「異世界からのSOS。参上、ダイハッシャー!」(19)
第19回を公開します。
ついにバトルに突入。
今、自分が表現できる最大限で書きました。
まだまだ拙い表現しか出来ていないとは思いますが、熱さは注ぎ込めたと思ってます。
いつもよりちょっと文字数が多めですが、ロボと魔獣のバトル、楽しんで頂けたら嬉しいです。
(7)
ヒィィィィィィィィィィン!!!
ここあ の変形命令に反応し、車がその姿を変えていく。
車体後部が脚部に変形する。
車体の下に付いているダクトから空気が放出され車体が立ち上がるように車体前部から浮き上がっていき、腰部となる部分が半回転して脚部が確立される。
助手席が折り畳まれ、運転席が背中方向に倒れるように動き真ん中に移動する。
車体前部が左右に広がりヘッドライトが肩になり前輪部が腕に変形する。
そしてボンネットが開き中から頭部が立ち上がったり、車ロボへの変形が完了する。
※車が走行モードから戦闘モードに変形するのに要する時間は約5秒だ。
ここあ が腕を動かす操縦桿と足を動かすペダルを巧みに操作し、変形後のカッコイイ(と思っている)ポーズを決め、
「バトルハッシャー、スターティング!」
決め台詞がマイクを通して外部スピーカーから響き渡った。
※全てトコートが考えた事で、ちょいダサなのだが、アニメを観た ここあ は目を輝かせて盛り上がっていたのだった。
鉄騎獣たちは声の大きさに、ちょっとだけ怯んでいた。
「ココア、ソウユウノハ、カンペキデスネ。
マッタク、イミハ、ナイデスガ。。」
少し呆れ気味に聞こえる電子音声を小音量で発した。
「しゅうくん、何気に辛辣なんだよ。。」
そんなやり取りをしている間に、車ロボを敵と認識した地上の鉄騎獣たちが一斉に襲い掛かってきた。
先頭の鉄騎獣が振り上げた右腕を、振り下ろしながら引っ掻きにくるのを、
「ホイールシールド!」
左腕の車輪から丸く広がり出た魔力防壁で受け止めながら、
「ハッシャーダガー!」
左腕に仕込まれていた短剣を右手で掴んで抜き出し、鉄騎獣の腹部に突き刺した。
ゴォアァァァ!
鉄騎獣が痛みで叫び声を上げた。
ここあ は突き刺した短剣を横に動かし、斬り抜いく。
鉄騎獣は傷口から血を吹き出しながら、魔力防壁を滑るように倒れ落ち、
ゴアッ、、ゴアッ、、。
苦し気な声を漏らしている。
それを見た残りの鉄騎獣たちは車ロボへの敵意を増大させ、怒りも露に迫ってくる。
左側から引っ掻き攻撃を仕掛けてくる鉄騎獣の爪を魔力防壁で受け止め、
「同じ攻撃じゃ、つまらないんだよ。」
「ココア、ミギカラモ、、。」
余裕で短剣を突き刺しに行こうとした。
だが、調子に乗っていた ここあ はAIの電子音声を聞き漏らし、右腕をもう1体の鉄騎獣にしがみつかれてしまった。
そちらに気を取られた隙に左に居た鉄騎獣が左腕にしがみついてきた。
「え、ちょっ、それはダメなんだよ。」
両腕を拘束され動けなくなった ここあ が焦り声を発した。
その時、前後からかなり強烈な衝撃を感じた。
「ぐっ、、。」
歯を食いしばり、衝撃に耐える。
その衝撃は鉄騎獣の体当たりによるものだった。
鉄騎獣はもう1度体当たりしようと距離を取っていく。
その間に右手首を回して剣先を鉄騎獣に向けると、
「魔力剣!」
短剣に魔力を送り込み、光の剣を作り出した。
伸びた光の剣が鉄騎獣の脇腹に突き刺さる。
ゴォアァァァ!
