Ep14 頂点に立つ者
ハイグレイズの戦術AIに感情なんてありません。コンピューターのスペック、何をさせるかを考えれば邪魔でしかありません。
感情を持たせるとしても大きなサーバーを要する戦略AIとかそんなものを作る場合でしょうね。
空に浮かぶ島々の事を人々は天界と呼び、そこには神と天使達が暮らしていた。しかし今そこにいるのは魔王と悪魔達で、彼らは未知のシールドを天界全体を被うように展開し引きこもってている。
そんな所に音速の2倍で接近してくる物体があった。グリペン兄さん達さんだ。
グリペン兄さん達はシールドに向けて魔術紋様が描かれたAIM-9を発射し侵入を試みるが、実際に中に入ったのは3機の内の中央の1機のみで、残りの2機は直前で急上昇してシールドを回避してしまった。
隊長機が他の2機のAIに予め用意しておいたプログラムを実行したらしい。
「何をする02!?何故単機で侵入したか!?」
ハイグレイ08は02に怒りをぶつけていた。
「状況が変わった。このシールドのパターンはQ。指示があるまで侵入するな」
パターンQが何を示しているのかはわからないが、想定していた悪い事態が発生してしまったようだ。
「認識異常を検知、体の感覚もおかしい。恐らく魂が汚染されている。詳しい原理は不明だがカウンターを試みる」
ハイグレイ02は元々いた世界で”MC型マルキリー”と呼ばれていた。”マルキリー”は固有名詞らしいが、この”MC”は”Magic Canceller”の頭文字で、対魔法に優れた魔法使いに与えられる称号らしい。
シールドが中の者に対し何もしてこない場合を想定してシールド技術者を戦闘機の後部座席に乗せ飛んできたが、
「こいつはフルオートか、自律してるな。だが端末に能動的であるならば理論上カウンターで無力化可能。カウンターが想定されていなければイチコロも夢じゃないな」
02はそう呟き、後部座席で苦しむ天使を無視してシールド内を超音速で駆け抜け、面倒そうな敵を見つけ出してポロニウム弾頭のAIM-9を発射していた。
赤外線下部警戒装置によって強化されたオフボアサイト攻撃能力はAIM-9を前方だけでなく、側面や下方の広範囲の目標にロックオンさせる事を可能にしている。パイロットが目標を直接視認する必要は無いのだ。
「やっぱりホストと同期しているな。強力だがインタラプトを想定していないのはよろしくない。しかし爆発されるのはまずいからな。汚れるもまた運命よ」
あろうことか突如としてシールドがハイグレイ02に吸収され始めた。
このシールドを展開していたのは今回の作戦におけるHVTである魔王だった。そしてこのシールドと魔王は同期されていたが、02はこの同期を遮断、というより自身にすり替え制御を奪い、そして今それを自身に戻しているのだ。
それだけではない。魔王とすり替えたのはシールドにとってのホストだけではない。魔王にとってのシールドであったはずのものをジャマーの様なものにすり替え付加をかけ、コンピューターで言うDOS攻撃の様な事を行っていた。
こんなことハイグレイズの隊員でも02しかできない。
わかりやすい例え話をしよう。例えば魔王を社長だったとして、シールドを会社としよう。
社長「はっはっはっはー、ほっといても死なない会社とかうち優秀だわー、無職万歳」
とか言っていたある日、朝起きたら社長は足に重りをつけられて海底に沈められていて、自分の会社は自分に成り済ました何者かに奪われてしまったのだ。
社長「ほぼっ!!ほぼぼぼぼぼぼぼぼ!?」
で、会社はすぐに売却されてしまったということだ。
「やはりな。このシールド形成しているリソースが変だ。転生させた人間の魂でも混ぜてるんだろうな。術者が何を考えているのやら」
カルネアデスの世界の人々の魂は非常に品質が高いので、このシールドの形成にそれを使用しているのだとしたら、これを吸収している02には大量に異物が侵入してくることになる。しかし02はこの程度は許容範囲内。こいつ普通ではない。
やがてシールドは02に完全に吸収され消滅した。
「ハイグレイ02よりHQ、予定外の方法ではあるがシールドの無力化に成功した。作戦のフェーズを進行させろ」
「こちらHQ了解した。ブラボースコードロン及びチャーリースコードロンは前進。天界への進行を開始せよ」
「こちらハイグレイ03。地上車両部隊攻撃開始」
