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第21話 ダンジョン内感知――

新章2発目ー


そして、19話を投稿し忘れていたので割り込みで投稿して起きました。

 超巨大なダンジョンが轟音をあげ、砂を嵐のように吹き荒らしながら歩いている。

 一歩、ダンジョンが踏み出すだけで砂丘は崩れ、地震のような振動が巻き起こる。砂漠でなければ、甚大な被害がでることだろう。


「うわー、あれがダンジョンですか! 初めて見ました!」


 リリアはとても良い反応をしていてぴょんぴょん跳ね回っている。


「ああ、あれがダンジョン。そして、迷宮だ」


 ダンジョンという生物がいる。

 それは巨大な亀みたいな生き物なのだが、甲羅の上や中には迷宮と呼ばれる巨大な空間が広がっている。

 その中には金銀財宝があってどうしても稼ぎたい、でも砂漠はちょっと……という探砂師たちが挑みに行ったりする。

 砂漠と同じく魔物が出て、倒すと消えて魔石を落とす。素材ははぎ取れないが魔石は様々な燃料になるため高値で売買される。

 ラーシャナの街の近くにもいくつか存在しているが、今回のこいつはまったく新しいダンジョンで迷宮だ。


「新発見ってのはロマンがあるな」


 それに金を稼げる。

 誰にも荒らされていない迷宮というのは、まさしくお宝の宝庫。それを見つけて持ち帰ればどれだけの価値になるか。

 捕らぬ狸の皮算用とはよく言ったものだが、荒らされていないのならあながち間違いでもない。


「さて、行くぞ」

「はい!」


 これまたリリアに抱えられ、俺は迷宮へと侵入を果たす。

 中に入れば不思議とダンジョンが歩いたことで生じる振動はなくなり、異なる世界の扉をくぐったかのような空気の変容を感じる。

 形容するならば、さながらそれは生まれてくる赤ん坊が産道を押し広げて外界に出るかのような、そんな期待が入り混じった不安だろうか。


 今まで自分がいた場所とは違う場所に入るという感覚。

 空気が切り替わったかのように雰囲気が変わるのだ。騒がしいダンジョンの移動音が遠く離れ無音の大騒音が奏でられるようになる。

 無音という名の大音量が支配する領域は空々しく、等間隔に並べられた松明があげる熱量と薪の爆ぜるわずかな音が次第に大きくなって、迷宮という場所に入ったということを教えてくれる。


