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ギャング勢力

町中でギャングたちが争っている。銃声、爆発音、誰かしらの大声が聞こえる。

「レジナ、レウス!」

紫色のコートを着たグロースがメンバーに指示を出す。

「10時、(ガン)!」

グロースが自分の銃を宙に投げ付け、それをレジナの鞭が拾った。そしてそれをレウスのもとへそのまま運んでやると、彼は見事にキャッチして構え、標準を敵に向けた。

一方のグロースもプライム・ガンを取り出し、構える。標準をあて、引き金を引いた。二つぶんの発砲音がすると、それぞれの弾丸が一人のギャングを貫いた。出血はしないが、ダメージが通っていることは彼の様子から分かった。

「ぐほぁあっ!?」

声をあげ、ビルの窓から身をのりだし、墜落していく。

「捉えたぜ、グロース!」

ヴィーテが敵を発見した。

「頼りにしてるぞ、ヴィーテ!」

グロースは彼の下へ駆けつけ、ダガーを構える。反対側の手でヴィーテの肩をぽんっと叩き、信頼の意を見せた。

「おう! 任せな!」

彼はアックスを担ぎ上げ、捕捉した敵目掛けて走り出す。グロースは空高く舞い上がり、化神のアストラを召喚した。

「喰らえ!」

ダガーの先を敵に向けると、召喚されたアストラは炎属性魔法のフィアーを放った。逃げ足を奪ってやるためだ。そしてまんまとやられたそいつを、グロースとヴィーテで追い討ちをかけてやった。

「よっしゃー! “2人撃破(two down)”!」

ヴィーテが拳を掲げて言う。

「…! 危ない!」

グロースがヴィーテを突き飛ばし、飛んできた雷魔法から守った。プライムの姿になっている間は、初級の魔法程度なら打ち消すことができる。

「レジナ!」

リーダーの呼び掛けに颯爽と現れた彼女が巧みにムチを操り、そのギャングを痛め付ける。

「いきますよ、アシュロ!!」

『フフフッ…! 妾たちを敵にしたのが間違いじゃったのぅ!』

アシュロは色っぽいウインクをしたあと、手のひらを介して息をふっと吹き付けた。

すると、強力な雷が轟音をたてて一人のギャングを撃ち抜いた。今のその攻撃で相当のダメージを負ったと思われる彼は、やはり力なく膝から崩れ落ちた。

「三人目です…!」

彼女が嬉しそうにして言った。

「レジナ、油断しないの!」

コネッサがそう言うと、レジナの背後から不意打ちを狙っていた男を風の魔法で吹き飛ばした。

「す、すみません…!」

レジナはコネッサにお辞儀をし、彼女は手をヒラヒラさせるジェスチャーで返した。

「グロース!」

コネッサが彼を呼ぶ。

「了解…!!」

彼はダガーを構え、彼女が吹き飛ばした男…とは別の方向へ向かっていった。それを不思議がったのは敵だけで、あとのレジナたちは何ともなさそうな反応だ。

「目の前の敵に警戒するのは大事だけど…もう少し広い視野を持つことをオススメするわよ。」

コネッサが言った。敵は、何を言っているんだ、とでも言いたげな表情で彼女を見る。ふと上を見上げると、1人の男がこちらに向かって降りてきていたことに気付く。レウスだ。

急いでその場から逃げ出そうとしたが、彼が召喚したウルグラの剣が、ソイツを貫いた。

「4人目…。皆いるのか。……グロースはどうした…?」

「そろそろよ。」

レウスの言葉にコネッサが応えた。

すると、どこからか小規模な爆発音がした。

「…なるほど。コネッサが最後の1人の位置を探っていたということか。」

「そう。最初にレジナが気付いたのは5人。実働していたのは4人だけ…。だから念のため、もう一度索敵したのよ。そしたら1人だけ……他の皆が戦っている中、1人だけこそこそしてたの。きっと狙撃手(スナイパー)か、私と同じ支援(サポート)係…。きっと包囲されて困惑している私たちを一気に叩こうとしていたのに、私たちのリーダーが思いの外やる気だったのが計画を狂わせたんでしょうね。」

