Ep15 僕戦闘爆撃機(前)
前にも書きましたが戦闘機達のAIに感情なんてありません。ただAI視点で書いてみたかったから書いてみただけです。
今回もグロあります。
台詞が無いからか説明が多いです……
CODめー!”WW2”って調べたらCODしか出ないじゃないかー!
プンスコ(*ノ`Д´)ノ!プンスコ
“WW2”は”第二次世界大戦”ですからね?
こんばんは皆さん、はじめまして。僕、戦闘爆撃機だよ。始めに自己紹介をするね。
僕らの名前は”プラティパス”。ロシア語で”カモノハシ”の意味なんだ。|ハンバーガーを食べながらコーラ飲んでる人《アメリカ人》達からはよく”フルバック”って呼ばれるよ。けど誰でも僕達の事を知ってる人達ならSu-34って言えば通じるんだ。本名だからね。
僕達Su-34はロシアの新型の戦闘爆撃機で、制空戦闘機と爆撃機の能力を併せ持つんだ。と言っても本来は制空戦闘は任されないで、ただ十分な自衛能力があるだけに過ぎないんだけど、十分な文明の存在しない異世界において僕達の制空能力はそれでも12分で、尚且つオールラウンダーな僕達の事をマスター達は大いに気に入っているらしい。
ロシアでの愛称の通り、並列複座だから機首のレーダーのカバーであるレドームが横に平べったくて、カモノハシのくちばしに似ているんだ。
テールブームも他の家族達とは違って、太くて長いんだ。僕達の尻尾の事を”スティンガー”って呼ぶ人もいるよ。尻尾と言っても動かせたりはしないんだけどね。
そんなわけで、僕達はカッコいいSu-27ファミリーの中でもアイドル的存在なんだ!だから僕も頑張るよ!
そうでない兄弟もいるけれど、少なくとも僕には人を乗せることは最初から想定されていないんだ。マスター達が扱うのは基本無人機だからね。だからコックピットにはコンピューターやセンサー、燃料タンクが入れられているんだ。だから人は入れないけど、カメラの都合で正面の防弾ガラスは外されていないからキュートさは変わらないよ。
僕はまだかわいいよ。
シールドが消失した天界では3機のグリペン兄さんが人間(?)を乗せて戦闘を行っている。相手にしているのはこの世界由来の知的魔法生命、通称”悪魔”。
悪魔達はコウモリの様な翼で飛行してグリペン兄さん達を追いかけ回すが、WW2末期型のプロペラ機程度の高速域運動性能しか有さない悪魔達はグリペン兄さんに追い付けるハズもなく、AIM-9のオフボアサイト攻撃で一方的に撃破されて行く。
オフボアサイト攻撃っていうのは正面にいない敵を攻撃する事だよ。
そんなまだおいかけっこしか行われていない空域に5機の戦略爆撃機達が4機のミリタリーパワー(エンジンをアフターバーナーを使用しない場合の最大出力)で動かし接近していた。Tu-160M2君達だ。
そのお腹には複数の大型のサーモバリックボムが入っていて、もう殺るき満々だ。
サーモバリックボムっていうのは固形燃料を用いた燃料気化爆弾の発展型の爆弾の事だよ。爆発や高熱、一酸化中毒や酸欠等で広い範囲の生物や非装甲目標に致命的なダメージを与えることができる兵器なんだ。因みに皆も大好き僕も大好きソ連の歩兵携行ロケットランチャー、RPG-7用のサーモバリック弾頭もルーマニアが開発してくれたんだ。やったね!
