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空を制すは火の翼  作者: カルネアデス日本支部
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Ep17 制空権

現代の戦闘において制空権は重要な要素の内の1つです。

特に攻撃ヘリからしてみれば敵の戦闘機が自分達の頭の上を飛んでいることは味方の支援が無い場合ほぼ死を意味しているようなものです。

更に制空権が敵に確保されている場合敵の攻撃機が本領を発揮します。

攻撃機は対地攻撃に特化させた飛行機であり戦闘機、とは基本的に戦ってはならないと言われます。普通に戦った場合勝ち目はほぼ0だからです。

そんな攻撃機が敵の戦闘機を気にせず対地攻撃に集中したらどうなるでしょうか?

戦車大隊もたちまち壊滅してしまうかもしれません。

制空権ああ恐ろしあ。

 歩兵達が戦闘を開始した頃、天界(ヘブンリーエリア)の地面付近を2機のJAS-39(グリペン)が横切った。風防(キャノピー)が外れていたその2機からは射出座席でクルーが射出されたが、操縦士(パイロット)を失ったJAS-39(グリペン)は墜落しない。


「こちらハイグレイ02及び08、天界(ヘブンリーエリア)に到達」


 やって来たのはハイグレイズの2人だった。爆撃に合わせて離脱した3機の内02と08の機体は後部座席の天使だけを先に射出させ戦場に帰ってきたのだ。

 緊急展開部隊であるハイグレイズの仕事は本来なら増援の主力部隊の展開が完了し引き継ぎが終わった時点で任務完了だが、今回はそうもいかない。本部はレベル3戦力展開、つまりS級職員からなる特殊部隊、”空の工兵隊”の隊員の派遣を渋ったら為それのリカバリーまで行わなければならない。

 これは隊長である02の判断であり、別に帰ったところで何かルールに違反するわけではないが、そもそもハイグレイズの目的は機構の為に粉骨砕身尽くす事にある。そのやり方が回りくどすぎるからそう見えていないだけであり、この様な考えを持つ社畜達は面倒くさいから帰るという選択肢には選択しない。


「08テイクオフ」


 パラシュートを脱ぎ捨てた08は本来の姿であるハーピーの姿となり翼を広げ飛び立った。

 背中から別の翼を生やしているわけではない為翼を広げたら手が使えなくなるのは当たり前の事。ハイグレイズの元居た世界でハーピー達は基本的に足に取り付けられたブレードを使用して近接戦闘を行う。しかし練度の高いものとなると空中で瞬時に翼と人間の手を入れ換えてサブマシンガン等の火器を使用した攻撃だったり魔法等での攻撃も可能とする。



「クソ!ジョーンズ!」


 カルネアデスの異世界庁B級エージェントのジョーンズは危機的状況にあった。得物の両手剣で悪魔の1人を攻撃しようとしたときだった。悪魔から伸びた爪はエージェントジョーンズの装備を貫き腹部を切り開いたのだ。

 すかさずカバーに入った別のエージェントの攻撃によってとどめを刺されることは免れたが出血が酷く手当てが必要だ。

 しかし彼らは既に囲まれており負傷者に構っている暇など無かった。

 更にその側でライフルを射撃していたC級エージェントが全身を炎に焼かれながらのたうち回る。損害は拡大する一方だ。


“ドドドドドドドド!ドーン!ギュィーーン!!!”


 1機のSu-(スホーイ)34戦闘爆撃機が”フレアー”という目眩ましの火の玉を撒き散らしながら急降下射撃を実施した。有人機なら普通行わない無茶な支援だ。しかしその射撃のおかげで形勢は一気に逆転した。カルネアデスの歩兵達に気を取られていた悪魔達は回避を怠り即死する。残った悪魔はそのSu-34に攻撃を行おうとしたが、次の瞬間には首が跳ねられていた。ハイグレイ08だ。


「ボサッとするなカルネアデスエージェント!負傷者は任せて戦闘を継続!」


 普段は温厚でどこか抜けた感じのあるハイグレイ08も戦闘になると性格が変わる。

 ハイグレイ08は右腕だけ人間の手に戻し、左の翼をエージェントジョーンズに被せ右手でサブマシンガンを構えた。





 ある真っ暗な草原の中、ライトで照らされている場所があった。その付近には迷彩ネットで隠された1両の10(ヒトマル)式戦車と2両の2K22(ツングースカ)対空車両、そして1両のウクライナの8輪駆動水陸両用装甲車のBTR-4があり、ライトで照らされた場所には5台のタンクローリーと更に数台のトラクター等の作業車両が並べられていた。


