Ep12 作戦概要
タイトルを”オペレーション~~”にしようかと考えましたが、彼らはいちいちそんな事する連中ではないなと思い止めました。
筆者は”05”を素で間違えて”オーファイブ”と読んでしまいましたが、”ゼロファイブ”ですからね。
4日後……
「こちらハイグレイ03、第13派遣部隊7名の転送を確認。これよりベースキャンプに護送します」
森の中でハイグレイ03と05は装甲車に乗って転送されてきた機構の増援を回収していた。
「うわ、本当に異世界に装甲車があるぞ」
この7人はハイグレイズと作戦行動を共にするのは初めての事らしく、その特殊性に驚いていた。本来レベル2戦力展開の時点で通常兵器の展開は行われるのだが、これへの参加も初めてということだ。
「ハイグレイ05です。皆さん忘れ物はありませんね?早く乗車してください、ベースキャンプへ向かいます」
7人は来るなり05に促され装甲車へ乗車した。 ベースキャンプはここから西南西に9km程のところにあるハイグレイズが設営した前線基地から町を跨いで北に55[km]程離れている。
「ドライバーの03だ。ベースキャンプまでは予定通り行けば90分程で到着する。仮眠するなら05から睡眠薬を受け取れ」
「いえ、結構です」
効果の短い睡眠薬はコックリ寝れてスッキリ起きれるんだとか……
「今回の敵は、魔王や悪魔だと聞きましたが、強いんですか?」
7人の中で1番若いエージェントが03に質問する。
「ああ、悪魔達は1体1体がカルネアデスのエージェントで言うC級からA級相当の戦闘能力を有していると推測されている。今俺達はベースキャンプから南に40[km]程のところにある町を防衛しているんだが、2回襲撃を退けてから悪魔達の多くはここを避けて他の地域を先に攻撃するようになった。車やヘリじゃ追い付けないからロシアのP-800っていうマッハ2.5の対艦ミサイルで攻撃している。本来は船を沈める為のミサイルだ」
「それが推定500……」
「勝算はあるが被害は少なくないだろう。こっちはたったの110人だからな。この世界の天使達をこっち側に付けてあるがこれは囮に使う。戦力はよくわからないが30人は集める事ができた」
「天使ってやっぱり優しいんですか?」
「さあな。天使も悪魔も生き物だぞ?結局はそんなもんなのさ。異世界じゃ常識だって変わる。神話の先入観なんざさっさと捨てとけ」
“キーーーーン……”
80分後……ベースキャンプには成層圏迷彩というハイグレイズオリジナルの迷彩が施されたRQ-4が着陸していた。エンジン音は比較的静かなものだ。
「スゴい!何だあの飛行機!」
装甲車のハッチから頭を出していた先程のエージェントが指を指して興奮していた。旅客機以外の飛行機は殆ど目にしたことがないのだろう。
「台風の季節になるとグアムから三沢基地にやって来る。東京の横田基地に暫定配備されたこともある。通常のタイプだけどな。まるっこくてこっちよりずっとかわいい」
「あれは無人機なんですか?」
「ハイグレイズは殆ど無人だよ。あれは元々無人機だけどな。それと、うちにはああいう偵察機はまだ1機しかない。レーダー監視網は維持しちゃいるが今は1番危ない。2時間後に離陸させてまた14時間後には着陸させる」
偵察機は生命線だ。
「大変なんですね」
「いやいや、あれのお陰で大助かりさ。文句言うより感謝しとけ」
とある真っ暗な地下室の中、ハイグレイ02は1人ノートパソコンを操作していた。
しかしその画面には通常のエラーでもまずあり得ない、まるで意図されたかのような異常があった。これはブラウン管テレビでおこる現象と酷似しているが、有機ELのディスプレイで同じことが起きるはずもない。
02はこの現象に構わずノートパソコンの操作を続けるが、しばらくするとノートパソコンの下に置いているものにスイッチを入れた。
冷却用ファンではない。その逆のヒーターだ。
気づけば02の吐く息も白くなっており、空気中の水分も凍結して霧になっていた……
「氷点下80℃以下ですか。殺す気なんですかね?」