そう言う僕は今、11機の兄弟達と4機のF-15Eのおじさん達と一緒に天使さん達の後ろを飛んでいるんだ。そして僕は主翼下パイロンと胴体下部合わせて5機のSPPU-22ガンポットと4発のR-73短射程空対空ミサイルを装備している。
パイロンっていうのは飛行機の主翼の下に付いてるミサイルやエンジンを吊り下げる為の支柱だよ。
SPPU-22ガンポットは260発の23×115[mm]弾を搭載し、秒間50発の発車速度で射撃できるガスト式機関砲を使用したのガンポットだが、これの1番の特徴は銃身を動かせることにある。銃身を30度下に傾けることにより真正面にいない目標に対しても攻撃できる。
けど僕に搭載されているSPPU-22は僕の性能を最大限生かす為に強度を高めたり装弾数を360発と真ん中のは500発にまで増やしたり、銃身コアキシャルに小型カメラまで付けちゃったりと別物と呼べるまでにいじられちゃったんだけどね……
本来このガンポッドは対地攻撃における機銃掃射の為に作られた物らしいが、今回は訳有りだ。天使だ悪魔だハーピーだドラゴンだといったもの達は制空戦闘において現代の戦闘機には勝てない。トップスピードも違えばそもそも攻撃可能な距離が違う。
しかしだからといってヘッドオンは避けるべきだ。機銃やミサイルといったものを持たない彼らは直接的な近接攻撃か魔法による攻撃を行う。だから接近して戦うしかない僕のガンポットは傾けることができ、射撃時には既に回避が始まっているということだ。高度なAESA(アクティブフェイズドアレイ)レーダーを備え、数万回と訓練を積み重ねたAIだからこそできる高度な攻撃能力を武器に僕は戦うのだ。
ん!何だろう!?僕達の自慢の赤外線捜索追跡装置が僕達に何かを警告をしている!前方に不審な熱源だ!
C-2ちゃんやC-130Jおじいさん達も含め僕ら無人機達は全機ブレイクして緊急回避運動を取った。天界から飛んできた巨大なビームの様な何かが輸送機達のいた場所を凪ぎ払ったのはその直後の事だった。囮の天子さん達が3人ログアウトしちゃったけど、僕ら無人機達は間一髪だった。ライトアップで派手にアピールしているだけあって敵からの攻撃もやはりすごいものを食らわせられる。
先頭のF-15おじさん達はこの未知の脅威に対しAIM-120を発射して牽制した。勿論ロックオン等しておらず、ミサイルは慣性とデータリンクで飛行させる。ターゲットが何なのかさえ僕らはまだ把握していない。
輸送機なのに無理をしたせいで、と言うか攻撃を回避しなければならなかった関係から編隊は予定の進路から200[m]も降下してしまった。しかし殆ど大したものを搭載していない為輸送機達の動きもそこまで動きは悪くない。
降下部隊降下開始400秒前。輸送機さん達が同行するのも長くて後5分。だけど僕達戦闘爆撃機も僕らの部隊を敵に主力だと思い込ませなければいけない。だから僕みたいなガンポットを搭載している機体じゃなくて、まともな空対地ミサイルを搭載した兄弟達がこれを発射し始めた。
実は輸送機達の貨物室にはいくつかの巡航ミサイルが搭載されていて、輸送機さん達は後部カーゴベイを開くとそこからドラッグシュートというパラシュート的な物を開き、滑車に乗った巡航ミサイルが空気抵抗により機内から引きずり出され落っこちる。
落ちた巡航ミサイルは急降下しつつ翼を開きエンジンに点火する。そしてそのまま姿勢を回復させ天界めがけ僕らを追い越し飛んでいった。
先方のF-15さん達は次々とAIM-120を発射していく。ミサイル本体の直径は18[cm]しかなく、これがマッハ4で飛んでくるものだから悪魔達は回避も迎撃もできず全弾命中する。相対速度にすれば1500[m/s]に及ぶ。シールドだなんだで防がれてもポロニウムを吸ってしまえばそれが最後。こちらに届かず落ちて行く。
