 裕司は、岬が好きだ。

 気づいたのは二ヶ月ほど前。

「かわいいな」と思っていたが、部活で話すうち、意識し始めて、昨年度の3月頃には、好きになっていた。


 あまり話していないとはいえ、好きな人と一緒に帰れることが、どうしようもなく嬉しかった。


「また明日、か」


 薄暗くなった空を眺めながら、裕司は小さく笑った。

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