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【110】ALKALOID -対決! マーセディズVSイーディス!-

 部屋の中でコソコソと調べ物をしている3人組の装備を確認すると、マーセディズは一旦後退しキヨマサへ「作戦内容」を伝える。

「相手は格闘家1人とナイフ使いの子ども2人。実力的に負けはしないだろうが、1人をフリーにしてしまうと色々な意味で厄介だ」

「見ず知らずの……敵か味方かも分からない相手に不意打ちを仕掛けるつもりなのか?」

正々堂々を信念とする騎士らしくない手段に疑問を呈するキヨマサ。

「別に危害を加えようというわけではない。ただ……ボクは事情聴取が苦手なだけなのさ」

その指摘をあまり笑えない冗談で誤魔化そうとするマーセディズ。

とはいえ、仮に3人組がジェレミーをさらった連中の関係者だった場合、彼の居場所を突き止めるための有力な「情報提供者」となってくれるだろう。

「はあ……ともかく、相手の方が俺たちよりも一人多いんだぜ。こっちから仕掛けるつもりだということは、何か策があるんだろう?」

「もちろんだ。いいか、まずは――」

3人組を確実に無力化するべく、マーセディズが数分の間に練り上げた「策」とは一体……?


 マーセディズは先ほどと同じように入り口の角へ身を隠し、そこから部屋の中の様子を窺う。

3人組は何か気になるものを見つけたのか、未だに色々と探り回っているようだ。

相手はまだマーセディズの存在に気付いていない。

雷属性のマギア「スタンターン」で1人を硬直させれば、あとは彼女とキヨマサで突入して無力化させることができるだろう。

子ども2人は体格差を活かせば力尽くで押さえ込める。

そして、1人が倒れたら間違い無く残りの2人は敵襲に気付くはずだ。

「ボクがマギアで一番厄介そうな奴を無力化するから、お前はそれを合図に部屋へ突入して右側の女の子を取り押さえろ。左側のもう一人はボクがやる」

「……仕方ない、手荒な真似にならないよう気を付けるぜ。ロリコン扱いされるのは嫌だからな」

キヨマサの承諾を得たマーセディズは静かに詠唱を行い、魔力を込めた右手の人差し指をターゲットへ向ける。

真っ先に無力化すべき一番厄介そうな奴――イーディスの首筋が狙うべき場所だ。


「(少しデカい女とジェレミーと同じくらいのガキが一人ずつ……面白れえ、このアタシに不意打ちを仕掛けるつもりか)」

部屋の入り口付近でコソコソと動いている2人組――マーセディズとキヨマサの存在を既に把握していたイーディスは、相手の油断を誘うためにあえて気付いていないフリを続ける。

彼女は常に警戒しておかなければ生き残れない環境で生まれ育ったため、自分を狙う敵の存在には特に敏感だったのだ。

「(もうそろそろだな。魔力を少しずつ溜めて……そら来た!)」

マギアが飛んで来る直前を見計らい、上半身を横に逸らしながら振り返ることで「スタンターン」をかわすイーディス。

「フンッ、見えているんだよ!」

相手の姿を捉えた彼女は猛然と床を蹴り出し、不意打ちを仕掛けようとしていたマーセディズを追いかける。

だが、銀色の騎士は素早い判断で別の部屋へ隠れてしまったのか、イーディスが通路へ出た時には姿は見えなくなっていた。

「「イーディス!」」

「お前らはそこで待ってろ!」

卑怯にも不意打ちを仕掛けてきた騎士を叩きのめすため、万引きシスターズを待機させたままイーディスは暗い通路を進み始めるのだった。


「おいおい、話が違うじゃないか。あの女……尋常じゃないくらい鋭かったぞ」

「ああ……あれはさすがに予想外だった」

練りに練った作戦が失敗したキヨマサとマーセディズは一旦後退し、かつて物置だったと思われる部屋で2度目のチャンスを窺っていた。

朽ち果てた樽がいい感じに遮蔽物となっているため、通路側からは視認できないはずだ。

「(クッソあいつら……どこに隠れやがった?)」

その時、石造りの通路を踏みしめる足音と共に金髪のメガネ美人――イーディスが現れ、マーセディズたちが隠れている物置部屋の前で立ち止まる。

どうやら、物置部屋が一番怪しいと睨んでいるらしい。

「(この辺りから人の気配を感じるが……よし、あっと驚く必殺技で無理矢理(あぶ)り出してやるか!)」

物置部屋を覗き込んだイーディスは突入を断念し、その代わりに「あっと驚く必殺技」の使用に必要な飛び道具を探す。

「(そうだな……この小石はちょうどいいかもしれん。蹴ったらよく飛んでくれそうだ)」

手頃なサイズの小石を拾い上げると、彼女はそれを使って唐突にリフティングを開始する。

両脚で器用に蹴りつつ魔力を溜めていき……そして、小石が毒々しい紫色を(まと)い始めたところで蹴り放つ!

「食らえッ、アルカロイドキャノン!」


 イーディスが左足で蹴り放った小石は物置部屋の壁にぶつかると、勢いを全く失うこと無くそのまま反射。

「いてッ!?」

「キヨマサッ!」

偶然か必然か、小石が反射した先はキヨマサが隠れている場所であった。

「あの速度でうなじに当たったら痛いに決まってる……!」

これ以上隠れるのは無意味だと判断した彼は立ち上がろうとするが、足に力が入らないのかすぐに片膝を付いてしまう。

「クソッ……さっきの小石のせいか……思うように力が入らねえ……」

キヨマサを苦しめているのは厳密には小石のせいではない。

小石に纏わり付いていた紫色の霧――毒属性マギア「アルカロイド」が原因だ。

健康であれば致命的な事態には至らないとはいえ、時として暗殺に用いられるほど「アルカロイド」の毒性は強い。

今のキヨマサに戦闘行為を強いるのは酷だと言えた。


「お前はそこで毒が引くまで待ってろ。こいつはボクが何とかする」

正々堂々と一騎討ちで勝負を付けることを決断し、聖剣「ストライダー」を抜いた状態で物陰から姿を現すマーセディズ。

「これはこれは……スターシアン・ナイツの騎士様じゃないか。こんなところへ何をしに来られたのです?」

それを見たイーディスは「騎士が不意打ちを仕掛けてきたこと」に不快感を抱いたのか、リフティングを再開しながら嫌みったらしく尋ねる。

「人探しに来ただけだ。貴様、『ジェレミー』という名の少年を知っているだろう?」

「……ジェレミーだと?」

マーセディズがジェレミーの名前を出した時、リフティングを止めたイーディスは意外そうな表情を浮かべるのだった。

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