「異世界からのSOS。参上、ダイハッシャー!」(47)
大変長らくお待たせしてしまい、本当に申し訳ありません。
最後のバトルへの持っていき方に詰まり放置してしまっておりました。
が、再開させて頂きます。
今話の最終となる第7章、開幕です。
楽しんで頂けたら嬉しいです。
ー第7章ー
(1)
鉄騎将襲撃予告日、前日の朝。
「レヤマッチオ、居るかー!」
城の地下格納庫内に野太い声が響き渡った。
声の主は格納庫から直接城外へ出入りする為に設置された扉から入ってきた大柄なドワーフだった。
「貴様、何者だ!
どうやって入ってきた!」
近くに居た若い作業員が声を荒らげて威嚇した。
城外への扉は緊急時以外はアルテェスか作業主任しか開ける事が出来ないようになっている。
それを開けて入ってきた不審者に、近くに居た若い作業員たちが殺気立って回りを囲んだ。
「やれやれ、近頃の若いやつは気が荒えな。」
呆れ気味の大ドワーフを見た作業主任だけは、
「あ、あなた様は、、。」
驚きと緊張で声を詰まらせていた。
その時、城内側の扉が開きアルテェスが入ってきた。
ピリピリしている若い作業員たち。
囲まれているのは、
「あなた方、控えるのですわ。
その方はムブ様ですわ。」
行方不明になっていたムブだった。
アルテェスの凛とした声が場の空気を変えた。
「失礼致しました!」
最初にムブに突っ掛かった作業員が叫ぶように詫びて頭を下げると、他の作業員も一斉に頭を下げた。
「作業主任以外は作業に戻るのですわ。」
アルテェスの指示で作業員たちが持ち場に戻っていった。
「お久しぶりですわ、ムブ様。
お元気そうで良かったですわ。」
声を掛けられたムブが、
「おお、ちび姫か。
でかくなったじゃねぇか。」
おおらかな声で返した。
「もう10年以上経っているのですわ。
大きくもなりますわ。」
「違ぇねぇ。
がーっはっはー!」
豪快に笑うムブを見て、変わらない、なんて思いながら、
「ずっと行方知れずだと聞いていましたわ。
それで、どうしてここにこられたのですわ?」
アルテェスが問い掛けた。
「”アレ”がここの地下にある迷宮にあるみてぇなんだ。
それで、レヤマッチオは居ねぇのか?」
「彼は7年前に事故で、ですわ。」
「なんてぇこった。。」
ムブが寂しげな表情で呟いた。
「いい腕してたってのに、残念だぜ。」
悔しそうなムブの思いを打ち消すように、
ウウーーー!ウウーーー!
警報が鳴り響き、
『報告します。
巨大な鉄騎獣が1体、他大小鉄騎獣が多数接近中!
防御壁を起動させました!』
格納庫のスピーカーから監視員の叫ぶような報告の声が聞こえてきた。
「そんな、鉄騎将が予告したのは明日のはずですわ。」
驚きの声で呟くアルテェスに、
「一杯食わされたようだな。
あいつらは約束なんて守る気ねぇぜ。
常に疑ってかからんと足元すくわれるぞ。」
ムブが忠告した。
「心しておきますわ。」
苦い表情で言葉を噛み締めているアルテェスに、
「で、ディブはどうなってる?」
ムブが問い掛けた。
「魔力充填が終わっていないのですわ。
明日、ギリギリ間に合う予定だったのですわ。」
「高速充填モードがあんだろ!
レヤマッチオから聞いてねぇのか!」
声を荒げるムブに、
「引き継ぎも出来ていなかったのですわ。」
アルテェスが萎縮して答えた。
「なら、なんでブンに頼まねぇんだ?」
「ブン様、とはどなたでしょうか?」
「オレの息子で工房を任してる。
挨拶に、来てねぇのか?」
「いえ、お見えになっていませんわ。」
「な、、。」
ムブが頭を抱え、
「あんのバカ息子、忘れてやがったな。」
言い放った。
10数年前のあの時、挨拶に行けと伝えて旅立った。
どうやらその事を忘れていたらしい。
気を取り直し、
「今のここの頭はお前か?」
アルテェスの側で緊張して直立している作業主任に声を掛けた。
「ひゃい、わたくしゅでありゅましゅ。」
ど緊張で噛みまくって返事した。
「それで状況は?」
「ひゃい、充填率約90%でしゅ。」
若干噛みつつも少し落ち着いてきた作業主任の答えに、
「それなら1時間も掛かんねぇ。
とっととおっ始めんぞ!」
ムブが声を掛けディブトレースに向かって歩き出し、
「はい!」
力強く返事した作業主任が後を追っていった。
その背中に、
「私は ここあ とラビちゃんに連絡して、すぐに来てもらいますわ。」
アルテェスが声を掛けた。
その声に反応したムブが作業主任に何か指示を出して先に行かせると、
「ここあ が来てんのか?」
振り向いて声を掛けた。
「今はラビちゃんと修行塔に籠っていますわ。
明日に備えてもう出て来ている頃なのですわ。」
「この騒ぎだ、じきお嬢も駆け付けてくんだろ。
なら、"アレ"やんだろ?」
ムブが楽しそうな声で問い掛けた。
「ええ、そのつもりですわ。」
「なら、それ想定で仕上げてやんぜ。
そっちの連絡は任したぞ」
「わかりましたわ。」
アルテェスの返事を聞いたムブは、任せろとばかりに力こぶを、
パン!
と叩いて見せ、小走りでディブトレースに向かって行った。
その力強い背中を見送ったアルテェスはポケットから魔道具を取り出し、ここあ に連絡した。
如何でしたか?
フライングで襲撃してきたテメッタル。
迎え撃つべく役者が集まってくる。
ついにアレが。
今後の展開をお楽しみに。