しかしF-15さんも搭載しているAIM-120は1機14発で、2機だから28発。派手に飛んでいる囮めがけて飛んで来る全ての敵に対処することはできない。6機いるJAS-39兄さん達もミーティアを装備しているけれど、これは温存しなければならない。そこで僕らの役目というわけだ。
12機いる僕らSu-34のうち僕含めて2機は近接戦闘型。4発のR-73ミサイルと150発の30×165[mm]弾、そしてガンポットに搭載された計1940発の23×115[mm]弾を搭載しているんだ。
マニュアルによれば悪魔から半径2000[m]が危険範囲、半径500[m]以内が戦闘中以外接近してはいけない範囲、半径200[m]以内が戦闘を目的としない場合接近してはいけない範囲、そして半径50[m]以内は死の間合いとされているんだ。
魔法による攻撃は様々であり個体差も大きいが、これを守っていればある程度安全に戦えるだろうというものなんだ。このマニュアル作成日は32時間前になっているんた。
200[m]と言うとプロのサッカーコートの対角線より長いんだ。だけど航空機の世界だとこれは結構近い。ミサイルには安全上の都合などから最短射程距離というものがあり、これもこの程度の距離になっている。僕らの全長だって約23[m]だ。マッハ0.58でも凡そ1秒で通過できる。200[m]なんて大した距離ではないんだよ。
2000[m]と言うと、機関砲の有効射程になってくるんだ。
アフターバーナーを噴かして僕は同じ装備の相棒と前進し、天使達や輸送機達を追い越して編隊から離脱する。最初30[km]あった悪魔との距離は15秒後には凡そ半分にまで詰まっており、このタイミングで僕は相棒と左右に別れ高度を取る。
僕らAIはデータリンクが無くともキレイにミラーリングできる。僚機の意思は0.2秒以内に理解できるように訓練されているからだ。
再びブラボースコードロン本体に対し先程と同じレーザーの様な長距離攻撃が行われていたが、僕らは構わずロックしたターゲットを追い詰める。
敵がより近づいてきた僕は更に高度を取り、相棒が旋回して降下しこの悪魔に急接近する。そして300[m]の距離から放たれた23[mm]弾の一部は悪魔の体に直撃し、喋りも動きもしない複数のミンチへ転生させる。
そして今度は僕がそんな相棒をカバーすべく機体をひねり、相棒に接近しようとする悪魔に向かって旋回する。頭を狙われていたことに最後まで気づかなかったその悪魔は僕の23[mm]弾で脊髄を丸々砕かれ死亡した。そのまま僕はアフターバーナーを焚いて旋回を続け再び高度を取り相棒に近寄る。
僕ら戦術AIが感謝をする事はない。何かに好意をもつことは戦術的不合理な判断に繋がるからだ。僕らは例えどんな相手でも同じ仲間なら同じ連携ができなければならない。そもそも僕らは消耗品だからだ。正にマスター達のエージェントだ。
そうこうしているうちに時間が来た。囮部隊の撤退が開始される時間だ。輸送機達は一斉に旋回を始め、進路をずらして行く。50回以上は戦闘には参加しない方がいいと言っておいたと聞くのに、天使達の半分は撤退せずに僕らSu-34を追いかける。だけど僕らには僕らの仕事がある。彼らに構っている場合ではないんだ。
僕ら16機は編隊を組み直し、最大出力で上昇を開始する。爆装が重い機体程加速も遅く上昇力も低いし、そもそもSu-34とF-15Eの混成だけど、それも考慮した行動パターンは予め考案されており、それに従いポジショニングを行う。
囮部隊はもう半分以上が撤退を開始しているが、こちらに飛んでくる悪魔の数は増す一方だ。背中を向けられて怒ってしまったのだろうか?だけど待ち伏せが有ろうが無かろうが僕らは前進する。
僕らガンポット型は5個のガンポットと4発のR-73短射程ミサイル、翼端にはECMポッドではなく赤外線カメラを搭載しているが、2機いるAAミサイリアー型のSu-34は赤外線カメラも搭載せずに22発のR-73短射程空対空ミサイルを搭載している。
