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中くらいの青春〜帰り道日記〜  作者: 明石 裕司
一章 六人の帰り道
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18話 男子の現状

 最近課題に追われていて、書く時間が全くありませんでした。

「は? 今日帰るのか?」


 部活に行こうとしたら、蒼に呼ばれて「今日部活休む」と言われた。


「すまん。今日用事があって。じゃあ、先輩に伝えといてくれ」


「わ、分かった」


 裕司の返事を聞くと、蒼はそのまま歩いて行った。


「砂川さんに伝えたほうが早いだろ……」


 同じクラスなら岬に言えば済む話なのに、なぜか裕司に言ってくる。

 その理由はよくわからないが、とりあえず部活に向かう。


 廊下を歩いていると、前を歩く奈菜と岬を見つけた。

 都合がいいので近づいていく。


「ねぇ、砂川さん」


「「うわっ!」」


 二人の肩が同時に跳ねた。


「そ、そんなに驚かなくてもいいじゃん……」


「いやだって普通に気付かなかったんだもん」


「お前影薄いんだよ」


 それに関しては自覚があった。後ろから話しかけると、たいてい驚かれるのだ。それに、「あ、明石のこと忘れてた」はよくある。

 別に傷つくことは無い。むしろ、ひとりで本が読めるので、それはそれで都合がいい。

 誰からも話しかけられないのは寂しいのだが。


「で、何? うちに用事があるんでしょ?」


「あ、うん……」


 やはり、目を見て話すのは緊張してしまう。


「生田が今日、部活休むってさ。先輩に伝えといて」


「は? なんで?」


「家の用事があるんだと」


「それ、うち知らないんだけど……」


 岬はイライラ半分、驚き半分みたいな顔をしていた。


「……なんでパートの人に伝えてないんだよ、あいつ」


 裕司はぼそりと呟く。


「それじゃあ、要件はそれだけだから」


 そして、足早に二人の傍を離れた。

 一応早めに行って、部長には伝えようと考えたのだ。

 せめて、蒼から言われたことは、果たすつもりだった。




 一方そのころ。


「……蒼、帰っちゃったんだ」


「岬ちゃん、寂しそうだね」


「そ、そりゃ、パートで2年独りだし……」


 奈菜はニヤニヤと笑っている。


 そんな会話が繰り広げられていることなど、裕司は知る由もない。




「ゆうちゃん、ここ、ずれてるよ」


「すみません……」


 今は点呼も終わり、パート練に移っている。


「ここみんなできてるよ?」


「は、はい……」


 先ほどから、マーチの裏メロで、どうしても間違えてしまう。


 いつもは明るいだけの先輩も、今日は怖く見える。

 やはりコンクールにかける思いは相当なものなのだろう。

 なんせ、最後のコンクールなのだから。


「ちょ、ちょっと一人で練習してきます」


 裕司は俯いたまま、立ち上がる。そして、そこから逃げるように教室を出た。


 廊下にあった机にホルンを置くと、その場にしゃがみこんだ。


「はぁぁ」


 深いため息が漏れる。


「なんでできないかなぁ」


 理由は分かっているのだが、どうしても文句は出てしまう。

 練習をあまりしていなかったことは、裕司自身が一番理解していた。

 自分なりにはしていたつもりだったが、やはり裏打ちをメインで練習しすぎたようで、こちらはおろそかになっていた。


「まあ、練習するしかないか」


 いつまでもこうしていたら、それこそ本当に練習ができなくなってしまう。

 裕司はよろよろと立ち上がり、楽器を手に取る。


 それから、少し遅いテンポで、指を動かし始めた。




「なんか男子がいないの久しぶりだね!」


「今日は蒼がいなくて彰も帰っちゃったしねぇ」


「……俺いるんだけど」


 今日の帰り道は、裕司以外男子が帰ってしまい、男女比1対3である。


 ふと奈菜が後ろを振り返ってきた。


「明石、今日大丈夫だった?」


「え? あぁ、一応独りで練習したから、ちょっと進んだよ」


「そう? ならいいんだけど。でも、練習ちゃんとしてね」


「分かったよ……」


 こうして言われると案外ダメージを受ける。

 奈菜と三浦は毎日しっかり練習していたので、今日も問題なくできていた。


「え、なんかあったの?」


「今日明石がね――」


 三人の会話を聞きながら、裕司は男子二人に心の中で応援要請を出す。

 が、当然届くはずもなく、裕司の気まずさを晴らしてくれる人は現れない。


 そこで裕司は、ひとりで帰ることにした。

 だがここで「俺帰るわ」と言ってもつまらないので、そっとその場を離れる。

 そして、曲がり角を曲がり、全速力で走りだした。


「あれ、明石?」


 そんな声が聞こえてくるが、無視だ。


「あ、いた!」


 奈菜の高い声が耳をついた。

 思わず足が止まる。いや、わざと止めた。


「……なんだよ?」


「勝手に帰らないでよ!」


 奈菜はちょっと呆れている感じだ。

 また構ってほしいアピールだと思われているようだ。


「ごめんごめん。分かったよ」


 そう言って近づいていく。

 結局、男子が一人のまま帰ることになってしまったようだ。


 本当は、誰かに声をかけてもらえることを求めていたのだが、この際これは秘密だ。


「それにしても、なんで木下は来なかったんだよ」


「彰はいっつも蒼について行ってる感じだから仕方ないよ」


「まあ、それもそうか」


 今は3人と1人ではなく、ちゃんと4人で帰っている。

 本当は今すぐにでも逃げ出したいくらい恥ずかしいが、耐えるしかないだろう。

 由美のことがあってから、女子に対して苦手意識を抱くようになってしまったのだ。


「蒼って、今日なんで帰ったのかな?」


「あいつは用事って言ってたぞ」


 奈菜は首を傾げた。


「何なのかは言ってないよねぇ」


「確かに、言われてみれば……」


 蒼は「用事がある」としか言っていなかった。

 だから、嘘の可能性は十分にあった。


「ま、明日になったら来るだろ」


「そうだね」


 明日聞こう、と考え、蒼のことを考えるのは一旦やめた。




 だが次の日も、蒼は部活を休んだのだった。

 ここからまた数日、投稿できない日が続くかもしれません。

 ですが終わったら、できるだけ早く投稿します。


「早く投稿してほしい!」と思ってくれたのならば、評価していただけると嬉しいです。

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