第14話 三大神話の申し子
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道中なにもなくラーシャナの街に帰ることが出来た。リリアがいるおかげで警戒してもしなくても魔物は寄ってこない。
弱い魔物は神の気配っていうやつに敏感だ。神様に睨まれたら木っ端魔物などお陀仏なのである。
そのおかげで無事に戻ってきたわけだが、ミノスを抱えて持ってきたのだから砂上船港は大慌てだ。
「ミノスか! 久々の大物だな!」
「しかも既に焼いてあるじゃねえか! いいねぇ! 食っちまおうゼ!」
「おいおい、食うなら俺らが買った後にしてくれよ。高値で売ってやる」
「んまぁ! いいじゃなぁい!」
商人連中やらこれから探索に出る探砂師どもがやってきてははやし立てる。
ミノスだけならこんなことにはならないのだが、なにせそのミノスを持っているのがリリアという超絶美少女なのである。
さらにリリアはこの街の住民じゃないどこか別のところからやってきた人なのである。
そりゃもう男どもはお近づきになろうと必死にミノスを出汁にやってくるわけである。
「きみ可愛いね、名前は?」
「おい、俺が先に声かけるんだよ! いやぁ、すごいね君」
「まあ、待ちたまえよ、ここは恋愛マスターの俺が行こう」
「おまえ童貞じゃん」
「脳内トレーニングだけは完璧なので」
「あしがっくがくだぞー」
ミノスをギルドの職員に渡したあとはもう囲まれて仕方ない。
助けてほしいと、リリアの視線を感じるが、あんな特大の地雷を踏みに行くわけないだろう。
男の嫉妬は恐ろしいのだ。探砂師は危うきには近づかない。悪いがガンバッテクレ。
と諸々の手続きという建前にバックレようとしたのだが。
「ツカサ様! 助けてください!」
いつの間にか俺の背後に現れて、腕を掴まれる。その際、もにゅんと胸が当たるのが他の探砂師どもにも港の船乗りどもにも、商人たちにも見えるわけで――。
一斉に視線が俺に集まる。
思わず頬が引きつる。
「逃げろ――!」
ならば選択肢は当然、撤退あるのみ!
背後で我に返った怒声やら野次が響き渡るが、そんなもの気にしてられるか。
さっさと城門を潜り抜けてギルドへと飛び込んだ。
ギルドの中に入った瞬間、安堵する。ここの中でまで問題を起す馬鹿はいない。ここで馬鹿をすれば除名されるか、恐ろしいギルド専任の恐ろしい殺し屋に狙われることになるとまで言われているから誰もやらない。
ギルドから除名されたら砂漠にいくことすらできないのだから、探砂師はここでは借りてきたネコよろしく大人しくなるというわけだ。
早速色々な手続きをしてもらうためにカノンさんのところへ行く。
「あーらぁ! ツカサちゃん! んもー心配したのよぉ!」
カノンさんは俺を見た途端に声を張り上げる。
どうやら心配をかけてしまったようだ。
「ああ、カノンさん、どうも……」
「どうもじゃないわよぉ! んもぅ、今までどこでなにしたの? ああ、でも無事でよかったわぁ。あたしのせいでまーた誰かに死なれた本当悲しいもの」
「いや、それは本当すまん」
「良いわ。そうそう、ちょうど斥候を探している良いパーティーがあるんだけど……あら、そのかわいい子は?」
「ああ、この子はリリア」
「リリアです!」
「ふふ、元気が良いのね。カノンよ。まさか砂漠に行って女の子を拾ってくるだなんて、隅に置けないわねぇ」
カノンさんの目が色めきだす。
この人は他人の恋バナとか好きだから、そういう方向だと思って期待しているのだろう。
期待しているところ悪いが、そんなところはこれっぽっちもない。
「そういう話は良いから、この子のギルド加入手続きをしてくれ」
「この子と冒険に出るということで良いかしら」
「ああ」
「この子、とーっても強いから大事になさいね」
「俺が捨てられないようにするように頑張る方じゃね」
「あら、あなたはいつも通りにしていれば捨てられないわよ」
「現に捨てられたわけだが」
「見る眼がないのよ、あの子たち。もぅ、あたしがせっかく紹介した子を捨てるだなんて」
ぷりぷりと怒り出したカノンさんに苦笑する。
この人のこういうところが本当に信用できるのだ。受付なんて大量の探砂師を相手にするから全員にマニュアル通りの対応になってしまうやつも多いっていうのに。
このカノンさんは、個人に寄り添ってくれる。本当に良い人なのだ。この人がいなければ探砂師なんてやめてる。
これで普通に女の人だったら普通に結婚しても良いくらいの相手だぞ。
まあ、男なのだが。それでオカマなのだが。
「あー、その話はいいから」
「はいはい、それじゃあ、リリアちゃん。良いかしら」
「はい!」
「まずはこの書類に記入してね。読み書きはできるかしら」
「できません!」
「良いわ。それじゃあ、あたしが書くからいくつか質問に答えてね」
名前、性別、年齢、特技――そう言ったものをカノンさんが聞いて、リリアが答えていく。
順調に何の問題もなさそうに進行していくが、問題はここからだった。
「才気は? これだけは絶対に答えてもらわないといけないわ」
「えっと、今のところ使えるのは3つあって」
「まあ3つ!」
3つは中々いない。カノンの驚きもわかるが、俺としては今のところという発言の方が気になった。
今のところっていうことはこれから増えるということか……?