そう呟きながら同じくヒーターで温められたプロジェクターを起動させパソコンの画面を写し出すが、この部屋には02以外に誰もいない。
「こんな部屋さっさと出ていきたいですが、どうせ扉も開かないのでしょうね。ならそもそも来るなと言う話になってしまいますので、簡単にですが、しっかりやっていきましょう」
そう言って02はゴーグルにヘルメット、フェイスマスクを外す。
「それではこれより明後日深夜2時より開始される天界急襲作戦の概要を説明します」
ハイグレイ02は普段滅多に敬語を使わない。だが今は違う。ハイグレイ02として話しているわけではないからだ。
「まず本作戦の目的は、カルネアデスの通常の活動と同じくリソースの奪取及び再発防止の為の工作です。但し、今回はそのリソースが敵によって回収、変換されている為作戦の遂行は困難であると推測されます。ハイグレイズの隊長としても私個人としても何故レベル3戦力展開が渋られたのか納得がいかないくらいです。よってハイグレイズは利用可能なあらゆるリソースを使用することを決定しました。損害は後で上に嫌ってほど書類を押し付けまくってやります。全く解せません。何の為の戦力なんだか……やれやれです」
02は両手を方の横に上げて溜め息をついた。
「本作戦は手順こそ設けましたがとてもシンプルです。プランBとか言った代行策は用意しておらず、正常に実行されなかった行動が発生しても、一部の手順をカットして強行するか全軍撤退のどちらかです。そしてその決定は増援部隊の司令官が決定し、ハイグレイズはその指揮系統の元には入らず独立部隊として支援を行います。グレイフォージャーは既に帰投し次の出動要請に備えています。我々もこれは残業です」
02がエンターキーを押すとスクリーンには”JAS-39FverHG”という文字と共に飛行機の3Dモデルが表示される。
「今回の作戦はまともに正面から戦っても勝算はありません。そこで我々は敵にとって未知の、つまり新兵器を用いて奇襲を仕掛けます。今表示されているこちらはサーブ、ヤース39グリペンF型です。本機は第4+世代ジェット戦闘機にあたる迎撃戦闘機です。F型である本機はタンデム複座型であり2名分の射出座席が使用可能です。作戦の第1段階は効果不明のシールドの無力化です。まず2時00分、ハイグレイ02、08、11の操縦するF型グリペン3機が後部座席に現地民のシールド技術者3名を乗せ作戦空域に超音速で侵入、不意をついて敵防空網を強行突破、シールド内部への侵入を目指します。侵入後は減速しシールド維持において重要な意味を成していると推測されるアルファポイントに向かい、生存しているクルーは全員射出座席を使用しアルファポイントへの着陸を試みます。その後グリペンは戦術AIによる自律飛行によって可能な限りアルファポイントにおける驚異の無力化に勤め、着陸したクルーはあらゆる手段を用いて目標達成に勤めます」
とてもシンプルでスカスカな計画だ。
「シールドが無力化できなかったり、航空戦力を含む上陸部隊の損害が許容範囲を越えるようであれば指揮官は全軍に撤退命令を下します。逆に作戦が順調に進行した場合、主力部隊の投入に移ります。まず囮として西南西方向より、かき集めたありったけの天使と呼称される現地民と制空戦闘機部隊の護衛を着けた輸送機と戦闘爆撃機を進行させ陽動を行います。この間北部上空13000[m]より輸送機を用いてカルネアデスの歩兵部隊を進行させます。歩兵降下100秒前には戦闘爆撃機を除いた囮部隊は反転離脱を開始、降下30秒前に合わせTu-160M2戦略爆撃機の編隊を戦時緊急出力にて接近させ無誘導爆弾による制圧爆撃を実施、歩兵の降下は後部ベイよりフリーフォールにて行い各部隊は指定されたポイントへ滑空で向かいます」
空挺投下において兵士達は一般的にはガイドロープを用いて機体後部の左右のドアから降下するが、今回の場合はフォーメーションスカイダイビング同様後部カーゴベイを開けてそこから飛び降りる。