ヴィーテは苦しそうに地面に転がっている敵の胸ぐらを掴み、

「ザマァねぇな! 俺たちのリーダーナメんなよ!?」

と言った。

そして_

『待たせたな。』

アストラがその“1人”を運んできた。その隣にはグロースもいる。

コネッサとソティの能力のひとつに“異空間を作る”ものがある。ワンルーム程の大きさで、例えばそこに物を入れて持ち運びすることもできる。

彼女はそれを使って、敵のギャングをしまっていたのだ。それを解除させ、中にいたそいつらを出てこさせた。

「さぁてと! こいつらどうすんだ? リーダー?」

THE SHADOWの全員が武器を構える。いわゆるホールドアップだ。

グロースは銃を向けている。

「リーダーは誰だ?」

彼がきく。

「………俺だ…。」

話せる程度には気力があるらしい。皆が改めて身構える。

「…何故ここにいた?」

「スーツの男に言われた…。『この辺にギャングがいる』…『倒せば普通よりも化神の強化ができる』…って…。」

グロースたちの中で思い付いたのは、メガナーダだ。きっとそいつがそそのかしたにちがいない。

「…なぁ…俺たちを仲間に入れてくれないか…?」

リーダー格の男が言った。

『よせ、グロース。我らの敵は計り知れん。邪神どもとの戦いに巻き込ませるわけにはいかん。』

アストラが言う。

「……却下だ。」

グロースがリーダー格の男に冷たく答えを突きつけた。

「俺たちでもきっと役立つことはある…! なぁ頼む…。」

彼は必死だ。何故なのかは知らない。もしかしたらこれも…。

『グロース…!』

アストラも同じ考えのようだ。

もしかしたらこれもメガナーダが指示したのだろう。

「……。」

『待て、アストラ。こういうのはどうだ?』

ウルグラが提案してきた。アストラもそれならば、と納得してくれたようで、内容をグロースにも伝えた。

彼は突き付けていた銃を降ろした。

「…直接仲間にはできない。だから、傘下に入れてやる。」

「…傘下…?」

「お前たちのギャングチームを、THE SHADOWの傘下に入れる。それで役に立て。」

「ま、まってくれ!」

「嫌なのか?」

「違う! あんたら…THE SHADOWだったのか…??」

降ろしていた銃を再び構え、発言に警戒する。

「お、俺たちは“クリーンウォーズ”…! あんたらに憧れた化神使いなんだ!」

嘘臭い。

グロースはやはり銃を構えて引き金に指をかけた。

「ほ、ほんとなんだよ!! 結成してまだそんなに経ってないのにランキングに名前があるなんて普通じゃねぇだろ!? あんたらに憧れた5人がクリーンウォーズなんだよ! 俺はブレイブ!」

ブレイブと名乗った男が必死に続けた。どうやら嘘をついているわけではないようだ。コネッサが彼らが話している間に心理を検査したから、信憑性は言うまでもない。

「…分かった。なら傘下に入るな?」

「もちろんだ…!!」

グロースは銃をまた降ろし、今度は手を差し伸べた。ブレイブがそれをしっかりと握りしめると、そのまま彼を起こしてやった。

レウスたちも納得したようで、武装を解除した。


「ウルグラ、何故あいつらを傘下にしようと提案した?」

ユウがきく。

THE SHADOWとCLEAN(クリーン) WARS(ウォーズ)は一旦解散し、それぞれ変身を解除させていた。もちろんTHE SHADOWの正体は知られていない。

一戦終えたTHE SHADOWは、ハルの家で勉強会をしていたので一旦そこに戻っていた。

『メガナーダと接触があったのなら、監視した方が良い。邪神は、余やアストラ、ソティが思うよりも多くの呪術を施す。もし後々になって偽神にさせるそれがあるとするならば、“傘下に入れる”と言って側に置き、監視しやすくした方が良かろう? それに、せっかくなら余らのために働いて貰おうと思ってな。』

「…傘下…。」

シュンスケが呟くように言った。

『いつ偽神になってもおかしくないものをTHE SHADOWのメンバーに置くわけにはいかぬ。それに、正体を知られてもいかぬ。それゆえ、だ。』

「そういうことか。」

ユウは納得した様子だ。

だがこれがどうなるかは分からない。良い方向に向かうことを祈るだけだ。

ふと窓を見ると、陽が良い具合に傾いていたことに気付いた。サツキたちはこの辺で解散することにした。


ハルは、自分以外誰もいないこの空間で、ソファに座ってまったりと過ごしていた。時刻はもう21時を過ぎており、テレビをつければさまざまなジャンルのドラマが放送されている。

気まぐれで作ったインスタントココアを一口飲む。メガネが曇ると普段は気になって仕方ないが、今だけはどうということはない。

今日は自分の過去を皆に話した。

ユウ、シュンスケ、そしてハル。思えばこの三人は、人間の醜い部分をさらけ出した者たちからの被害者という共通点がある。テン、サツキは家柄のプレッシャー…。皆何かしらの悩みを抱えつつも、今の仲間と出会えたからか、生き生きしているように思う。そう思うと、ハルはふふっと笑った。

『…ハル、携帯が鳴っていたぞ?』

アストラが知らせてくれた。そういえば勉強会のときにマナーモードにしていた。バイブしか鳴らないため、気が付かなかった。

ハルはスマホを取り出し、確認する。

_ 留学先、ルアフだよ!

「……………!?」

ハルは思わず目を見開いた。そのメールの後には三時間前から30分置きに何件もの不在着信がある。ハルの様子を気にしたアストラは、ハルの中から出てきてメールを確認した。

『…ほほう……。』

ハルは、こうしちゃいられないと、ソファから立ち上がり、部屋の片付けをし始めた。と言ってもそんなに散らかっているわけではない。今はとにかく何かをしないと落ち着かないのだ。

『そう慌てるな…。』

慌てるなというのは無理だ。アストラの言葉を無視して部屋のあちこちを見て回る。シャンプーとボディソープは自分のものしかないため、急いで買いに出掛けようとしたが、今はほとんどの店がしまっている。

『………諦めろ。』

アストラはそう言うと、ハルの中に戻っていった。

「…皆に知らせた方が…。」

『…そうだな。』

なんて説明をすべきか…。

彼は頭を必死に働かせて考えた。



《当機はまもなく離陸致します。シートベルトの確認を今一度お願い致します。》

機内のアナウンスが鳴った。

行き先はルアフ…の南にあるクワラ。そこからオーラモへいき、そしてルアフに向かう。同じスラフ州なのに面倒な手間をかけなければならない。クワラまでの所要時間は約5時間。

窓際の席につき、そこから外を見ても見えるのは飛行機の翼の先端で消灯を繰り返す光だけだ。

やがて飛行機が滑走路の定位置に着くと、少しGがかかるくらいの速度まで加速させた。大きな音がしばらく鳴ると、今度は機体が斜め上を見上げ、いよいよ離陸した。



化神 #19 ギャング勢力

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