「異世界からのSOS。参上、ダイハッシャー!」(44)
第44回を公開します。
2週間も空けてしまい、お待ち頂いていた方、申し訳ありません。
途中まで書いていたものがしっくりこなくて大幅に書き直してました。
そのお陰でかなり良くなったと思ってます。
最近、ここあとアルテェスのやり取り書いてるのが結構楽しかったりします。
で、いつもよりちょっと長めになっちゃいましたが、楽しんで頂けたら嬉しいです。
(4)
「おはようですわ、ここあ。
ベッドから居なくなっていたから心配しましたわ。」
中庭で日課のランニングを終え、短刀を使って剣技の修練をしていた ここあ にアルテェスが声を掛けた。
「アルテ、おはようなんだよ。」
動きを止め、短刀を納刀した ここあ がタオルで汗を拭いながら返した。
「それが ここあ の武器なのですわね。
見せて貰えます?」
尋ねてくるアルテェスに短刀を差し出した。
受け取り、注意深く観察し、抜刀しようとしたが、
「やっぱり抜けませんわ。」
出来なかった。
「抜けるのは私だけなんだよ。
でも、敵意があると触る事も出来ないんだよ。」
説明を聞きながらアルテェスは短刀を ここあ に返した。
受け取った ここあ は抜刀すると、剣をアルテェスに渡した。
「すごく、綺麗ですわ。」
ガラスのように透き通った刀身と白い柄の組み合わせの美しさに見惚れてしまった。
軽く振ってみて、
「すごく扱いやすいですわ。
これはどうしたのですわ?」
感想を述べ、問い掛けながら剣を返した。
「これはおじいちゃんから誕生日のプレゼントに貰ったんだよ。」
受け取り、納刀しながら ここあ が答えた。
「私もお祖父様から、これを頂きましたわ。」
そう言って、アルテェスはポケットに入れていた収納板から取り出した物を見せた。
それを見た ここあ が、
「それ、アップロスさんが使ってたのと同じのなんだよ。」
興味津々とゆう表情で反応した。
アルテェスは期待通りの反応に、
「この空の色のような水色がお気に入りなのですわ。」
顔を綻ばせ、嬉々として話しながら、ここあ に手渡した。
受け取った ここあ はそれをじっくりと眺めた。
綺麗な空色の細長いそれは長さは30センチくらいの扇。
守護魔術師が使う専用魔法武具なのだが、
「やっぱり、私には開けないんだよ。」
言いながらアルテェスに返した。
「短刀と同じで所有者の魔力にしか反応しませんわ。」
言いながら扇を開いて見せた。
「これは魔扇と言う魔法武具で、ミゼティと言う名ですわ。
まだまだ使いこなせなくて修行中なのですわ。」
開いた魔扇は通常紙で出来ている部分が魔力で生成され、白に近い水色をしていた。
魔力属性は水系で、守護魔法の発動、水系魔法の増幅に適するように作られている。
※ちなみにアルテェスの祖父アップロスは魔力属性が火系だったので魔扇の色は赤だった。
「すっごく綺麗なんだよ。」
ここあ はあまりの美しさに見惚れつつも、これがどんな輝きを放つのか見たくなっていた。
「ねぇ、アルテ。ちょっとだけ手合わせしてほしいんだよ。」
突然の ここあ からの提案に、
「突然何なのですわ?
私と ここあ では実力差があり過ぎますわ。
敵うわけありませんわ。」
激しく拒否するアルテェスに、
「ああ、そんなじゃないんだよ。
ただ、アルテが魔扇でどんな戦い方をするのか見たいだけなんだよ。」
ここあ が考えを伝えた。
少し考えて、
「わかりましたわ。
私達の間にどれくらいの差があるか見極めさせてもらいますわ。」
答えたアルテェスは手に馴染ませる様に数回、手首を使ってゆらゆらと振ってから、魔扇で顔の目から下を隠す、独特の構えをとった。
「良いですわ。」
「それじゃ最初は軽めなんだよ。」
ここあ は短刀を抜き、魔力を込めて魔力剣を生成し、踏み込んで、剣を上段から振り下ろした。
それをアルテェスが魔扇で受け止める。
魔力が吸い取られているのを感じ、飛び退って距離を取った。
「次は少し強めに行くんだよ。」
「き、来なさい、ですわ。」
ここあ の言葉にちょっと緊張気味に答え、構えるアルテェス。
納刀し、腰を落として構え、
「それじゃ、行くんだよ。
抜刀技・閃光!」
言うや、一足飛びでアルテェスの目前に迫り、抜刀からの鋭角な8の字を描くような剣筋で、左下から右上、右上から左上、左上から右下、そして納刀とゆう3連撃を、込める魔力と速度を抑え気味に放った。
アルテェスは魔扇をゆらゆらと舞わせ、攻撃を受け流した。
納刀後、飛び退って、距離を取った ここあ が、
「無駄のない綺麗な動きなんだよ。」
の賛辞に、
「これくらいなら、何とかですわ。」
少し呼吸を乱しながら答えた。
「それじゃ、少し本気出すんだよ。
アルテも攻撃してくるんだよ。」
「わかりましたわ。
それでは、参りますわ。」
そう言ってアルテェスが魔扇を規則性のある動きで舞わせた。
