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中くらいの青春〜帰り道日記〜  作者: 明石 裕司
一章 六人の帰り道
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14話 フラッシュバック

 久しぶりの投稿で、文章が長くなってしまいました。

 今日もいつも通り、部活が終わり、みんなで集まって帰っていた。


 鈴音が抱えていた問題が解決して、もう2週間ほど過ぎた。

 あれからピアノのほうは調子が出てきたらしく、できなかった曲もかなり弾けるようになっているらしい。

 今までうまくいかなかったのは、きっと精神的な問題だったのだ。

 しかしそれも今では解決しているようで、後輩たちと練習している様子を見る機会が増えた。その度に、彼女たちから「はい!」と威勢のいい返事が聞けるのだから、もう大丈夫だろう。


「それで、コンクール曲、どこ練習してるの?」


「ん~、ホルンはひたすら裏打ちしてるよ。岬ちゃんは?」


「うちらは、Cのところかな」


 コンクールのマーチで、Cといえば中低音の見せどころである。裕司としては、この低音だけでメロディーが演奏される部分は好きだ。ちなみにホルンの場合、その部分はずっと休みだ。


「じゃあ、彰のところは?」


「あ? 俺? メロディーより表打ちの練習やってる」


 あれから、少しだけ男女の距離が近くなったように思う。恐らく、会話の中心になっている鈴音が、後ろで駄弁っている男子に話題を振ってくるのが原因だろう。彼女なりに、もっと場を盛り上げたいのかもしれない。もっと、仲良くしたいのかもしれない。

 そう思ってくれるようになったのだから、いろいろ考えた甲斐があった。


 裕司はワイワイと騒ぐ会話を、すぐ横で見ていた。

 きっと半年前ならば、そっと逃げ出していただろう。そうしないのは、裕司が少しだけ変わったからなのかもしれない。


(まあ、忘れたわけじゃないけど)


「それでさ、この前あの子たち付き合い始めたらしいんだけどさ、みんなそういう話はないわけ?」


 完全に脈絡のない会話に、少々驚く。だが、考え事をしていて会話を聞いていなかったので、裕司以外の頭の中では繋がっているかもしれない。


「いきなりすぎだろ……」


 どうやら、本当に突然だったらしい。鈴音は思いついたことがすぐに口から出やすいようだ。


「で、どうなの?」


「今のところはないかな。別に恋愛とかする気ないし」


 蒼はこういうところが冷めている。恋愛などにあまり興味がないようだ。


「つまんないの。ね!」


 それは全く同意見だ。

 蒼と対照に、裕司は恋愛系の話は大好物だ。買った本も8割は恋愛小説や漫画だ。

 当然、リアルでも誰かが恋愛しているなら見てみたい。そして、応援したいと思っている。


 ふと、鈴音の視線が不自然に動いた気がしたが、気のせいだろうか。


「それじゃあ、彰とか明石はなんかないの?」


 蒼と彰は、二人ともみんなから名前で呼ばれる。当然女子も例外ではない。

 本人たちも認めているようで、別に嫌がったりはしていない。

 二人を苗字で呼ぶのはこの中だと裕司だけだ。


「俺もないな」


 彰は煩わしそうに答える。

 彰は一年生の頃に彼女がいたようだが、別れたそうだ。ちなみに彰はまったく気にしていない。


「俺も、今のところは特にない、かな」


 大嘘だが、まあ多分バレないだろう。


「え、裕司好きな人いるの?」


 なぜバレたのだろうか。


「いや、いないよ、別に」


 今は、岬とどうこうなりたいとは思っていない。

 好きなことに変わりはないが。


「え~、ほんとかなぁ?」


「さっきからなんでそう思うわけ?」


 すると鈴音はあっけらかんとして言った。


「いや、顔赤いし、そうなのかなって」


 裕司は反射的に頬を触る。触れた感じ、いくらか温かかった。

 どうやら顔に出ていたらしい。


「それより、そっちはどうなの?」


「え、鈴音? 今は特にないよ?」


「じゃあ砂川さんとか高村さんは?」


「……知らないの?」


 突然の言葉に驚く。一体何を知らないというのだろうか。

 裕司が首をかしげていると、鈴音が「あ、そうか」という顔をした。


「知らないならいいや」


「そこまで言われたら気になるだろ……」


 裕司の言葉も聞かず、鈴音はまた女子たちのほうへと歩いて行った。




 結局、今日も鈴音の家まで来てしまった。


「さっきの話の続きだけどさ、もし彼氏か彼女ができたら、何したい?」


 鈴音は毎度毎度いきなりすぎる。恐らく「さっきの続き」だから「恋愛の話の続き」ということなのかもしれない。


「う、うちは、そのときになってから決める」


「私は、お弁当作ったり、一緒にどこかお出かけしたりしたいなぁ」


 反応は真逆くらいだ。照れているのか分からないのか知らないが意見を言わない岬と、理想をもってそれを堂々と語る奈菜。


「俺はゲームしたい」


「家でだらだらしたい」


 反対に男子は同じ反応だ。きっと「彼女つくるくらいならゲームしてたい」人種なのだろう。

 裕司はどちらかというと、恋愛がしたい派だが、この際黙っておこう。


「じゃあ、()デートか」


 一体何をどう汲み取ったらこうなるのか聞きたいくらいの内容だった。

 一瞬、胸に重さが押し寄せてきたが、堪えられた。


「えぇ、めんどくさい」


「なんで女子と二人で自分の部屋に居なきゃいけないんだよ」


「まあまあ、そう言わずにさ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「――っ!」


 鈴音の言葉を聞いたとき、裕司の頭の中に、あの日の光景が浮かぶ。

 その言葉が妙に具体的だったのが悪いかもしれない。


「ゲームは一人でやりたい」


「でも、ちょっとくらいなら、楽しいかもな」


 そうしている間にも、裕司の頭の中に、表情と声が鮮明によみがえる。

 段々、胃のあたりがムカムカしてきた。喉は何かがつっかえたみたいだ。出そうとしても出ない状態が続く。


 裕司は腹を押さえながら、すぐに立ち上がる。


「ちょっと、俺今日は帰るわ」


「え、またぁ?」


「まあ、ちょっと学校で提出のものが終わってないの思い出してさ。帰らないと」


 それだけ言って、相手のサヨナラも聞かず、裕司は走ってその場を後にした。

 物語を動かしながら、人物紹介をするのは難しいです。

 何人かの性格が少しわかっただけで、ほとんど誰の容姿も伝えていませんね。

 いつか伝えられるようにします。

 一学期終わったころに、一度人物紹介の回を入れる予定です。(時期は未定です)

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