第4話
コタローと初めて会ったのは、去年の夏休みの真ん中あたり
お買い物に行った帰り、ギラギラと照りつける太陽にギブアップしてばーちゃん家でアイスキャンディを頬張っていた時だ
「あー…お買い物なら夕方行くべきだったわ…」
ポツリと、独り言をつぶやいていると
ージャリ…ー
そこに、1人の男の子が現れた
見ない顔…
こんな小さな町、住人の顔なんて知れてるわけで…
店の周りをウロウロとする
「……?」
さすがに私もその様子を凝視してしまう
「…ぁ…ぁ…ぁの…」
消え入りそうな、蚊の鳴くような声
男の子は私に話しかけてくる
「……?何かしら?」
「そ…そのアイス…」
私の頬張っているアイスを見る男の子
「……何?君、食べかけなんて欲しいわけ?」
「ぁ…いや、この…お店…?で買ったのかなぁって」
「そりゃそうでしょ?他にどこに店があるのよ」
「……開いてるんだ…このお店…」
「は?」
「い、いや…廃墟かと…」
…確かにお店の建物は古いし、看板も所々錆びてボロボロ
入り口のガラス戸は曇りガラスだから中の様子はわからない
しかし、廃墟ってのは言い過ぎだろう
失礼なヤツね
「ちゃんとやってるわよ…なに?アンタお店に入りたいの?」
「う、うん…」
ーカラン!ー
ーガラガラー
食べ終えたアイスの棒をゴミ箱に捨て、立て付けの悪い引き戸を開ける
「ばーちゃーん!お客さんよー」
「あらあら、サツキちゃんがウチの営業してくれたのかい?」
「アッハハ…ならいいんだけど…ほら、入りなさいよ?」
「う…うん…」
遠慮がちに入る男の子
「わぁ…」
……辺りを見回せば、お菓子やオモチャが並べてある光景に驚きを隠せない
「…?なに、アンタ駄菓子屋に入るの初めてなの?」
「あ…うん…その…引っ越して来る前は家の周りにこういうお店なかったから…」
引っ越して?
「アンタ…まさかこの土地に引っ越してきたの!?」
「うん…」
「ほぇ…私はてっきり都会の子供が両親の里帰りでうろついてると思ったわ」
「あ、いや…ホント引っ越して3日くらいなんだ」
「へーどっから?」
「東京…」
と、トーキョー…!
思いっきり都会ね…駄菓子屋を初めて見たってのもあながち頷けるわ
ーキョロキョロー
私との話もあまり身に入らない観た後で周りのお菓子やオモチャに興味深々なコタロー
…あぁ、やっぱりこの子は男の子なんだ
そう感じた…
これが私とコタローとの出会い…