「やって来ました!Tu-(ツポレフ)160M2です!」


 天界(ヘブンリーエリア)への爆撃を終えたTu-160M2の編隊は出撃地点であるベースキャンプには戻らずに、別に用意されたランディングポイントへ着陸を行う。

 1機の降着装置(ランディングギア)を下ろしたTu-160M2は横に開いた翼からフラップとスポイラーというものを下ろし、失速ギリギリまで減速していた。その下ろされた車輪にあるはずのタイヤはソリに換装されており、Tu-160M2は前のソリを地面に着けずにウィーリーでエアロダイナミクスブレーキをかけると同時に|減速用のパラシュートみたいなやつ《ドラッグシュート》を展開し、見事に草原に着陸した。ソリの跡は大きく残る為後続の機体はこれの少し横に着陸する。


 AIにあの手この手させている為今回は全機上手く着陸できたが、本来戦略爆撃機であるTu-160M2にはこんな場所での離着陸は想定されていない。

 着陸に成功したTu-160M2が減速に使用したドラッグシュートは本体から切り離され、それをトラクターに乗った人間の作業員が回収する。

 魔法使いであるハイグレイズなら魔法で滑走路を用意したりしないのかと思うかもしれないが、やはりハイグレイズの隊員達はカウンター型なのでそういうのは得意ではないし、鉄筋コンクリート製のPC部材とかそういった建材も用意できていない。


 ここにいる人間達はカルネアデス日本支部の技術庁の職員だ。先述した僅かな無人兵器を護衛に付け、ベースキャンプへの着陸を行わないTu-160M2に対して補給作業を行う。彼らはハイグレイズが試験運用期間中だった頃にハイグレイズの要請によって結成された”無人兵器システム開発部”の職員だ。

 この部署は60人程の職員で構成されるが、やる気のある人間ならバカでもいいという方針なので半数以上がD級以下の職員であり、他支部から引っこ抜いてきた人材も少なくない。


 停止したTu-160M2はトラクターで牽引され横に並ばせられ、開放されたウエポンベイのロータリーランチャーに爆弾を装着させると共にタンクローリーが燃料補給を行う。



「2番機バンカーバスター装着完了」


 不安定な地面の上だが2番機への8発の自作地中貫通爆弾(バンカーバスター)の取り付けが完了する。


「3番タンクローリー空になりました」


 Tu-160M2の燃料タンクは燃料搭載量が20[kL(キロリットル)]のこのタンクローリー約10台分に相当する。しかし元々地球を4分の1周できるような戦略爆撃機であるTu-160M2にとっては今回の任務ではこの程度の燃料で足りるのだ。積みすぎても重くなるだけだ。


「1番機外付けJATO(ジャトー)取り付け完了」


 強引に着陸させた戦略爆撃機を普通に離陸させるのは正直頭のおかしな者のやることだ。なら外付けの固形ロケットブースターで強引に離陸させる方がまだ現実的な話だ。


「3番機ドラッグシュート交換完了」


 無人機達は使い捨てる事も想定されているが、回収できるならそれに越したことはない。再び着陸させる為に減速用の|パラシュートみたいなやつ《ドラッグシュート》も既に畳まれているものと交換する。

 Tu-160M2達は再び攻撃の為に飛び立たせるのだ。地中貫通爆弾を抱えさせて……





“グィィィィイイイイイイーン!”


 サーモバリックボムによって焼き払われ瓦礫が散乱する道無き道を戦車部隊が前進する。


”バシュン!”


 マッハ4.5を上回る初速で砲口を飛び出した120[mm]の砲弾は先に前線に到着していたカルネアデスの歩兵達と交戦状態にあった悪魔に直撃し、これを粉砕する。戦車に随伴し進行してきた2K22(ツングースカ)対空車両もより歩兵達に近い目標に向け30[mm]口径機関砲で攻撃し、弾幕をもってこれを掃討する。

 部隊はあっという間に前線を押し上げ、少ない損害で多くの目標を潰して行く。


「来るのが遅いぞ!」


 異世界庁A級エージェントの村上は無人の車両部隊に向けそう叫んだ。ハイグレイ04と05は今仮説拠点におりそこから無人兵器達を展開しており、これは作戦通りでありこのことは全員に知らされている。

 しかし車両部隊が速やかに多くの敵目標を無力化できるのも歩兵達のおかげだ。カルネアデスの歩兵達が広範囲に一気に空挺投下を持ってして展開し奇襲を仕掛け、短時間で敵の指揮系統を麻痺させ戦場を混乱させたことにより、情報戦で敵を完全に潰せているのだ。そして敵が得意としていた空戦において今制空権はこちら側にある。航空機達は前線の押し上げと対空目標の無力化を優先している。敵は自分のことで精一杯になり盲目となる。

 組織的な行動ができたのであれば総合戦力では敵が上である事は明らかである為カルネアデスに勝ち目はなかったかもしれない。だが戦場を支配した今格上の相手を酷実に各個撃破できている。情報戦での勝利が敵の反撃を妨害しているのだ。




「未だに発見できないか……」


 まだ車両部隊が到達していない戦場で02と08は戦闘を行っていた。02が展開したパーンツィリ近接防空システムの後方には負傷兵達が身を隠している。


“ダカン!”