すると、ここあ の足元に魔方陣が現れ、魔法”光の牢獄”が発動した。
「拘束系の演舞魔法なんだよ。
やるんだよ。」
※演舞魔法は呪文で発動する魔法と同じ効果を動きで発動させる魔法である。
目を向けるとアルテェスが次の動きに入っていた。
攻撃が来る、そう判断した ここあ は込める魔力を増やし、
「抜刀奥義、風斬り!」
抜刀の勢いを利用して、体を中心に1回転し、”光の牢獄”を斬り壊した。
「早い、ですわ。」
ここあ にあっさり拘束を解かれ、あせりながらも演舞を終わらせた。
最後にくるっと魔扇を1回転させると円になった魔力光から無数の氷の針が ここあ に向かって飛んで行った。
「ちょ、それ多過ぎなんだよ。
アルテってば容赦ないんだよ。」
ここあ は迫りくる氷の針を見ながら、
『これは避けられないんだよ。
星の輝きじゃ間に合わないんだよ。
う〜ん、まぁいいんだよ。
ちょっとアルテに痛い目見てもらうんだよ。』
超速で思考し、方針を決めて、構える。
「抜刀奥義・旋風!」
強めに魔力を込めて、抜刀。
ヒュン
と剣先を1回転させ、
スン
納刀。
剣先の回転と魔力で生み出された旋風が氷の針を吹き飛ばしながらアルテェスに迫る。
「ちょっと強過ぎですわ。
手を抜くって言ったのに、酷いですわ!」
恨み言葉を溢すも、魔扇をくるくる回しながら、
「防御障壁!」
必死に防御壁を展開し、風を防いだ。
が、
「ま、魔力が。。」
魔力不足で抑え切れず、
「あびゃぁぁぁぁぁ!」
変な叫び声と共に、吹っ飛んだ。
「わぁぁ、アルテぇぇぇ。」
ここあ が叫びながら慌てて駆け寄った。
派手に転がったアルテェスの上半身を起こし、
「ごめんなんだよ、アルテ。
ちょっと強過ぎたんだよ。」
大慌てで詫びの言葉を掛けた。
アルテェスが目を開け、ジト目で睨みながら、
「これは、イジメですわ。。」
恨み言葉を発した。
「ほんとごめんなんだよ。
加減したつもりだったんだよ。」
必死に詫びる ここあ に、
「でも、今の失態は私の欠点が原因なのですわ。」
立ち上がりながら、アルテェスが告げた。
「ん?どうゆう事なんだよ?」
「さっき修行中と言ったのはこの事なのですわ。
魔力制御が上手く出来なくて、すぐに魔力を消費してしまうのですわ。」
「それで受け切れなかったんだよ。」
「はぁ。もっと修行に励まないとだめですわ。
でも、ここあ はやっぱり凄いですわ。」
アルテェスに褒められ、
「10年も欠かさずやってたからだよ。
でも、これでもストゥーリアさんにも鉄騎将にも未熟って言われたんだよ。
だから、もっと強くなるんだよ!」
「私も置いていかれないよう頑張りますわ。」
互いの拳を軽く当て、表情を引き締めた。
戦いはこれからなのだ、と。
その時、
くぅぅ
くぅぅ
2人のお腹から小さな苦情が響いた。
「お腹、空きましたわ。」
「お腹、空いたんだよ。」
顔を見合わせ苦笑する。
「それでは食堂に行くのですわ。」
「だよ。」
言って、2人は歩き出した。
「そうですわ。
頼まれてた"オンモイール"での記録映像、手配しておきましたわ。
お昼には届くはずですわ。」
アルテェスが切り出した。
「助かるんだよ。
あの戦闘には反省点がいっぱいなんだよ。
ちゃんと見とかないと、なんだよ。」
「それ、ここで一緒に見てほしいですわ。
どんな事があったのか見ておきたいのですわ。」
「あぁ。結構めちゃくちゃだと思うけど、それでいいなら一緒に見るんだよ。」
ここあ の返答に、
「良かったですわ。
ここあ がどんな風に戦ってたのか気になってたのですわ。」
アルテェスが顔を綻ばせて返した。
そして、
「それで、ですわ、ここあ。
食事の後、お祖母様に挨拶した後に、ちょっと、付き合って、ほしいのですわ。」
少し顔を赤らめながらアルテェスが切り出した。
「ん?急にどうしたんだよ?
何か顔、赤いんだよ?」
ここあ の切り返しに、
「べ、別に、あ、赤くなんか、あ、ありませんわ。
それで、付き合ってくれるのですわね?」
さらに真っ赤になり、まくし立てた。
そんなアルテェスを可愛く思いながら、
「ふふ。いいんだよ。
で、何があるんだよ?」
ここあ が微笑みながら返した。
「な、内緒ですわ。
って、何笑ってるのですわ!」
「なんか、アルテ可愛いい、って思ったんだよ。」
「な、何変な事言ってるんですわ。
と、とにかく後で呼びに行きますわ。」
「ん、わかったんだよ。」
そんなやり取りをしながら食堂へと向かって行った。
如何だったでしょうか?
ここあとアルテェスの戦闘が追加され、大幅修正になちゃいました。
でも、結構気に入ってます。
楽しんで頂けてたら嬉しいです。
で、あと2回くらいで日常回がお悪予定。
その後はついにあれが出ます。
次回は連休中なのでちょっとはやめに公開出来る、はず。
がんばります。




