Ep3 奪われた空
今回結構グロいと思います。
例えば目玉をナイフで……
「おい、目を潰すぞ。質問に答えろ」
ハイグレイ03達が捉えた悪魔に拷問を行っている中小型UAVとは別にもう1つ、闇夜に舞うものの姿があった。
ハイグレイ08、彼は戦闘において腕が露出する装備を身に付けることが多い。袖は腕より長く、内側が存在しない。せいぜいゴムバンドで軽く止められているだけなので結構ブラブラしている。ダボダボなのが好きだとか露出が多いのが好きだとかファッションの問題ではない。
ハイグレイ08は普段は02同様人間の姿をしているが、その正体はハーピー。つまり鳥の獣人みたいなものだ。フライトスーツは08本来の姿にフィットするように作られているのだ。故に、人間の仕様とは異なる。
「こちら08、現在高度凡そ4500[m]。風が強く、流されてしまう。まるで、ジェット気流だ」
ジェット気流は我々の世界においては対流圏偏西風を示し、高度8000~13000[m]程で吹いていおり、場所と季節によってはその速度は100[m/s]に及ぶ。
「それだけじゃない、上空の方が魔力が高い。それにスペクトルにも違和感を感じる」
しかし、未知だらけの異世界において先入観は大きな足枷となる。
「こちら02了解。上昇を続け可能ならRQ-4を展開」
08の主な仕事は偵察だが、兵器の空中展開もまた08が担う重要な仕事だ。08以外の隊員も空を飛ぶことはできるにはできるが、ただひたすらに疲れるだけであまりメリットが無い上、運動性能は08の足元にも及ばない。
ハイグレイズの隊員は兵器を小さな魔力結晶として持ち運び、必要に応じて展開している。航空機を空中で展開する場合、コンピューターの起動やエンジンスタートに時間は要するが、それでもある程度の高度からなら空中で展開しても墜落しないように作られている。
03の握っていたナイフが悪魔の目を切り裂いた。痛みに叫ぶ悪魔を無視して03はその目をほじくり出す。
「こちら03、アクティブ魔眼式の魔法を使用された。効果不明。ミーム汚染 認識障害 及び 記憶改竄 魔法的寄生 、 呪術の発現が懸念される。07、自己診断シーケンス、この場の全隊員もスキャンしろ」
と言いながらももう片方の目もナイフでぐちゃぐちゃにかき混ぜていた……
「こちら03、ターゲット意識あり。拷問を続ける。おい、素直に質問に答えろ。次は指をスライスだ。嫌先に歯を抜こうか。お前は今何をしていたんだ?ありのままを打ち明ける事を推奨する」
「もうやめてくれ!もうやめてくれ!!」
両目を潰され視界を奪われた悪魔は必死に03に命乞いをするが、03は冷静だ。
「なら話せ。お前は何故あそこにいた?恨んでないし恨むつもりもないから早く話してくれ」
「嫌だ!助けてくれ!」
「おい、前歯からペンチで砕くぞ」
「もう見えない!何もできないんだ!助けてくれ!」
「助かりたかったら命乞いじゃなくて情報を渡すんだな」
03は小さな箱から窒化チタンやダイヤモンドで作られた圧着ペンチの様な道具を取り出した。その道具には”潰ス君”と刻まれている。歯や指等を砕いたり潰したりする為にハイグレイズが開発した拷問道具だ。これは機構の開発した装備、”アイテムボックス(偽)”から取り出されたものであり、ハイグレイズの魔法とは関係無い。
「やめてくれ!!痛い!痛い痛い痛い!」
「もっと痛め付けられないと話さないのか?」
03は潰ス君で悪魔の尖った犬歯を捉えると、両手でグリップを思いっきり開いた。そう、潰ス君はグリップを開くと先端が閉じる構造なのだ。
「アア"アアアア"!!!!」
悪魔の犬歯はキレイに抜かれる事などなく、無惨に潰されていた……
「痛くない痛くない。ほら、早く話せ。何も考えることはない」
岡本班の3人はこの拷問から目を逸らしていた……
調査の結果、悪魔の魔眼はアイコンタクトを行っていた03のみに対して使用されたものであり、03もキャンセリングに成功していて害は無かったと結論付けられた。
見るも無惨な姿にしてしまった悪魔から取り出せた情報はとても有益なものだった。この世界では長きに渡り神と魔王と戦争を繰り広げていたが、魔王の軍勢はこの前神の軍勢が現状打開の為に異世界から召喚した勇者の強奪に成功。魔王が勇者の力を吸収して我が物とし、神を殺し、彼らの住んでいた天界も占拠し、今は残党狩りに移行しているらしい。
この情報に対しハイグレイズの魔法的嘘発見システムは反応せず、間違いはともかく嘘は存在しないことが確認された。
事態は深刻だ。