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第20話 迷宮

新章スタート!

 白雷が霹靂と駆ける。

 青空、晴れわたる蒼穹の砂漠に響くのは天上の神々が保有した雷そのもの。

 リリアが一閃となって駆け抜けた。ただそれだけで、魔物が吹き飛び絶命する。


 リリアとともに砂漠に出たが、やはり近域程度ではリリアの相手にならないことが判明した。

 俺でもここではミノスなどの例外でもなければ普通に戦える。俺の数百数千倍くらい強いリリアならば推して知るべしだろう。

 つまりここに彼女の敵はいない。


「となれば、砂上船の船長を探す必要があるか」


 中域へ行くためには砂上船が必須だ。なにもあれは移動を短縮するだけのものではない。砂漠の中域へ行くために必要な乗り物なのだ。

 その理由が近域と中域の間にある海の存在だ。


 もちろん、本当にあの海があるわけではない。正確に言えば海があった場所が砂漠化した場所が海と呼ばれている。

 そこの砂は普通の砂よりも水の性質が強いらしく、本当に船でなければ進むことが出来ないというわけだ。

 上級者の中には普通に走って超える馬鹿もいるが俺はできない。


 砂上船はパーティー単位で借りるものだ。船長と契約し、稼ぎの何割かを支払うことでその機動力を借り受ける。

 パーティーの最低単位は4人。

 やはりパーティーの増強は必須だ。リリア1人でも強いが、彼女は1人だ。彼女だけに頼り切るわけにはいかないし、俺だって活躍したい。

 リリアばかりにいいかっこされては俺が情けない奴にしか思えないし、褒められたものではない。


「おーい、リリアもどってこーい」

「はーい!」


 ひとまずリリアを呼び戻し、これからの算段を話すとする。


「パーティーのメンバーを増やそうと思う」

「ツカサ様が良いならわたしは良いよ?」

「まあ、一応な。それで、他のメンバーの前では手加減してくれないか」

「手加減?」


 わからないといい風にリリアは首を傾げる。

 まあ、リリアの力を見て手加減をさせることは普通はないわな。


「そうだ。おまえの力は強すぎる。神話級なんてバレたら王都に連れていかれる」

「それは嫌!」


 よっぽど嫌なのだろう強い拒絶だった。

 いつも礼儀正しい言葉遣いをするリリアが本気の拒絶だ。


「だから王級程度の力で戦えないか?」

「うーん、どれくらいでしょう……」

「今くらいで良い。それくらいならまだごまかしがきくからな」

「つまり、才気一つだけ使えってことですか?」

「ああ、俺が許可した時だけ全力を出してくれ。間違っても雷の柱とか出すなよ。白い奴は特にだ」

「うーんと、うーんと、はい!」


 言われたことをメモしている。

 大丈夫だろうか不安になる光景だが、いたしかない。楽観はしたくないが、考えても無駄なことなら楽観するに限る。


「というわけで、パーティーメンバーを募集するわけだが――」


 ラーシャナの街に戻りギルドで募集をしてから数時間。

 誰も来ない。


「来ませんね……」

「まあ、当然だな」


 今は時期じゃない。


「時期……?」

「ああ、大体新人が多く来る時期ってのがあるんだよ、これが」


 通年で採用をしているようなものであるが、基本として砂漠は危険だという前提がある。

 そこで砂漠都市では訓練施設がある。学園みたいなもので、そこで訓練を受けてから大抵の場合、探砂師になる。


 砂漠は国からも大いに重要視されているから割と安く通える。俺も通った。

 まさか異世界に来てまで学校に通うとは思わなかったが、割と悪くない学園生活だった。

 特に俺たちの世代は奇跡の世代だとか、どこぞのバスケマンガのような感じだったらしく、多くが上級ランクの探砂師になって活躍している。

 すっかり同期と差をつけられてしまって俺は悲しいやら悔しいやらだ。


 その卒業時期が新人勧誘のねらい目なのだ。しかし、次の卒業までは時間がある。


「だから、通年でやってくる新人とか丁度パーティーを抜けたやつとかを探すべきなんだが」


 大抵の場合、そういうやつには問題があったりするわけで。

 いや俺自身も特大の地雷みたいなものだが、そこはリリアがいるから多少、どうにかなる……言ってて悲しくなってきたわ。


「というわけでカノンさん、誰かいないか」

「うーん、そうねぇ……」


 困った時のカノンさんだ。

 彼に任せたら何とかなるはずだ。他人任せ? いいえ、適材適所です。

 なに、安心しろ。人材さえいれば、俺の掴むの才気が火を噴くぜ――。


「んー、そうねぇ――」

「すまねえ! ちょっと良いか!」

「ん?」


 カノンさんと話していると横から男が入ってきた。

 随分と急いでいたのか、髪を振り乱し汗がだらだらと流れている。


「あら、何かあったの?」

「あ、ああ。俺の娘が迷宮に行ってしまって――頼む助けてくれ!」

「依頼ね。でもどうして迷宮なんかに?」

「実は……」


 隣で聞いていたが、この男は砂上船の船長で娘はそこで船長見習いとして働いていたらしい。

 そこで新しい迷宮を見つけた。病の母親の為に金が必要だった娘は、迷宮にあるお宝を求めて勝手に飛び込んで行ってしまったと。


 航行中の砂上船から飛び降りるとはなんというアグレッシブな娘さんだ。


「砂上船なら探砂師のパーティーを載せてたんじゃないのか?」

「いや、おらの船は、商人の高速船で」

「ああ、なるほど」


 世界の中心から広大に広がる砂漠は、交通の要路としてもつかわれることがある。なにせ、色々迂回するよりも速い。

 危険も多いが、安定した航路もあって移動に使える場所がある。また、他国へ行くにも砂漠を超えるのが一番だ。

 領地ごとに税を支払う必要がないとあれば商人は利用しない手はない。


 で、高速船というのはそう言った商人たちが利用する速さを追求した砂上船だ。武装などを捨てて速さだけを追求してるからよっぽどのことがない限り魔物だろうが、盗賊だろうが捕まえることはできない。

 だから探砂師をのせていなかったと。


「それに、少し事情もありまして……」

「まあ、それについては聞かないわ。ツカサちゃん、行ける? すぐに出られるのあなたたちくらいなのよ。ほかはみんなで払っているし」

「わかった」

「おお、ありがとう!」

「礼は後で良いから、場所だけ教えてくれ」

「ええ」


 船長から場所を教えてもらう。

 聞けば、近域と中域の狭間、海に近い場所らしい。そんなところに新しい迷宮か。

 おそらくまだ移動途中だな。


「わかった。すぐに向かう。リリア」

「はい、人助けですね!」

「ああ、そういうわけだ。行くぞ」


 装備は砂漠から帰ってそのままだから問題ない。

 迷宮に入ったのならすぐに行った方が良い。


 俺たちはすぐに出発した。

 移動? もちろんリリアに抱えられてた。

 そっちの方が早い。

 緊急時用で、多用したくはない。だって恥ずかしいから。


 ともかく、指定された場所に行けば――移動する迷宮を見つけることが出来た。

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