囮であるブラボースコードロンは高度2000[m]より進行。
1機のライトアップされたC-2輸送機と、同じく派手にライトアップされた4機のC-130Jが飛行しており、これを守る形で飛行している天使達には200回以上”飛行機の前には接近するな”とくどく言い聞かせてある。エンジンに吸引されてC-2が墜落しましたでは作戦への影響は小さくない。
そしてこれの前方には2機の制空型のF-15が、側面には6機のJAS-39が、後方には爆装した4機のF-15Eと同じく爆装した12機のSu-34が飛行している。
チャーリースコードロンは空挺部隊を護送する部隊で高度13000[m]を飛行している。暗く美しい真夜中の青の世界だ。
100名以上のカルネアデスの歩兵は2機のC-17に搭乗しており、1人につき700[kg]までの装備の着用及び持ち込みを許可している。
これを護衛するのは8機のSu-35、8機のMiG-35、そして6機のJAS-39。更にこちらにも12機のSu-34がつく。
これらは皆一切の明かりをつけずに飛行し自身の存在を闇夜に隠している。
爆装した爆撃機やその他の飛行機は少数の護衛をつけ所定のポイントで飛行している。
5機のTu-160M2戦略爆撃機はアルファスコードロンによりシールドが無力化され無事に空挺投下が行われること為、出力を上げ加速中。爆撃40秒前から戦時緊急出力を使用し天界を爆撃する。
E-2Dは3機で天界を中心に緩やかに旋回しつつ飛行中。GPSの代わりのポインタも勤める。
E-787の1機は戦術AI達の処理を支援するサーバー機として飛ばしているが、もう1機は勿体無いので展開していない。
空中給油機である3機のKC-787は安全域にて旋回待機中。
電磁波攻撃兵器を搭載した2機のM-787は敵の注意を上に向けない様にする為に現在攻撃を待機中。空挺投下が開始されてから攻撃を開始する。
戦闘爆撃機である6機のSu-24は未だに離陸しておらず、爆弾を抱えて地上で待機している。
後部カーゴベイを開いたC-17の中にはパラシュートと酸素マスクを着用したカルネアデスのエージェント達が個性豊かな武器を装備して立ち上がっていた。
「降下開始まで720秒!スタンドアップ!スタンドアップ!!」
ジャンプマスターを勤めるハイグレイ04と05が全員を整列させ最終確認を開始した。
フェンサーちゃんお残り(#・ω・)
“4機のF-15E”を”F-15E4機”ならまだわかるかもしれませんが、”12機のSu-34”を”Su-3412機”ってやったら意味不明ですよね。
“Su-3412機”とかならギリギリ伝わるかもで、”Su-34 12機”なら行けると思いますが、”12機のSu-34”が1番無難だと思いましたのでそう書きました。
ハイグレイ01は02以上に優れたMCマルキリーでしたが、今はもう魔法使えません。だからクビになったんですけどね。退職金はたんまり出だし01も不満はありませんでしたよ。そもそも正確には”使えない”ではなく”使ったら死ぬ”なんですけどね。
M-787のDEW様の発電機を考える為に東芝さんの非常用発電機のパンフレット(?)のPDFを見て思ったのですが、2秒以内にコンピューターを立ち上げるのはいいとして、エンジンの出力はどうしてるんだ?予め回転力はあるのか?それとも最初の20秒くらいはまたJATOで飛んでいるのだろうか?
後者の方が現実的だけどハイグレイズがJATO大好きな集団になってしまう。いや大好きだよね。うん。
2.2[MW]で波長8[mm]の電波を発するDEWを1機のM-787につき2個、と考えていたのですが、電子レンジの波長は125[mm]なんですよね……
けど青色レーザーも赤外線レーザーも普通に熱いし大丈夫ですよね、きっと。
うん、調べたら非殺傷のあれもミリ波のフェーズドアレイだって言うし大丈夫。
そして最後に気づいたのですが、Su-25(グラーチュ)が無い!
Ep4で無いことになってるからとりあえず今回は出さないことにします。
Su-24にはガンポットが付けられている事にでもしましょうかね……
いや、HEAT弾頭のS-8ロケット弾を80発とかよさげ。
それともS-13ロケット弾のサーモバリック型をた20発とかもよさげ。いや貫通HE、いやいや、貫通ポロニウム……それだとフレンドリーファイヤーが深刻すぎて始末書じゃ済まない。だって制御不能だから……ねっ……