「異世界からのSOS。参上、ダイハッシャー!」(6)
第6回を公開します。
いつもよる長いです。
第一章の終盤で途中で切ると、変に分割されるな、と思ったので。
今回は結構、説明多めな感じ。
ここあとアルテェス、ここあとしゅうくんの会話がいい感じになってる、と思ってます。
楽しんで頂けたら嬉しいです。
※2/11 一部修正しました。
「えっと、あたしは"初代ここあ"、なんだよ。
おじ、、トコートの孫なんだよ。
あなたは"アップロス"さんの関係者なんだよ?」
何となく事情を察した ここあ は名乗り、問い掛けた。
そんな ここあ の言葉にアルテェスが、
『こほん。
失礼しましたわ。
私はアルテェスですわ。
アップロスの孫ですわ。
あなたに繋がった、とゆう事はトコート様は。。』
気を取り直して名乗り、遠慮がちに尋ねた。
「祖父、トコートは5年前に。。」
『やはりそうでしたのね、お悔やみ申し上げますわ。』
アルテェスは寂しげな声で思いを伝えると、
『それでは仕方がありませんわね。
初代ここあ さん、お話出来て良かったですわ。
失礼しま、、。』
通話を終えようとしたが、
「待つんだよ!」
ここあ が慌てて遮って、
「アルテェスさん、待ってなんだよ。
祖父に連絡してきたって事は封印に関係あるんだよ?
あたし、全部聞いてるんだよ。
何かあったのなら力になるんだよ。」
意思を伝えた。
『そう、だったの、ですわね。
ありがと、ですわ。』
アルテェスが涙を滲ませ、声を詰まらせながらも嬉しそうに答えた。
「封印の効力が無くなる頃だって聞いたんだよ。
もしかして、もう、なんだよ?」
『いえ、まだ無くなってはいませんわ。
ですが、配下の者たちが動き始めてますわ。』
「わかったんだよ。
詳しくはそっちで聞くんだよ。
すぐに行くから待っててほしいんだよ。」
『え?よろしいのですか。
それは願ってもない事ですわ。』
「もちろんなんだよ。
あたし、やるって決めたんだよ。
だから、遠慮しないでほしいんだよ。」
『初代ここあ さん、ありがとうですわ。』
「ぜんぜんいいんだよ。
あ、ちょっと待っててなんだよ。」
ここあ は話を中断し、マイクの部分を手で押さえて、
「しゅうくん、ここと”ボカモニ”って時間差あるんだよ?」
AIに尋ねた。
「1ニチノ、コウセイジカンハ、オナジデス。
タダ、ジカンサガ、7ジカンホド、アリマス。
ムコウハ、ゲンザイ、ゴゼン10ジ、クライデス。」
「ありがとなんだよ。」
AIの回答にお礼を言って、
「お待たせなんだよ。
準備とかあるから、2日くらいで行けると思うんだよ。」
話を再開し、予定を伝えた。
『わかりましたわ。
それでは会えるのを楽しみにしていますわ。』
「あたしも楽しみなんだよ。」
『この”魔道具”は待機状態にしておきますわ。
何かあれば連絡してほしいですわ。』
「わかったんだよ。
それじゃまた、なんだよ。」
『また、ですわ。』
お互い楽しげな声で言葉を交わし、通話を終えた。
「可愛い声だったんだよぉ。
って、あれ?アルテェスさんってアップロスさんの孫なんだよ?
