第9話
「コッタロー君!」
コタローを呼ぶ、ユウカの声で我に帰る
「どう?サツキは工作だけじゃなくて、お料理だって天才なのよ?お嫁さんにどーよ?」
いや…確かにお料理は好きだし、自信はあるけれど…
「あ…えっと…その…」
コタローはだいぶ困ってるみたいだ
「やめなさいっての…からかうのは…」
「えーなんでよ〜」
……ったく…
ユウカは小学生の男の子を、そういう事でからかうのがとっても楽しくてたまらないみたいだ
大体、このくらいの男の子ならクラスに好きな女の子くらいいるはずだわ
「ははー♪コタロー君てば、シャイねぇ…あ、そうそうウチの妹と同じクラスなんだっけ?」
「んぁ?アンタんトコのユミちゃんと一緒なんだ?」
「つーかさ、今は1学年2クラスは私らとの時と変わんないけど人数は1クラス13人!」
何だそれは…無理に2クラスにしなくても良い人数じゃない…
「まぁ…私達の時はもう少し人数いたけど、それでもギリギリ2つクラス作れたって感じだったわよね…」
その名残があるのか
「ユ…ミ…あぁ…はい…たまにお話するけど…」
「まーさ!サツキだけじゃなくてユミとも仲良くしてやってよ?アイツそんなに人付き合い上手くはないし」
「は…はい…」
ユミちゃんか…
ユウカは妹のユミを何かと気にかける
まぁ、ユウカが心配するほど人付き合いや世渡りが下手って訳じゃない
むしろ、妹のユミちゃんは清楚でおしとやかだし、言葉遣いもしっかりしてて、奔放な姉のユウカより出来てるとは思う
そう思いつつ、私は空に目を向ける
さっきのにわか雨の雲の隙間から、晴れ間が差してきた
「……晴れてきたわね…」
「あ、そうそう、ばーちゃんの店にお菓子買いに来たんだよね私達」
「そーだけど…アンタさっきブタメン食べたでしょ?」
「あれじゃ腹の足しにならないっつーの!あ、そーだ!コタロー君もサツキん家来れば良いじゃん!」
ユウカが思いもよらない提案を出してくる
「いや…私は良いけどさ…コタロー、アンタ来る?」
「あ…い、いや…宿題やってないし…」
「あらら、アンタ振られちゃったわね♪」
「っもう…!ユウカッ!!」
「あはは!まぁでも、宿題はやんないとダメね!」
確かに宿題をほっぽらかしたままではコタローも気が気ではない
「そっか…じゃまた今度ね」
「うん、お姉ちゃん…ありがとう!」
「ん、何が?」
「飛行機…」
「あぁ…良いのよ…また何かあったら私に相談しなさい?」
「うん!」
そう、頷くと、コタローは小走りで家に向かっていった…