高度優勢を得た僕達は一斉攻撃に出る。撤退する囮部隊を追いかけて既に距離を離されてしまったしまった敵は護衛のグリペン兄さん達や地上部隊に任せればいい。データリンクで自身の飛行ルート、攻撃目標、そして使用火器を宣言し、それらの意見をまとめて調整し実行に移る。
次々発射されていくミサイルはやはり確実に目標を仕留めていくが、ミサイルより敵の方が多い。だからミサイルを撃ち尽くしたミサイリアーと共に僕ら4機は急降下し残敵を機銃で叩きのめす。
最前線で戦闘を行っていた有人のグリペン兄さん達3機が離脱を開始した。間も無く爆撃が行われる。
敵が僕らやグリペン兄さん達に気をとられていた内に5機のTu-160M2君の編隊は通常使用できないはずの緊急出力を使用しマッハ2超の速度で接近してきており、天界を通過したのはあっという間の事だった。
爆撃機達マッハ2超を維持したまま僅か20秒程で通過し、次の瞬間には天界には複数の火球が見えた。圧倒的破壊力だ。まるで、核爆発だ……
火の玉が無くなったとき、天界がひどく破壊されているのが見えた。どこまで効いているかはわからないけれど、攻撃自体は上手く行き、Tu-160M2君達も無事戦域を離脱しつつある。
後数十秒で空挺部隊のフリーフォールによる天界への展開が始まる。敵の注意を僕達は引き付けなければならない。降下中の無防備な歩兵達に敵を寄せるわけにはいかない。
「オールユニットステンバイ!」
高度13000[m]を飛行する2機のC-17輸送機の下ろされた後部カーゴベイ、その横の隙間から下を見下ろしている人がいた。ジャンプマスターのハイグレイ04と05だ。天界を目視で確認しているのだ。
「スリー!トゥー!ワン!ゴーゴーゴーダヴァーイ!!」
ハイグレイ04と05の掛け声で各々の機内にはベルが”ジリリリリ”と鳴り響き、個性的な装備を身につけたカルネアデスのエージェント達が降下を始めた。
「グッドラック!エブリワン!グッドラック!グッドラック!!」
サーモバリックボムの動画を調べるととBLU-96の動画が出てきます。これは航空軍事用語辞典++さんによれば、2000ポンドタイプであり、約1トンの重さです。
あの映像で白い煙みたいなのが広がっている間ガス空間に高速で広がっています。で最適混合比の部分が多くなるタイミングで着火します。
しっかり見るとわかりますがまるで地面が持ち上がっているかの様なシーンがあります。爆発もすごいですが、瞬間的に発生する圧力差、つまり爆風ですよね。半端ないですね。これなら室内にいても十分に密閉されていてあの爆風に耐えられない場合人は死んでしまいます。
核爆発でも内蔵が飛び出ていたりした死体があったそうですね。まあそうなるでしょうね……
同様の理由で手榴弾も破片効果タイプの”フラググレネード”は”防衛手榴弾”、爆風をメインとする”HEグレネード”は”攻撃手榴弾”と呼ばれているんだそうな……(詳しくはレプマートさんの記事を参照ください)
多分なんですけど、日本の自衛隊や在日米軍機を撮影しているオタク達に”カモノハシって呼ばれてる飛行機があるんですよね?”って聞いたら半数以上は”Su-34”より”EC-1”を思い浮かべることでしょう。
EC-1は空自の実験機で2018年現在退役が進行中のC-1戦術輸送機の実験機型です。電子戦装備の研究開発の為の
参考文献
http://mmsdf.sakura.ne.jp/public/glossary/pukiwiki.php?%C7%B3%CE%C1%B5%A4%B2%BD%C7%FA%C3%C6
https://repmart.jp/blog/military-terms/army-grenade/