アップロスさんて、たしか王様だったんだよ。
ならアルテェスさんは。。」
余韻に浸っていた ここあ の気付きに、
「ヒメサマ、デスネ。」
AIがさらっと答えた。
「うそ、やっぱりそうだったんだよ。
どうしよう、会ったら緊張だよぉ。
でも、何だかすごく話やすかったんだよぉ。」
によによ顔でひとり言ちている ここあ に、
「ココア、トコートサマカラ、オクリモノガ、アリマス。」
AIが電子音声を掛けた。
突然現実に引き戻された ここあ が、
「ひゃぃ?おくいもにょ、にゃんだにょ?」
噛み噛みで答えた。
「助手席前収納ハ、無限収納ニ、ナッテイマス。
イレルトキニ、セッテイシタ、ナマエヲイエバ、トリダセマス。
アケテ、”オクリモノ”トイッテ、トリダシテクダサイ。」
AIの説明に、
「わかったんだよ。」
答えて、グローブボックスを開いた。
「贈り物。」
と言って右手を突っ込むと小箱の様な物が触れたので、引っ張り出した。
それは白い箱にピンクのリボンが掛けられた、いかにもプレゼントな装丁をしていた。
リボンを解き、箱を開けると中に白い棒と白い板、メモが入っていた。
メモを開くと、
───────────────────────
だいぶ遅なってもたけど、ここあ 18歳おめでとう。
これ読んでるゆう事は行ってくれるんやな。
おおきにやで、ここあ。
プレゼントは異世界で必要になる物や。
短刀”みるく”。
みるく と ここあ、ええ組み合わせやろ。
魔力を込めて抜刀したら、刀身が伸びるんや。
魔力の使い方は、すぐわかるわ。
大事に使うんやで。
カードは携帯収納や。
たくさんは入らへんから、武器と、薬とか水とか、
必需品入れとくと便利やで。
ほんなら、気を付けて行ってくるんやで。
───────────────────────
と書かれていた。
「おじいちゃん、ありがとなんだよ。」
涙を滲ませながら、メモに向かってお礼の気持ちを伝えた。
祖父に届くように。
そしてメモを畳むと大事そうに箱に戻し、白い棒を取り出した。
「みるく。」
呟きながら棒をじっくり見てみた。
※全長45センチで、柄部分が15センチ、鞘の部分が30センチ
きれいな白色で、境目の柄側に幅5ミリ、深さ1ミリの窪みが全周に施されていた。
ここあ は左手で鞘を握り、親指の腹を柄の窪みに当てて、押し出した。
小さな抵抗の後、音もなく鞘と柄の間に隙間が出来た。
右手で柄を握る。
「すごく握りやすい太さなんだよ。」
呟き、抜刀するとガラスのような透き通った刀身が姿を現した。
「少し重みを感じるくらいの、いい感じの重さなんだよ。
でもこれ、どんな素材使ってるんだよ?」
「トウシンノソザイハ、”タリクルス”デス。
”異世界”ノ、トクジョウソザイデ、マリョクヲ、ヨクトオシマス。」
AIの説明に、
「なんか凄いんだよ。
おじいちゃん、大事に使うんだよ。」
嬉しそうに発し納刀すると、カードを取り出して短刀を触れさせ、
「みるく。」
と発すると、短刀が消えた。
試しにカードに触れて、
「みるく。」
と発すると、短刀が出てきた。
「これはすごく便利なんだよ。」
嬉しそうな声を発し、短刀を入れ直したカードを落とさないようにファスナー付きのポケットに仕舞った。
「それで、これからどうするんだよ?
異世界に行くなら、親やおばあちゃんに言わないとなんだよ。
こんなの、どう説明するんだよぉ。。」
悩む ここあ に、
「ソレハ、モンダイアリマセン。
ココアノ、リョウシンモ、祖母モ、ジジョウヲ、シッテイマス。」
AIが伝えた。
「そっか、みんな知ってたんだよ。
それで出掛ける時、おかあさん何か嫌そうだったんだよ。
おとうさん、おかあさん、おばあちゃん、ごめんなんだよ。
あたし、行くんだよ。」
聞こえていないと分かっていても、思いを口にしたかった。
そして、
「それで準備って、何すればいいんだよ?」
AIに尋ねた。
「ショクリョウヤミズ、クスリ、イフクナドヲ、カッテイキマス。
シキンハ、アリマスカ?」
「バイトしてたから、それなりにはあるんだよ。
どこに買い物に行くのんだよ?」
「キンジョノ、スーパーデ、コウニュウシマス。
ナビスルノデ、ウンテンヲ。」
「わかったんだよ。
って、ここ地下なんだよ。
どうやって出るんだよ?」
「マズ、エンジンヲ、カケテクダサイ。
ワカリマスネ?」
「大丈夫なんだよ。」
答えて、アニメで観た通りに、
「点火!」
と発した。
続けて、
「車、ゴー!」
と発した。
するとアニメと同じように車の上の天井が開き、そこに向かって車が上がって行く。
「やっぱりここ、あの格納庫だったんだよ。
アニメと同じなんだよ。」
興奮気味の ここあ を余所に、車は天井を抜けた所で止まり、右、前とスライドし、また上がった。
そして祖父宅の駐車場所に出た。
「外に出たんだよ。
ってあれ、クラッチペダルがないんだよ。」
ミッション車にあるはずのクラッチペダルがない事に気付き、尋ねた。
「イワユル、オートマナノデ、クラッチハナイデスヨ。」
AIの返答に、
「え、ええ~~~!!!」
驚きの声を上げた。
「この車って”スバル360”、なんだよ?
