「異世界からのSOS。参上、ダイハッシャー!」(32)
第32回を公開します。
何かもう公開のタイミングがぐちゃぐちゃになってしまった。。
なので、しばらくは不定期になると思いますが、早めに調整出来れば、と思っています。
そんな今回はここあ大ピンチな感じです。
満身創痍で鉄騎将と対峙する事になったここあは!?
楽しんで頂けたら嬉しいです。
挑発しながら近付いて来る鉄騎将を見つめ、
「これは、すっごく、ヤバい状況、なんだよ。。」
肩で息をしながら ここあ が絶望的な呟きを漏らした。
鉄騎獣を倒すのに魔力を使い切っている。
現状、自身の体術のみで戦うしかないのだが、体力も限界に近付いている。
そんな状態で格上の鉄騎将と戦っても勝てる要素は微塵もなかった。
けれど戦闘を回避出来る状況ではない。
ここあ は覚悟を決め、
「しゅうくん、私、行くんだよ。
でも、きっと、殺られちゃう、んだよ。
その時は、ラビちゃんを、アルちゃんに、送り届けて、欲しいんだよ。」
体力を使い果たして膝の上で寝息を立てているミラビィーの頭を撫でながら、AIに託した。
「アルちゃん、ごめん、なんだよ。
会って、お話、したかった、んだよ。」
アルテェスへの思いと共に涙が零れた。
ほんの一時思いを馳せた ここあ は涙を拭い、大きくひとつ深呼吸し、
「しゅうくん、背中、開ける、んだよ」
ここあ の指示に従おうとした時、辛うじて機能していた車ロボの索敵機能の範囲内に何かが入ってきたのを感知した。
「ココア、ホウコクシマス。
アルテェスサマノ、専用車ガ、セッキンチュウ。
アト、10プンホドデ、トウチャクサレマス。」
AIの突然の報告はまさかの朗報だった。
ここあ は顔を綻ばせながら、
「それって、アルちゃんが、来るって事、なんだよ?」
尋ねた。
「ゲンザイ、タイハンノセンサーガ、キノウシテイマセン。
ナノデ、セイタイハンノヲ、カクニンデキマセンガ、コラレテイルデショウ。」
AIの返答に、
「それじゃ、ちょっと待ってれば、アルちゃんが、来てくれる、んだよ。
なら、このまま。。」
安堵の声を発していると、
「いつまで待たせやがるんだ。
さっさと出てこねぇと、ロボ毎ぶっとばすぞ!」
苛立った鉄騎将の怒声が聞こえてきた。
どうやら隠れて待っている事は出来なさそうだ。
「アルちゃんが、来るまで、時間稼ぐ、んだよ。
しゅうくん、背中開け、るんだよ。」
今の体力ではかなり厳しいが、あと10分弱。
それだけの時間を耐えればアルテェスが来てくれる。
希望を胸に ここあ はミラビィーをシートに預けると、背中から出て、地上に飛び降りた。
何とか着地したが、踏ん張りが利かず片膝を付いてしまった。
気力で立ち上がったものの、何とか踏ん張っているといった状態だった。
「やっと出てきたか。
ってか、遊べそうな感じじゃねぇな。
がっかりだぜ。」
鉄騎将が詰まらなさそうに言葉を投げつけた。
「そんじゃ、逝っちまいな!」
言いながら攻撃しようとした時、
「抜刀奥義、星の輝き!」
ここあ が気力と体力を振り絞り、抜刀奥義を放った。
魔力が枯渇している為、短刀の刀身そのものでの斬撃が星の軌跡を描く。
それを鉄騎将は微動だにせず、受けた。
けれど傷のひとつも付けられてはいなかった。
技を放ち満身創痍状態の ここあ に、
「ぬる過ぎる。
ほんと、がっかりだぜ。」
鉄騎将がやれやれとゆう感じの呆れ声を発した。
「小娘、ひとつ教えといてやる。
トコートの技は全て知ってんだ。
未熟な劣化技なんざ通用しねぇぞ。
あの世とやらでトコートに慰めて貰いな。」
そう言って ここあ の首に手を伸ばしてきた。
『やっぱり、おじいちゃんの技じゃ、通用しないんだよ。
なら、これしかないんだよ。』
意を決し、鉄騎将の右手から逃れるように飛び退り、体制を整える。
「往生際が悪いぜ。
さっさと楽になりな。」
嬉々とした表情の鉄騎将が ここあ を追い詰めようとじわじわと近付いて来る。
のを無視し、ひとつ大きく深呼吸した。
魔力は枯渇し体力的にもこの一撃が最後の一手になる。
修行時代に祖父に言われた。
「自分の技を作れ。」
と。
そして考えた。
漫画やライトノベルに出てくる技を参考にして編み出し、ずっと練習してきたオリジナルの技。
成功率3割程だが、今は賭けるしかない。
ここあ は左腰に添えた短刀の柄を順手持ち(親指を鞘側)で握り、腰を少しおとして構えた。
そして、抜いた。
「抜刀独技・二連空裂斬!」
叫びながら抜き放った短刀を横に一閃、からの一旋。
短刀を振った勢いを使って体を1回転させ、同じ軌道でもう一度、斬る。
一撃目で斬った空を二撃目で追撃する事で発生する"かまいたち"が不可視の刃となって敵を切り裂く。
勢いでもう半回転して止まった ここあ が、
スン
納刀すると同時に、
ドサッ!
鉄騎将の左腕が二の腕を半分程残して落下し、断面から機械油が吹き出した。
のと同時に、
バタッ
鉄騎将に背を向けて動きを止めていた ここあ が崩れ落ちるように倒れ伏した。
辛うじて意識はあるものの、体を動かす事は出来なくなっていた。
そんな ここあ に目を向けながら、
「やってくれるじゃねぇか。
そんな状態で腕を落とされるとは思わなかったぜ。
見事だ、と褒めてやるよ。
けど、ここまでだ。
たしか ここあ とか言ってたな。
生きてられたらトコートを超えられかもな。」
鉄騎将が賛辞の言葉を掛けてくる。
そんな言葉を聞きながら、
『首、狙ったのに、外し、ちゃった、んだよ。。
アルちゃん、ごめん、なんだよ。。』
悔やしさが込み上げていた。
技を放った時、踏み込みに右足が耐え切れず、ほんの少しだけ膝が落ち、軌道が下ってしまった為、狙いが首から腕にズレてしまったのだ。
「あばよ、ここあ。」
別れの言葉を口にした鉄騎将がとどめを刺そうとした時、
キュィィィィィン!
甲高い魔動エンジンの音を響かせながら車が走り込んできた。
窓から左腕と頭を出したアルテェスが、
「マソワヘエキゼシ!」
手のひらを鉄騎将に向けて魔法の呪文を唱えた。
足元に現れた魔方陣から出現した光の円柱に鉄騎将が囚われた。
「こ、これは"光の牢獄"!?」
牢内で呟く鉄騎将を余所に、車が ここあ の近くで停車した。
飛び出したアルテェスが、
「ここちゃん!」
叫びながら駆け寄ると、座り込んで優しく ここあ を抱き上げた。
「アルちゃん、やっと、会えた、んだ、よ。。」
アルテェスの姿を目にして安心した ここあ は意識を失った。
如何だったでしょうか?
姫、ついに参戦です。
次回は姫VS鉄騎将。
姫、戦います。
どうなるのやら。。
次回は水〜木曜公開予定。
何とか予定通りになるよう頑張ります。
よろしくお願い致します。