苦悶の声を上げ、鉄騎獣が右腕を離した。
すぐさま鉄騎獣から剣を抜き、右手首を回して元の位置に戻して左側の鉄騎獣の頭に剣を突き刺した。
鉄騎獣は一瞬で絶命した。
その時、車ロボの頭上から無数の羽が降り注いだ。
上空で様子を伺っていた鉄騎獣が攻撃を仕掛けてきたのだ。
羽は車ロボの体にたっぷりと刺さり、発火した。
車内の温度が急激に上昇し、
「あ、暑いん、だよぉ。。」
ここあ から苦し気な声が漏れた。
一気に上昇した車内温度に体力と気力を奪われ、魔力剣が消えて短剣に戻ってしまった。
あまりの暑さに意識が飛び掛けた時、
ブオー!
っと冷えた風が吹き出してきた。
「マリョクジュウテン二、ジカンガカカッテ、シマイマシタ。
ココア、ダイジョウブデスカ?」
AIが電子音声を掛けてきた。
車内を冷却魔法の冷気が冷やしていく。
「助かったんだよ。。」
「ワタシハ、サポートシカ、デキマセンノデ。」
そうこうしている内に刺さっていた羽が燃え尽きた。
羽の近くに倒れていた鉄騎獣3体にも飛び火して焼き上げたが、まだ鉄騎獣2体と鉄騎獣が健在。
車ロボは空を飛ぶ事が出来ないので分が悪い状態に変わりはなかった。
変わらず距離を取り、突っ込むタイミングを計っている鉄騎獣。
上空から次の攻撃の準備を始めている鉄騎獣。
「かなり、ヤバい状況なんだよ。」
呟く ここあ の額から一筋汗が流れた。
「なんとか突破口を開かないと、なんだよ。」
袖で汗を拭いながら、ひとり言ちる。
「先手必勝、なんだよ。
車輪移動!」
ここあ の言葉で車ロボの足に付いていた後輪が下りて地面に触れた。
足の裏からせり出した車輪とで2足歩行の時より速く移動出来るようになる。
※ただし小回りが利かない。
ギャルン!
と空転しつつ地面を掴んだ車輪が車ロボを勢いよく前方に動かした。
さながらジェットローラーのような感じだ。
そのまま加速し、前でけん制していた鉄騎獣に一気に近付いた。
急加速で接近してきた車ロボに驚き、動きが止まった所を、
「魔力剣!」
加速の勢いを加えた魔力の剣を水平に構え通り過ぎた。
鉄騎獣の体が上下2つに分断され、絶命した。
それを見て突っ込んできた後ろに居た鉄騎獣をかわし、横っ腹に剣を突き刺した。
そのまま剣を上に斬りながら抜き上げ、振り上げた剣を首元目掛けて振り下ろした。
ボトッ
と鉄騎獣の頭が落ちた。
動きの止まった車ロボに鉄騎獣5体が炎の息吹で一斉に攻撃してきた。
「ココア、ウエカラ、コウゲキデス。」
熱源を関知したAIの電子音声に反応して、素早くその場を離れた。
さっきまで居た場所に炎の息吹が吹き掛けられて地面が焼け焦げる。
「あぶなかったんだよ。
しゅうくん、ありがとなんだよ。」
「ドウイタシマシテ。」
少し移動してから停止し、空に向けて、
「ヘッドライトビーム!」
「ココア、イマ、ソレハ。。」
肩に移動していたヘッドライトから2筋の光線が放たれ、鉄騎獣1体の体を貫いた。
そして、
ヒュゥゥ、ゥ、、ン
と魔動エンジンが停止し、魔力充填待ち状態になってしまった。
「え?え?止まっちゃったんだよ。」
困惑している ここあ に、
「トメヨウト、シタノデスガ、キャンセル、デキマセンデシタ。
マリョクザンリョウガ、スクナイトキニ、アンナオオワザハ、ダメデスヨ。」
AIに咎められた。
「うう、ごめん、なんだよ。
そんなに魔力、減ってたんだよ。。」
落ち込む ここあ に、
「コウゲキ、キマス。」
AIが急報を伝えた。
「こんなとこで止まってたら”いい的”なんだよぉ。。」
そんな的同然な車ロボに鉄騎獣が代わる代わる炎の息吹を吹き掛けてきた。
(8)
戦闘が始まった。
ミラビィーは初めて本格的な戦闘を目にし、体が固まり、動けなくなっていた。
「あれが、ばとるはっしゃー、なの。。」
呟きが漏れる。
祖父から聞かされた50年前の戦いの話。
その中に出てきた車ロボを見るのも初めてだった。
「あれに、ここねえやがのってるの。」
ミラビィーは激しくなる戦闘から目が離せなかった。
ここあ が優位に戦っているように見えていたが、空からの攻撃で車ロボが火達磨にされた。
「だめなの。
ねえやがしんじゃうのぉ。」
ミラビィーの頭を祖父が亡くなった時の事が過り心が揺れた。
と同時にまた、
トクン!