 ここは異界だ。迷宮という名の異界。人智及ばぬ黒く彩られた空間を前に人はちっぽけだ。

 否応なく感じる不安に恐怖といった感情は勇気という心持を食いつぶそうと燃え上がる。

 だが、俺はひとりではない。


「リリア、大丈夫か?」

「うぅ……くらくらするぅ……」

「はは。まあ、慣れないと気持ち悪いよな、迷宮に入る感覚」


 酒に酔うような感覚があるのだ。慣れていないと気分が悪くなる。

 くらくらするのは珍しいがどうにもリリアはことさらこういうのが苦手らしい。


「うぅ……ごめんなさい……」

「謝らなくていい。落ち着くまでここで待ってろ少し調べてくる」

「うぅ……はい……」


 くらくらしているリリアを入口に座らせておいて、俺は少しばかり周囲を探索する。

 地面に顔をこすり合わせるくらい近づければ、わずかな砂の堆積の違いを判別できる。ほこりやその他の具合からして間違いなく船長の娘さんはこの中に入っているようだ。


「入り口付近でしばらく動き回って大丈夫そうだから奥に行ったか」


 わずかな足跡から船長の娘さんの行動を予測する。

 争った形跡や魔物の痕跡は入口付近だからかない。少なくともここを無事に通り抜けて奥へ行ったはずだ。

 魔物の気配も今のところはない。


「ダンジョンが、移動中だからか、魔物がまだいないのか?」


 もしそうなら大発見だ。

 移動中のダンジョンを見つけたら率先して乗り込めば、魔物に阻まれずに探索が出来るということなのだから。


「まだ入り口だからな、楽観はできないか」


 リリアの息遣いと自分の息遣い以外、松明の燃える音しかない大迷宮の入口。


「ふぅふぅ……よし! ツカサ様、もう大丈夫です!」

「それじゃあ、奥に進もう。どうにも奥にいったらしいからな」

「はい!」


 さて、ついでにお宝ももらえるだけもらっていくとしよう。

 幸運を掴んで魔物を避けつつ、お宝も探す。幸運であれば船長の娘もすぐに見つかるだろう。

 できれば死体で面会などしたくないものなので、なるべくは船長の娘の痕跡を優先して辿る。


 迷宮の中は暗いが、用意に不足はない。どれほど情報を集め、準備できたかが探索成功の肝。今回はこの迷宮に対しての情報はほとんどない。

 だが、迷宮としての一種のセオリーは存在している。迷宮をつくるのはダンジョンという生物である点を鑑みれば、種族としての法則を持つのだ。

 それに則っておけばある程度の予測がつけられる。


 1、迷宮には必ず階層というものがある。その内部が遺跡であったり、どこぞの平野であったり様々であるが、どこかに必ず下に向かう階段が存在する。

 2、魔物は階層ごとに出現する種類が決まっていて、倒したとしても一定間隔で再出現する。その際、魔石を落とす。

 3、次に下へ降りていくほどに階層は広さを増す。ただし限度はある。そして、下へ行くほどに魔物は強力になっていく。

 4、一定階層ごとに階層主と呼ばれる階段を護る強大な守護者が配置されている。

 5、宝箱が設置されており、中には宝物が入っている。階層が下になるほど良いものが入っている可能性が高い。一定周期で再配置される。


 概ねこの5つが迷宮に共通する法則だ。まだ細かい部分などはあるが、これさえ分かっていれば問題はない。

 あとは実地でやっていくしかない。これぞ探索者という感じである。

 今回はリリアがいるということもあって、ほとんど死ぬ可能性は低いから楽しむことが出来るだろう。

 まったく言ってて悲しくなるが、力とは楽しむ余裕を与えてくれるもの。強すぎるからと文句を言うのはお門違いだ。


「わぁ、これなんですか、綺麗です!」

「む」


 ふいに静けさの中にリリアの声が差し込まれる。

 リリアが見つけたのは、壁に張り付いた光るなにか。粒上だったり棒状であったり様々な形をしたそれ。ヒカリゴケではないが、似たような発光で松明とともに迷宮を照らしている。

 近似しているが違う。これは魔力の結晶だ。


「ああ、それは魔力の結晶だ」


 あるいは物質化した魔力というもの。張り付いているのではなく生えているというのが正しい。


「魔力の結晶? 魔石ではなく?」

「魔石は魔力を固定化するための物質で、別のものだ。そのへんの石だとか鉄だとかでもなりうる。ただ魔力結晶は迷宮にしかないものでな」

「???」


 なおさらわからないと首をかしげる。

 探砂師の間では常識だが、一般では出回っていないし、もとより世のことにさほど明るくないらしいリリアにはことさらわからないようだ。


「詳しいことは専門家に聞いてほしいが、例えば迷宮に宝箱があるだろ」

「ありますね!」


 幸運にも丁度見つけた。


「で、この中にはこのようにお宝が入っているわけだ」

「服、ですか?」

「ああ、こういう装備品も入ってる。で、これどうやってできてると思う?」

「ええと、職人さんの手作り、でしょうか……」

「はは」


 思わず笑ってしまった。


「むぅ」


 それに可愛く拗ねるもんだから、ことさらいじめたくなってしまうがやめておこう。

 ここは迷宮の中だしまだ船長の娘が見つかっていない。


「答えを言えば、ダンジョンが魔力を物質化して作ってるんだ」

「魔力を物質化……」

「ダンジョンの特性らしくてな。で、魔力結晶も似たような感じで作られてる。まあ、簡単に言えば余剰というかあまりがこうやって張り出しているんだと」


 1層から出ているのは非常に珍しい。

 だいたいが5層、あるいは10層の奥まった部分から出始め、その先に行けば行くほど増えていく。

 それが1層から出ているということは非常に危険だ。


 なぜならば、それだけ魔力が余っているということだから。

 普通に迷宮を作り運営するだけ以上に魔力が余っている場合。その迷宮は非常に高難易度だということになる。


「気を引き締めた方が良さそうだ」


 第1層に魔物がいない? とんでもない。


「――」


 ぴくんとリリアが反応を示す。


「いるぞ――」


 感あり――。

さあ、さあ次回は戦闘だぁ!


まあ、それはさておき、感想、評価、レビューください!

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