第4話 裸の女
ポイント、レビューありがとうございます!
荒涼と乾ききった砂漠を進む。
晴れ晴れとした天気だけがこの砂漠を進むうえでの幸いなことの一つだろう。
これで砂嵐などの荒れた天気などであったのなら砂漠の探索はもっと大変なものになっていたことだ。
「さて、天気の幸運を『掴む』ことはできたか。あとは何か金目のものがみつかるといいんだが」
その辺の幸運を掴むのは難しいことじゃないが、良いモノとなると俺の幸運次第になる。
俺の才気は、『掴む』なのだから、物質的な物体を念動力のように掴むことのほかにも幸運を掴むや、コツを掴むなんてことにも使えるのだ。
これに気が付いたのはこの6年の探砂師生活の中だ。もっと早く気が付いていたら、チートを失うなんてことにはならなかったかもしれない。
――既に終わったことだな、今は探索に集中しよう。
パーティー追放なんてことがあって感傷的になってるらしい。
「ふぅ……」
一度、リセットするように息を吐く。熱気に頬を汗が流れて落ちていった。
荷物を背負い直し、再び俺は砂漠の行軍を開始する。
街の近くにあるものなんて大したものはないだろう。既にこの辺りは先輩探砂師たちが粗方掘りつくしてしまった。
狙うは流砂などで深部から流れついてきた漂流物だ。砂漠深部から時折、そういった希少な品などが流れてくるのだ。
「あったあった」
幸先良く、俺は漂流物を見つける。
「がらくた、というか、死体、だなこりゃ」
砂から突き出していたのは手だ。乾燥してミイラのようになってしまった何者かの手である。指輪もなければ服などもない。
既にはぎ取られたあとか、砂に巻かれてどこかに散ったか。
金にならないのならこのままだ。思うところがないわけではないが、死体を持ち帰ったところで一銭にもならない。
ミイラ化してしまった死体の身元を調べるのだって楽にできることではない。金もかかる。
そこまでしてやる義理はない。
「せめて成仏だけはしていてください」
夜になって起き上がられては困る。一応、亡者対策の聖水を振りかけて手を合わせておく。
それが最後の一押しになったのか、既に死体として時間が経ち過ぎていたためか。
ミイラはばらばらと崩れて風にのって飛んで行ってしまった。あそこまで塵になればアンデッドとして復活することはないだろう。
良かったとは思うが、聖水が勿体なかったかな。などと思ってしまう。
「まあいいか」
聖水は教会で買える。アンデッドと戦って命を落とす可能性が少し減ったと思えば良い。
「今度は干物じゃなくて瑞々しいものでも見つかってほしいものだ」
などと軽口を言いつつ、さらに砂漠の奥へ向かって隠れながら進む。
歩きであり一人だからかなり気を遣う。
どこから敵が出てくるかわからない以上、警戒を解くことはできない。これがまた精神に疲労を蓄積していく。
途中、何度か魔物と遭遇しかけて慌てて物陰に隠れながらなんとか、中層と呼ばれるような領域の入口マでやってきた。
「ん?」
そこで何か埋まっているものを見つけた。
「今度は金目の物がいいなって――」
そこに瑞々しいものが存在していた。
確かに瑞々しいものでも見つかればなどと軽口を言ったが、フラグの回収が早すぎるだろ。
俺の目の前に瑞々しい裸の女が埋まっていた。
死んではいない、生きている。
同時に怪物でもない。この砂漠の支配者として闊歩している魔物ではないようだ。
「砂に埋もれてからそう時間が経っていないからか、それともこの女が頑丈なのか……どちらにせよ、こんなところで生き埋めになりかけているのなら自殺者か?」
この世界にも自殺はある。たまに何もかも嫌になって城塞から砂漠に身を投げるらしい。
6年前までは魔王との戦いで自殺など殆どなかった。いや、自殺する暇もないくらい人が魔物に殺されていた。
そんな戦いが終わって平和な世の中になったというのに人はまだ死ぬ。いいや、むしろ平和になった方が人は死ぬのかもしれない。
平和だからこそ、人は自らの手で死を選ぼうとする。生きるのに必死になっている時には、自殺しようとする者はいない。
少なくともあの当時、最前線ではそうだった。
余裕がある後方では、もういやだと死ぬ者もいたそうだけど、最前線では誰もが必死に抗っていた。
「……さて、どうするか」
砂漠で見つけたものは税に収めたり、依頼主に提出する以外は自由にしていいという取り決め、暗黙の了解がある。
そうでなければこんな場所には誰も来ない。リスクはあるがそれ相応に稼げるとなっているからこそ、こんなくそったれな場所に訪れるものがいるのだ。
それが女の場合であっても同じ扱いになる。
奴隷商などはそれを利用してうまいことやっているやつもいる。
それが自殺者なら好き勝手したところで誰もなにも言わない。
改めて女を見る。
太陽のように輝く金髪は癖が多いが十分美しい部類だ。なにより肌に傷一つないし、引っ込むところは引っ込んでいて、出るところはそれはもう特大に出ている。
――なんだこの胸、すげえな……。
「…………」
日本にいた頃ならそんなことやめろなどと正義感に基づいた行動でもしているところであるが、異世界に取り残されてもう6年だ。
すっかり価値観は異世界寄ってしまっているらしい。
だが、こんなところでお楽しみできるほどの胆力は俺にはない。ここは砂漠の真ん中だ。
魔王が残した怪物がいまだに徘徊を続け、人を襲う盗賊が我が物顔で他人を踏みつけ奪う。
こんなところでどうして気が抜けると言えるのだろうか。抜けるはずがない。ライたちは気を抜きっぱなしだったが俺には無理だ。
「なら、持ち帰るしかないか」
収集物としてなら見目も良い。
奴隷商にでも売ればそれなりに高値になるかもしれない。
何か技能があれば、自分の奴隷にして使えばいい。どちらにせよ、多少は労力に見合ったものにはなるはずだ。
ただ助けたいわけじゃない。
もう助ける意味も、助ける価値も、助けることに見出す意義も、なにも俺は持ち合わせてはいないのだ。
だからこれは純粋に得になるからやっているだけ。
裸の女を毛布でぐるぐる巻きにしてやって肩に抱える。
抱えた彼女は、羽のように軽かった。
ポイントとレビュー、感想までもらえて嬉しいから更新でっす!
主人公はそれなりに色々あったのでスレてますねぇ。
それでも根っこの部分ではお人好しではあるのですが。
まあ、それはさておき、裸の女ことヒロインかもしれない誰かが登場です。
果たして彼女は何者なのか!
まあ、それはさておきもっとポイントとレビューと感想が欲しいと言っていくスタイル。
おら、もっと燃料やるよ卑しい豚め! って人はじゃんじゃんポイントやらレビューやら感想やらください。
よろしくお願いしまーす!