昔の車なのに何でクラッチないんだよ。」
「タシカニ、タシカニ。
ベースハ、”スバル360”、デスガ、”異世界”ノ、チョウギジュツデ、カイリョウサレテイマス。
ココアガ、ウンテンシヤスイヨウニト、10ネンマエニ、カイリョウサレマシタ。
ナノデ、ジソウモ、カノウデス。」
「うそ。。
この車の事調べたら”スバル360”って車だったんだよ。
昔の車だから必要だと思ってMT車免許取ったんだよ。
ものすご~く大変だったんだよ。
それならAT限定で良かったんだよ。
あたしの苦労を返してほしいんだよぉ!」
「クジョウハ、トコートサマニ、オネガイシマス。」
「しゅうくん薄情なんだよ。」
拗ねつつも、待望の初運転。
テンションは上がっていた。
「いよいよ、なんだよ。
ドライブしちゃうんだよ。」
そう言いながら気を取り直し、ギアをDに入れ、ゆっくりアクセルに力を掛けて、発進した。
「感動なんだよ。
やっとしゅうくん、じゃなかった、車に乗れたんだよ。」
楽しそうに運転する ここあ だったが10分足らずで店に着いてしまった。
「近いんだよ。。」
運転を堪能する間もなく到着してしまい不満気味ではあったが、ATMでお金をおろし、必要な物を買い込んだ。
ストレージに細々入れるのは大変なので大きめの段ボール3つに詰めて、ストレージに突っ込んだ。
「これで準備は良し、なんだよ。
でも、ここに”転移門”出せないんだよ。
しゅうくん、どうするんだよ?」
準備を整えた ここあ の問い掛けに、
「トコートサマガ、テンイスルノニ、ツカッテイタ、バショガアリマス。
ソコニ、アンナイシマス。」
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着いたのは人の寄り付かなそうな森の細道。
の入り口から少し入った所に車を止めた。
「うわぁ、何か出そうなんだよ。
早く行くんだよ。
えっと、たしか、これなんだよ。」
言いながら、カーナビのメニュー画面の”開門”アイコンを押した。
すると出口選択が表示された。
「出口はどれを選ぶんだよ?」
「マズハ、トコートサマガツカッテイタ、イエニイキマス。
0バンヲ、エランデクダサイ。」
「了解、なんだよ。」
ここあ が画面の0番の所に触れると、ヘッドライトが点灯して地面を照らした。
左右のライトが3メートル程先で交わり、そこに魔方陣が出現した。
その中心から転移門が出てきて、奥に向かって扉を開いた。
「それじゃ異世界に、行っちゃうんだよ!」
アクセルを踏んで車を発進させると、加速しながら転移門に突入して行った。
如何だったでしょうか?
ここあが異世界に旅立ち、一章終幕です。
ベース車が何か、もやっと出せました。
この車のフォルム、好きなんですよ。
そして次回からは異世界に舞台を移し、バトルが増えてくると思います。
4勇者の最後の1人も登場します。
次回、水曜更新予定です。
楽しみにして頂けましたら嬉しいです。
よろしくお願い致します。