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中くらいの青春〜帰り道日記〜  作者: 明石 裕司
一章 六人の帰り道
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9話 計画実行

 帰り道での並び方は、いつもと同じ。

 前で女子たちが話している。


 普段ならば寂しい気もするが、今日に限っては都合がよかった。


「生田、木下」


 声のトーンを落として、二人に呼びかける。


「あ? 他のやつに聞かれたくない話でもあるのか?」


 一瞬で裕司の意図を察してくるあたり、彰はかなり鋭い。

 ちょっと太っているのに……というのは裕司の偏見だろう。


「まあそうなんだよ。神田さんのこと」


「昨日のことか?」


「まあそうだ、ちょっと分かったことがあってな」


 裕司は今日見た光景をある程度話した。

 鈴音が怒鳴ったことは話したが、あの沈んだ表情のことは、言う気になれなかった。


「……そうか、やっぱりうまくいってなかったんだな」


「返事もしないのはヤバいな」


 蒼と彰はそれぞれ表情を曇らせる。


「神田さん、かなり悩んでたみたいだからな」


 裕司は軽くため息をつく。


「あれじゃ自信なくしても仕方ないよ」


 ちらりと前を見る、そこには、奈菜と岬と話す鈴音がいた。

 彼女たちは仲良さげに話しているが、やはり鈴音の元気がないように見える。


「できれば今日、解決できるといいんだがな」


 そのつぶやきの実現は、裕司以外の四人に任せることにした。




 鈴音の家の前につく。

 予想通り、鈴音はそこに座ろうとせず、ドアノブに手をかける。


「みんな、鈴音、今日も帰るから―――」


「待って!」


 鈴音の体が固まる。

 声を発したのは、奈菜だった。


「なんで、最近すぐ帰ろうとするの? なんでそんなに落ち込んでるの? 何かあったの?」


 奈菜は鈴音に訴える。

 それを聞いた鈴音は、戸惑うような笑みを浮かべた。


「や、やだなぁ、何もないよ」


「なんでそんな顔するの? なんで私たちに話してくれないの?」


 今の鈴音の顔は、誰が見てもわかるほど歪んでいた。


 奈菜の言葉は言いすぎだと思った。あれだけ言えば、かなりのストレスになってしまう。

 だが今回は、それくらいのほうが効果的だ。

 明るく振る舞うよう努めている彼女に折れてもらうには、彼女が「限界だ」だと思うまで追い詰めるのが一番いい。


 それに、きっと奈菜は演技などではなく本心であの言葉をぶつけている。

 どうせ、それを止めることは誰にもできないのだ。

 裕司としてはもう少し冷静にやってほしかったが、これはこれで悪くはなかった。


 どこか泣いているようにも聞こえる奈菜の声。

 それに押されて、鈴音が今にも泣きそうな表情になったとき、横で靴を引きずる音が聞こえた。


「それ、部活のこと?」


 鈴音のほうに一歩近づいた蒼は、鈴音の目をじっと見つめた。


「……」


「そうなんだな?」


 鈴音が首を横に振ることはない。

 それは肯定ということだろう。


「それは、後輩のこと?」


 鈴音がバッと蒼のほうを見る。

「なんで知ってるの?」とでも言いたげな顔だ。


「原因は、それだけじゃないんだろ?」


 鈴音の目が、さらに見開かれた。


「もうだいたい分かってんだ。だから、もう話してもいいだろ」


 鈴音はうつむいてしまう。

 ぐっと何かを堪えるように。


「もうさ、ひとりで抱え込まなくていいんだよ?」


 だが、その奈菜の言葉で、鈴音の堤防は決壊した。




「……もう、落ち着いた?」


「……う、うん」


 奈菜はにっこりと笑う。


「よかったぁ」


「ごめんね、心配かけて」


「ううん、いいんだよ」


 岬も鈴音に微笑みかける。


 今、鈴音の周りを囲んでいるのは奈菜、岬、蒼の三人だ。

 裕司と彰は離れた場所に座り、鈴音が泣き止むのを待った。


「みんなにも言われちゃったし、話してみようかな」


 鈴音は先ほどとは打って変わって、照れたような笑みを浮かべた。


「分かった、聞くよ」


 それを聞いた鈴音は、目を腫らしたまま、ここ一週間ほどのできごとについて、話し始めた。

 今回はサブタイトルを決めるのが難しかったです……。

 別に計画を立てていたわけでもないのに「計画」と言ってしまっていますからね。

 次からは鈴音視点です。

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