第15話 助けた2人
休みなのでさらに更新じゃー!
ギルド中に響いた声の主がどたどたと騒々しい声が俺たちのところへやってくる。
それはミノスから逃げていた2人で俺とリリアが助けた少年少女だ。
無事だったようで何よりである。
「あー! あなた、助けてくれた人!」
「て、テトぉ、失礼だよぉ……」
「おまえらは……無事だったか」
「それはこっちの台詞よ!」
ビシィ! と指を指してくる少女は随分と気が強いようだ。少年の方はおろおろとしながらしきりに頭を下げている。
「ミノスに単身挑むとか、どんだけ心配したと思っているのかしら! 助けてくれる人を探しまわっていたけど良かったわ!」
「…………おまえ正気か……?」
「なんであたし正気を疑われたの!?」
「いや、だって」
普通、探砂師なんて生き物は、他人の心配なんてしない。仲間でもない赤の他人の俺の心配をしたところで何の得にもならない。
俺みたいなのは異端の異端で、基本的にならず者。仲間意識よりも金銭意識の方が高い。
稼げるから命を賭けて砂漠へ挑むような奴らがまともであるはずもない。まともなやつはすぐに死んで残るのはヤバイやつらばかりだ。
その点、ライのパーティーはカノンさんの紹介だけあって割とまともであったが、それでも率先して誰かを助けようなんてことはしなかった。
助けるときは、大抵の場合吹っ掛けられるときだけだ。その助けるという行為が利益にならないとやらない。
砂漠は危険だから、それだけの危険を犯す価値がなければ人助け何てやってられないのである。
世知辛いことこの上ない。
そのあたりのことを言ってやると。
「ふふん、それは凡人の考え! あたしは違うわ! あたしは借りた借りは返すわ!」
「…………」
「な、なにその目!? あたし何か間違ったこと言ってる?!」
「うん、テトはそのままで良いと思う」
「ふふん、ツェルもこう言ってるし、間違っていないわ。あの時は、あたしたちを助けてくれたありがとうございました! 無事でよかったわ! さあ、報酬の話をしましょう!」
優雅な所作でテトと呼ばれた少女は俺に一礼する。
随分と教養と気品を持ち合わせているようだ。
「いや、報酬は良いってミノスのおかげで懐は潤う」
「そうねぇ、状態もいいし、良い焼き加減だって親方たちも言っていたからすんごく色付けてあげてるわよん」
「ありがてぇ―というわけで、おまえらから報酬をもらう気はねえよ」
「だ・め! さあ、行くわよ!」
「ちょ、引っ張るな」
テトに連れられて酒場の席に座らされてしまう。
「すみません。テトはかなり頑固で……」
「ああ、うん。それはなんとなくわかる。とりあえず話は聞くよ。俺は、ツカサ。こっちはリリア」
「リリアです!」
「ぼくはツェルです」
「テトよ!」
「よろしく。見たところ新人だよな?」
首から下がっている探砂師証は木製だ。リリアの胸に下がっているのと同じもので、これは探砂師のランクを示している。
木、石、鉄、鋼、銅、銀、金、真銅、星銀。
9つのランクがあって、木から鉄までが初級、鋼から銀までが中級、金から星銀までが上級。
そして、最高位の色金。独自の色が与えられて現在は7人この王国にはいる。
俺は鋼で丁度中級に上がりたてみたいなところにいる。ライたちは、銀だった。
「ええ、少し前に探砂師になったばかりなのよ! この砂漠を踏破してみせるわ!」
「なるほど……」
「で、報酬の話よ! このあたしを助けたのだから相応の報酬を支払うわ」
新人探砂師にいったいどれほどの価値があるのかはさておき、相応の報酬ね。
「その相応の報酬ってのは誰が決めるんだ?」
「もちろん、あなたよ!」
「俺?」
「そう、さあ、あたしに価値を付けなさい! このあたしがどれだけの価値があるのか。あなたにとってどれだけ助けた価値になったのか! さあ!」
地味に難しいことを言ってくれるなこいつ。
これ低かったら文句とか言ってくるんじゃないか?
「えっと、ツェルだったか」
「はい。あの、テトのいうことは半分くらいは聞き逃して大丈夫です。あと、ぼくらそれほどお金を持っていないので……」
「ああ、うん。新人からたかるようなことはしないって」
そういってやるとツェルはほっとしたように胸をなでおろした。
「こーら、ツェル! こそこそ話をしない! 寂しいじゃない!」
「ご、ごめんよ、テト」
「なんというか、おまえら面白いな。それで、おまえの価値だったか。んじゃあ、一杯おごれ。それでいい」
「あたしの価値は一杯の酒ってこと!? うそでしょ!?」
「自分に自信がありすぎだろ……だが、聞き捨て成らんな」
「? ですがツカサ様、一杯のお酒でしたら、それほど高くないのでは? 人にはもっと価値があるとわたしは思います!」
「まあ、それは同感だが、一杯の酒だって馬鹿にはできないんだぞ。金銭的には安いさ。だが、精神的にはどうだ?」
熱い砂漠を歩いて帰ってきて、冷えた酒が出てきたら、それはどんなお宝にも負けるとも劣らない極上のものではないか?
「砂漠から帰ったあとの一杯ほどうまいものはないだろ? あれは極上だ」
まさしく悪魔的。
「つまりそれはあたしが極上ってことね!」
まあ、そういう理論で言ったわけなのだが、単純だな。
これ本気で言ってる、
俺に乗ってきているとかではない。本気でそうだと思っているようだ。
ノリが軽いし、嫌味に感じないのは性格だろうか。
「納得してくれたのなら幸いだ。ツェルもそれでいいか?」
「はい、ありがとうございます!」
「それじゃあ、従業員さーん、この人に酒一杯!」
「はーい」
一杯の酒がすぐに運ばれてくる。
キンキンに冷えたビールのような酒だ。初めて飲んだときはなんだこれ、どうしてこれが美味いのかと思ったものだが、砂漠からくたくたになって帰った後に飲んだあの味は忘れられない。
「それじゃあ、ありがたくいただくよ」
喉に流し込む冷たい液体。
黄金色はまさしく至高だ。身体に蓄積された疲労が一瞬で流れていく。それには快感すら覚えるほどだ。
透き通るのど越しに、あとから追いついてくる爽やかな苦みと香り。
「はぁ、たまらんな」
やはり人は助けるものだ。
もっといい報酬をもらっても良いが、これでもいい。
人に褒められたり優しくされるのは気分が良かった。
この2人ものちのち物語に関わっては来ますが、今章はさほど関わってきません。
ついでに、ギルドのランクについても説明。
リリアは世間知らずなので、色々と説明をしやすくて助かりますね。
そのうち酷い目にあっていただきますけど。
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