「異世界からのSOS。参上、ダイハッシャー!」(33)
第33回を公開します。
なんとか予定通りに公開出来ました。
今回は駆けつけた姫が頑張ってます。
楽しんで頂けたら嬉しいです。
(21)
徐々に”オンモイール”が近付いて来る。
車中で手を組み、焦る気持ちと戦いながら ここあ達の無事を祈るアルテェスの目に防御壁に弾かれながら空に伸びていくビームの光跡が映った。
『あの光はたしか、”ヘッドライトビーム”ですわ。』
その光跡が映像記録で観た車ロボの最大出力攻撃の”ヘッドライトビーム”の光だと確信した。
最強の攻撃を使用したのなら ここあ の勝利で戦闘は幕を閉じたのではないだろうか?
それとも。。
アルテェスは気持ちがモヤモヤし、”嫌な予感”が消えていない事に気付いていた。
「もっと急ぐのですわ!」
苛立ちが声となって運転手に投げ付けられる。
「すいません、これが限界なんです。
あと、3分くらいです。」
運転手の返答に、
「解っていますわ。
けれど1秒でも早く着いてほしいのですわ。」
アルテェスの悲痛な願いの声が溢れる。
その時、正面の防御壁の前で鉄騎将と少女が戦っているのが見えた。
その少女が ここあ なのだと、無事だったのだと、安堵したのと同時に、倒れ伏したのが見えた。
そして鉄騎将が何かしようとしている。
とゆう事は ここあ は生きている。
助けなければ。
アルテェスは魔動車の窓を開け、頭と左腕を出して、手のひらを鉄騎将に向け、
「マソワヘエキゼシ!」
魔法の呪文を唱えた。
祖父と同じ守護魔術師であるアルテェスの束縛の魔法”光の牢獄”が鉄騎将を捕らえた。
「やりましたわ!」
アルテェスは左腕で小さくガッツポーズを決めながら歓喜の声を上げた。
「ここちゃんの側に止めるのですわ!」
「了解しました!」
アルテェスの指示に答え、運転手がハンドルを切ってブレーキを踏み込み、横滑りで ここあ の1メートル手前で停車させた。
止まると同時に車を飛び出したアルテェスが、
「ここちゃん!」
叫びながら ここあ の側に駆け寄って座り込んだ。
うつ伏せで倒れている ここあ をゆっくり仰向かせ、首の後ろから肩全体を抱えて上半身を起こすと、優しく抱き締めた。
「ここちゃん。。」
ここあ の耳元に小さな声で呼び掛けた。
その声に反応するようにうっすら開いた ここあ の目がアルテェスをぼんやり見つめながら、
「アルちゃん、やっと、会えた、んだ、よ。。」
安堵の声を発し、完全に意識を失った。
「無事でよかったですわ。」
ここあ がこの状況を乗り切り、会えた事に安堵したアルテェスの目から涙が零れた。
けれど、ここでのんびりしてはいられない。
鉄騎将を退かせ、城に戻って ここあ をゆっくり休ませたい。
今の自分のレベルで太刀打ち出来ないだろう事は判かっているけれど、全力で守り抜く。
そう決意したアルテェスは、
「ドクター、ここちゃんをお願いしますわ!」
車を降り、隣で控えてくれていたドクターに ここあ を委ねた。
「お任せを。」
答えたドクターは看護師長とで ここあ を車に運び込んだ。
「アリム、そこにラビちゃんが居るのですわ?」
アルテェスがAIに声を掛けた。
「アルテェスサマ、オヒサシブリデス。
ゲンザイノ呼称ハ、”しゅうくん”二、ヘンコウサレテイマス。
コンゴハ、”しゅうくん”ト、オヨビクダサイ。
ミラビィーサマハ、ナカデ、ネムッテオラレマス。」
AIの返答に、
「しゅうくん、ですわね。
解りましたわ。
それで、動けるのですわ?」
アルテェスが質問を重ねた。
「”ドライブモード”ヘノ、ヘンケイハ、カノウデスガ、走行ハ、ムリデス。」
「解りましたわ。
ドクター、ラビちゃんもお願いしますわ。
リオチェ、牽引の準備をお願いしますわ。」
「お任せを。」
「了解です。」
ドクター、看護師長、運転手が動き出したのを確認したアルテェスは鉄騎将に意識を向けた。
程なく”光の牢獄”が破られるであろう。
その前に準備をしておかなければならない。
アルテェスは魔力を上げる事に集中した。
その時、
パーーーン!
破裂音が響き、
「やってくれるじゃねえか、小娘。
この魔法が使えるって事はアップロスの血縁だな。」
鉄騎将が”光の牢獄”を破壊し、問い掛けてきた。
アルテェスは魔力を上げながら、
「お初にお目に掛かりますわ。
私の名は”アルテェス”ですわ。
お察しの通り、”アップロス”の孫ですわ。
以後、お見知りおき頂きたいですわ。」
口上を述べ、にっこり微笑みながらカーテシー(貴族女性のお辞儀の所作)をして見せた。
その間にも徐々に魔力が上がっていく。
そんな事に興味はないとばかりに、
「で、次はお前が相手をしてくれるのか?」
鉄騎将が挑発の声を掛けた。
『もう少し魔力を上げたかったですわ。』
そう思いつつも引き伸ばすのは難しいと感じたアルテェスは、
「そのつもりですわ。
けれど、直ぐに終わらせますわ。」
強い口調で返し、
「ネセロヤ、ムヘウワ、サリイニ、ワメイ!」
魔法の呪文を唱えた。
呪文に反応し、鉄騎将の足元に黒い魔方陣が現れた。
「ほぅ、”常闇への永久追放”か。
いきなり超上級魔法ぶつけてくるとか、なかなかエグいじゃねぇか。
使いこなせんのか?」
余裕を見せる鉄騎将に、アルテェスは額に汗を滲ませながら無言で集中し、魔力を放出し続けた。
魔方陣から黒い靄が発生し、鉄騎将に絡み付いていく。
そして首まで靄に包まれた時、
「しょうがねぇ、今回はこれで引いてやるよ。
約束通り、重鉄騎獣連れて遊びに行ってやるから、
楽しみにしときな。」
鉄騎将が再訪を宣言したのと同時に頭の先まで包み込まれ、靄は魔方陣に吸い込まれるようにして消えた。
それを見て気が抜けたアルテェスは膝から崩れ落ち、地面に両手を突いた。
呼吸が荒くなっている。
「はぁ、はぁ、何とか、退けられ、ましたわ。
けれど、常闇に、追いやる事は、出来なかった、ようですわ。
もっと強く、ならないと、ですわ。」
息を切らせながら呟いたアルテェスは気力を振り絞って立ち上がると、
「隊長さん、後始末は、任せますわ。
私は、急ぎ城に、戻りますわ。
後で報告を、お願い、しますわ。」
防御壁の中でこちらの様子を呆然と見つめている隊長に声を掛けると、返事も聞かずふらつきながら車に乗り込んだ。
アルテェスが乗るのを待ち構えていた運転手は直ぐに車を動かし、城への転移門を出現させると車を牽引しながら、突入して行った。
如何だったでしょうか?
姫の最強魔法も炸裂し、頑張りました。
って事で、次回から新章になります。
未熟さを痛感させられたここあが!?
楽しみにして頂けたら嬉しいです。
よろしくお願い致します。




