「異世界からのSOS。参上、ダイハッシャー!」(9)
第9回を公開します。
こっちは巻き上げました。
4人目がどんな娘なのかは、もうちょい先になりますが、緊急事態です。
そしてここあはついに異世界に。
楽しんで頂けたら嬉しいです。
ぐすっ、ぐすっ、っく、んっ
泣きながらとぼとぼと家に向かって歩いていると、
ぶるっ
と体が震えた。
「おひっこ。。」
寒気に近付いたこの時期、森の中は日の光が届きにくく、肌寒さく感じていた。
その中を薄汚れたノースリーブの白い膝丈ワンピース姿で長時間食料を探していたので、体が冷えきり、尿意を催してしまった。
木陰で済ませる事も出来たが、
「いえ、もうすぐらし、いしょぐの。。」
鼻声で呟きながら、急ぎ帰宅する事を選択した。
とぼとぼだった歩調がてくてくに変わり、足が速まりだした時、
ガサ、ガサガサ
木々の間から鉄騎獣が3匹、姿を現した。
額にドリル角を付けられたライオンくらいの大きさの狼鉄騎獣がよだれを垂らしながら、血に飢えた目を少女に向け、
グルルルル
唸り声を発していた。
「てっき、じゅう。」
少女は恐怖で動けなくなっていた。
祖父から話を聞いてはいたものの、遭遇したのは初めてだった。
「こわいよぉ、たすけて、じいやぁ。」
涙を流し、心の拠り所だった祖父に助けを求めてしまう。
けれど、その小さな呟きは誰にも届かなかった。
狼鉄騎獣はじりじりと近付き、1匹が額のドリルを回しながら飛び出した。
「やぁぁぁぁぁ!」
少女の叫びと同時に、
キン!
甲高い音が響き、狼鉄騎獣の動きが止まった。
「もう、大丈夫だよ。」
少女の目に小さな武器で狼鉄騎獣のドリル角を受け止め、抑え込んでいる女の人の背中が写った。
(4)
『異世界、わくわくだよ。』
などと思う間もなく、門を潜るとそこは異世界だった。
門を抜けた先は舗装された道だが、この車しか走っていなかった。
郊外の高原道路といった趣の両脇に木々が生えている道を5分も走らないうちに小さな建物と森が見えてきた。
「アレガ、トコートサマガ、ツカッテイタイエデス。」
AIが電子音声を掛けた。
「あれ、が?」
その建物を目にした ここあ の記憶の封印が、解けた。
「あ~、あの家知ってるよ。
前に来た事あるよ。」
12年前。
ここあ は祖父に連れられ1度だけ”異世界”に来ていた。
その時に滞在していたのがこの家だった。
けれど、”異世界”の事を戻って楽しげに色んな人に話すだろう、そう考えた祖父が記憶を封印していた。
AIの説明に、
「そうだったんだよぉ。」
ここあ がちょっと不満げに呟いた。
そうこうしているうちに家に到着し、車を駐車スペースに止めると、
「無限収納カラ、イヤホンヲ、トリダシテクダサイ。」
AIが電子音声を掛けた。
言われた通りに無限収納からイヤホンを出した。
出てきたのは片耳に付けるイヤホンマイクだった。
「ソレデ、ハナレテイテモ、ワタシトハナセマス。」
「なんだかヒーローみたいで、格好良いんだよ。」
嬉々とした声を上げながら右耳に装着し、エンジンを切って車を降りた。
駐車スペースは家の裏手だったので、ぐるっと家の正面に回り、玄関扉の前に立った。
「しゅうくん、扉の鍵はどうなってるんだよ?」
とマイクに話しかけた。
「トウロクシャガ、トッテニフレレバ、カイジョウサレマス。
ココアハ、マエニキタトキニ、トウロクサレテイマス。」
「わかったんだよ。」
答えて取っ手を握り、手前に引っ張ると、
スッ
と何の抵抗もなく扉が開いた。
「何だか元世界よりスゴいんだよ。
ってあれ?」
開いた扉から中に入ったが、
「しゅうくん、電気が点かないんだよ。」
真っ暗なままだった。
「スイマセン、ココア。
キュウミンモードノカイジョヲ、ワスレテイマシタ。」
AIの返答後、程無く玄関と廊下の電気が点いた。
「え、これどうゆうことなんだよ?」
ここあ が目にしたのは玄関と廊下に点在する足跡だった。
それは裸足で外に出て、そのまま入って歩き回った、そんな感じの痕跡だった。
「しゅうくん、泥棒だよ!」
小声でAIに伝え、ポケットから収納板を出して、短刀を取り出した。
如何だったでしょうか?
少女の前に現れたのは?
そして泥棒の正体は?
解っちゃいますよね。
次回、土曜更新。
楽しみにして頂けたら嬉しいです。
よろしくお願い致します。