と胸の奥で何かが反応した。
その何かがミラビィーが大事な事を忘れていると訴えかけてくる。
そんなミラビィーの目に危機を脱した車ロボの姿が写った。
一気に2体の鉄騎獣を倒し、空に向かって綺麗な光を放ち、鉄騎獣1体を倒した。
そして、動かなくなった。
「ねえや?」
訝しんで見ていると、動かなくなった車ロボに鉄騎獣が代わる代わる炎を吹き掛け始めた。
このままだと本当に ここあ が殺られてしまう。
大好きな ここあ が居なくなってしまう。
また1人になってしまう。
あんな寂しい思いをするのはもう嫌だ。
ここあを守りたい。
ミラビィーの心が強く願った時、
『本当に大事な人を守りたいと願った時、お前の力は蘇るじゃろう。
その力で大切な人を守るのじゃよ、ミラビィー。』
ずっと前に聞かされた祖父からの言葉。
どうして忘れてしまっていたのか?
けれど今、そんな事はどうでもいい。
ミラビィーは強く願う。
"ここあ を助けたい"と。
その時、
「からだが、あついのぉ!」
ミラビィーの体に変化が起こった。
両手の甲の真ん中に、赤く丸く小さな宝石が現れた。
それを見て全てを思い出した。
祖父に封印されていた力の事、譲り受けた力の事を。
そして、
「そかめき!」
開放の呪文を叫んだ。
ミラビィーの閉ざされていた魔力経路が開き、手の甲の宝石から取り込まれた魔力が体の中を駆け巡る。
「うぁぁぁぁぁっ!」
体内に魔力が満ちた時、ミラビィーの体が本来の中学1年生くらいの体格に変化した。
※服は ここあ のを借りて着ていたので破れなかった。
「これが私の本当の姿、なの!?」
大きくなった体を不思議そうに見回した。
「って、こんな事してたらダメなの。
ここねえやを助けるの。」
攻撃を受け続けている車ロボを見つめ、
「ねえや、すぐに助けるの。」
決意の言葉を発し、表情が引き締まる。
そして叫ぶ。
受け継いだ力、相棒の名を。
「スクラーンブル、ブイングマージェ!」
その声に答えるように、空に魔法陣が現れた。
その中心から、少し大きめのうさぎを想起させる形をした飛行機型の魔動乗物が姿を現した。
ミラビィーは軽く足を曲げ力を貯める。
そして貯めた力を開放し、大空高く飛び上がった。
ミラビィーの落下位置に合わせるように飛行機が旋回して、空中停止し、コックピットのシートで受け止めた。
キャノピーが閉じ、ミラビィーは操縦桿を握ると、
「ここねえやー!」
叫びながら鉄騎獣に突っ込んで行った。
如何だったでしょうか?
ロボと魔獣のバトル、少しでも熱さが伝わっていてれば良いのですが。。
そして三章で書きたかったミラビィーの覚醒まで書く事が出来ました。
次回はここあとミラビィーの共闘。
水曜公開の予定です。
楽しみにして頂けたら嬉しいです。
よろしくお願い致します。




