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中くらいの青春〜帰り道日記〜  作者: 明石 裕司
一章 六人の帰り道
18/45

17話 吹奏楽部の一大イベント

 ついに吹奏楽部に欠かせない「アレ」の時期が始まります。

「ついに発表されたな、()()の日」


「やっと、ってかんじがするね」


「みんなは、今のところ自信ある?」


「……ちょっと心配かも」


 今日の帰り道は、どこか暗い空気が漂っていた。

 帰り道も、全員が不安げな顔をしている。


 理由は今日、先生から伝えられた()()のことだろう。


「一カ月後か、コンクールのオーディション!」


 そう、コンクールの出場者を決める、オーディションだ。


「全国吹奏楽コンクール 中学校の部」は、出場できる人数が最大で50人なのだ。それに対して、この吹奏楽部の2,3年は合計で53人いる。原因は2年生が32人もいることだが。

 だからオーディションを行って、人数を削らなければいけないのだ。


「落ちる気しかしないよぉ」


 奈菜が弱気な声を出す。


「うちだって、まずいかもしれないよ……」


 岬も不安なようだ。


「一応言っとくけど、この中で一番下手なの俺だからね!」


 周りの浮かない顔を見ていると、ついそんな言葉が口をついて出ていた。

 努力してこなかったことが悪いが、裕司はこの中で一番下手だ。それは自信を持って言える。


 その言葉に対しては、全員が苦笑いを浮かべていた。

 その反応が一番傷つくのだが、全員分かっていそうな気がしたので、その言葉は飲み込んだ。


「でもさ、やっぱり一番は緊張せずにできるか、ってことじゃないか?」


 蒼がぼそりと呟く。


「あ……そうだね……」


 先ほどよりも全員の顔が暗くなる。比較的ましだった鈴音の顔も、落ち込んでいるように見える。


「あそこ入るの、緊張するんだよね」


「わかるわかる。先生の目、怖いもんね!」


「何よりもあれのせいで失敗しそう」


 オーディションは基本、先生3人と自分の3対1で行う。

 そこには普段温厚な先生もいるのだが、そのときだけ目つきが変わるのだ。

 その顔だけで足がすくむことは、去年経験済みだった。


「あれは、先生の顔見ないほうがいいぞ」


「もともとそのつもりでいた」


 蒼が食い気味に肯定してきた。彼はあの先生の目が苦手なのかもしれない。


「でも、外に同じパートの子とか先輩とかがいるのは心強いよねぇ」


 奈菜はこの空気を払いのけるような声で話し始めた。

 あえてこんな声を出しているのか、ただ単にバカなのかは知らない。


「ま、まあな……」


「……」


 しかしなぜか、その空気が変わることは無かった。 


 本当は、残り全員が「空気が重くなった……」と感じたのだが、裕司は全く気付かなかった。


「じゃ、じゃあみんな、これからコンクール練習がんばろ! みんなコンクール出よ!」


 半ば強引に奈菜が話題を変える、というか終わらせにかかってきた。


「そうだね、考えてても意味ないし、家で楽譜とか読も!」


「まあ、頑張ろっか。ほら、お前らも!」


 岬が軽く二人を睨みつける。


「……お、おう」


「……あぁ、分かったよ」


 男子陣二人は少し歯切れが悪いながらも返事をした。


「あー、俺そろそろ帰るわ。また明日な」


 こういうとき、こうして抜ければ「じゃあ私たちも」となり、重たい空気がまだましになるはず、と考えての行動だ。


「分かったよ。じゃあな」


 蒼は少しだけ口角を上げて、軽く手を振った。

 彰に関しては、今日しゃべったところをほとんど見た記憶がなかった。


 蒼の笑い方も、彰のことも、少しだけ疑問に思った。


 が、そのこともあまり気にせず、裕司は曲り角を左に曲がった。

 今回は、コンクール編のプロローグ、みたいなイメージで書きました。

 今度は誰の話になるか、予想はついたでしょうか。

 文章が少し粗いと感じてしまった方、すみません。

 いかんせん時間がないもので……。

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