 その前方で戦う歩兵達の少し後ろからハイグレイ02はカルネアデス純正の50口径標準対物ライフルで後方支援を行っており、突破された敵にはパーンツィリが30[mm]弾をもってして応戦する。

 ただし無人兵器は人間離れした歩兵手地に比べ絶望的に機動力が無い。最早地上設置型兵器にそんな物存在するはずもない。よってこれらは敵の攻撃を躱すことができない。故になるべく近づけずに後方支援に徹させるのだ。


「もういいだろう、07出撃だ、アクティブスキャンであぶり出せ」


 そう言った02の背後から07と書かれた防具を身につけた大きな魔竜が飛来した。空戦において多勢に無勢で悪魔達に勝てないであろうと判断されていたハイグレイ07だが最早空に脅威は存在しない。そんな07が魔力のアクティブスキャンで捜索する対称こそ、ここに核を打ち込めなかった原因、転移車の魂を取り込んだであろう存在だ。


「もう見つけたか。動いていない……地下から戦場を十分に把握しているとは思えないが、あれだけの爆撃を許したのだ……もしかして戦う気が無いのか?」


 魔竜である07の魔力はハイグレイズの中で最も多く、広範囲の空間を素早く自分の魔力で制圧することにより僅かな時間で魔王を見つけ出した。07と02は一心同体、意志も記憶も五感も第六感も全て同期されている。故に07が見つけた物は02も認識する。


「過剰摂取で狂った可能性も否定できないが……08、ここは任せるぞ」


 02は空から無人機達と共に歩兵を支援していた08をジェスチャーでそう伝える。


「ハイグレイ02より03。07が改修目標を見つけた。情報はそちらに回す。これより私は単独で乗り込む。後は任せた」


 そう言いつつハイグレイ02は腕に装着したウェアラブルコンピューターのキーボードを高速でく。


「まて02、これは1人で行って勝てる相手ではない。お前の生存は絶望的だぞ」


「何の道そこらのカルネアデスのエージェントでは相手にならない。それにヘブンリーエリアの結界から見るに、今の私なら少しは役にたてるかもしれない……」


 そして次の瞬間そこには誰もいなかった……

 書いてから動画見て確かめたんですけど、Tu-160、エアロダイナミクスブレーキもドラッグシュートも普通に使うんですね。


 JATO調べ直してWikipediaの動画見て気付いたのですが、南極とかで使われてるC-130は普通にソリ着けてますね。まあそうですよね。

 しかし戦略爆撃機はどうなんでしょうかね……

B-1Bの話になりますが、最短離陸滑走距離は600[m]なんだそうです。けどこれって燃料も少なくてウエポンベイも空っぽの値ですよね……?

 Tu-160について調べても通常(?)3050[m]のコンクリート製の滑走路を要求するのだとか……

 もう垂直離陸させる勢いでウエポンベイにもランディングギアにもその格納庫にもソリにもRATOつけまくれば地面土でも飛べるでしょ。アスファルトと違って焼いても問題無いんですから。


 燃料搭載量調べてみました。

B787-9 : 127,000[L]

(ボーイング社の最新の中型旅客機)

B777-300: 181,278[L]

(ボーイング社の双発旅客機(787にコスト以外勝ち目無くない?))

B747-300: 204,360[L]

(ボーイング社の4発大型旅客機)

a380-???: 320,000[L]

(エアバスの4発大型旅客機)

Tu-160 : 160,000[kg]≈192000[L]~210000[L]

(本編出でてきた爆撃機のモデル(だけどM2型実際します))


 途中まで”ロータリーランチャー”の事をただの懸架(吊り下げる)装着だと思っていたのですが、回転式のランチャーなんですね……言われてみれば”ロータリー”って……

 けど調べてみた感じB-1BもTu-160もロータリーランチャーであってるっぽいですね。よかったよかった。


 頭のおかしな兵器?

パンジャンパンジャンパンジャンパンジャンパンジャンパンジャンゴリアテ!

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読んでくれて\(・ω・)/感謝なのです

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