「はい、天上神の雷霆、太陽神の翼、海神の牙の3つです」
「――――」
カノンさんが絶句している。
いや、それどころか俺も絶句している。
「リリアちゃん、ちょっと待っててね。ツカサくん、こっち」
「? はい」
俺はそのままカノンに連れられてギルド3階にある応接室へと通された。
ここは重要な依頼者が来た時や貴族が来た時などでしか使用されない応接室だ。防音性も高く、密談を行うならここ以上の場所などこのラーシャナの街にはない。
あるとすれば領主の城か、地下水道の奥深くくらいだろう。
「ツカサくん、どこで拾ってきたの彼女」
「砂漠」
「……嘘じゃないみたいね。あの子神話級の才気を3つも持っているわ」
「みたいだな……」
なんとなくそうじゃないかは予想はしていた。
「神話級の才気の持ち主がいたらどうなるか知っているわよね」
「……だから、カノンに頼んでるんだよ」
神話級の才気を持つものが現れたら彼らは王都に連れていかれることになっている。
かつてならそのまま最前線へ送り出されただろう。神話級の才気とはそれくらいに強力な力なのだ。
今の時代もその扱いは変わらない。相手が魔族から人間になっただけで、神話級の才気持ちは、そのまま兵器として使われる。
人間らしい扱いなんて望めないと聴いている。
なにより、リリアがそうだったと察せられるからわかる。
勝つためとはいええげつない。
だから、神話級才気の持ち主はその力を秘匿することが多い。見つかれば即座に王国に捕縛されて連れていかれて人間性を剥奪され兵器として扱われるのだから。
王国にはほかにも神話級才気の持ち主がいるのだから神話級才気を持っていたとしても捕縛することは可能だ。その際、周りに出る影響など誰も考えない。
勝つための犠牲として許容される。
「……手放す気はないのね? その方が安全よ」
「…………」
手放した方が安全。
ああ、その通りだ。
だが、俺は彼女を見捨てられない。契約もあるが、あの絶望しきった過去を見れば、王国がどんな扱いをしているかわかるというものだ。
ならば俺の答えは決まっている。
「泣かせられないからな。だから、頼む」
俺は頭を下げてカノンさんに頼むだけだ。
「……愛ねぇ!」
「いや違う」
「んもぅ、照れなくてもいいのよぉ。良いわ。才気に関してはこちらでなんとかしておくわ」
「大丈夫か? 嘘発見の魔道具とかあるだろ」
「エルフ舐めるんじゃないわよ。ああいう魔道具を誰が作ったと思っているのかしら」
まったく頼もしい。
「それじゃあ頼む」
「ええ、任せて。さあ、戻りましょう。リリアちゃんが待ってるわ」
応接室を出てリリアのところへ戻る。
そこで、
「あー! あの時の!」
「て、テト、声がおおき――」
「ん?」
あの時助けた2人がちょうどギルドに入ってきたところであった。
マスターしたり、指揮官したり、ソロモン王したり、ドクターしたり、騎士くんしたりしていますが、鋭意執筆しております。
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