「後はただカルネアデスのエージェント達を信じて白兵戦にかけるまでです。作戦なんてありゃしません。少なくともハイグレイズには。ロケット砲車両や各種ミサイルによる地上からのヘブンリーエリアそのものへの攻撃があるくらいですね。臨機応変に支援する。ただそれだけです。では他の新兵器についてもご説明いたしましょう」
今までの悪魔に対し対空ミサイルを使用している映像が無音で流される。
「今まではあえて通常のミサイルのみを使用してきましたが、その効果は満足のいくものではなく、直後に別の攻撃を行う必要がありました。しかしそれではミサイルの意味がありません。今回の急襲作戦においてハイグレイズが独自の改造を施したミサイルを使用します。」
次にプロジェクターに写し出されたのは5本のミサイルだった。
「上から短射程空対空IRミサイルのAIM-9サイドワインダー、R-73アーチャー、中距離空対空アクティブレーダーホーミングミサイルであるAIM-120アムラーム、R-77アダー、ミーティアです。尚ラムジェット推進型はミーティアのみとしています。これらのミサイルを新兵器と呼んでいる理由は独自の改良を施し元型のミサイルとは別物と呼べる性能を有しているかるです。エンジンや目標をロックオンするシーカー自体は現在出回っている最新型のこれと大差ありませんが、1番の特長はボディーと弾頭にあります。」
AIM-120の3Dモデルが拡大表示される。
「ミサイル表面にはカルネアデス技術庁魔法技術研究部の技術支援を受け開発した新型の魔術紋様をペイント、可能な箇所には同じく新開発したマジックエングレーブを使用しております。これにより敵の魔法的な対抗手段に対抗するだけでなく、貫通能力を格段に上昇させました。そして弾頭です。通常対空ミサイルの弾頭は破片効果弾頭が一般的であり、コンテニュアスロッド弾頭や運動エネルギー弾頭もありますが、今回使用するミサイルの目標は生物である為、新型弾頭はこれを考慮し、ロシアから大量に購入しているポロニウムを用いたポロニウム散布弾頭を作成。只でさえ圧倒的な致死性を誇りロシアが暗殺に使用してきたポロニウムですが、今回使用する量は暗殺やタバコの比ではなく、即効性の猛毒として機能するものと考えられています。またこれらが効かない目標に向け更に高コストな魔法的空間混合弾頭を開発。質量に合わない謎の、ヴっうん……ゴホン。魔法的に高い防御力を有する目標をその場で空間に混ぜ合わせ、生物としての原型を奪うことで死に至らしめます」
“チューン……”
突如ノートパソコンとプロジェクターの電源が落ちて遂に部屋は真っ暗になった。02が電源を落としたわけではない。しかし02は冷静だ。
「それでも私は進むことを決めた。未来を求め尚今を進むことを決めた。押し付けられた運命だとしても、私は戦う」
02はフラッシュライトを点灯させ目の前を照らす。そこに映っていたのは犯人の様な真っ黒な姿をしている様に感じる謎の存在だった。
「私はもう、恐れない」
全く動揺しない02の頭に向け黒い謎の存在は何かを高速で伸ばしたが、02はこれを右手で握って止めるといつの間にか左手に持っていた黒いリボルバーを謎の存在に向け発砲した。
“パン!”
02の放った弾丸を食らったその謎の存在は捻れ空間に吸い込まれるかのように消滅してしまった……
「やり直せるかどうかはわからない。だけど恥じることはない。01、私は紡ぎます」
部屋の気温は一気に摂氏12[℃]にまで上昇し、ノートパソコンとプロジェクターの電源も回復し再起動される。その光で照らされた02の握っていたリボルバーには”High Gray 01”と刻まれていた……
次回いよいよ戦闘機が離陸しますね。頑張らなくては。
最後の02の謎シーンのフラグは恐らく回収しません。裏設定の領域で、回収する必要もないので。
そしてハイグレイ01は謎の存在とは無関係です。謎の存在が01なのとか考えた方もおられるかもしれませんが、そこまで考えてないですよ。ハイグレイ01は解雇されましたがまだ生きてます。
(サイコハザード2みたいだけど真似つもりはないです。)
うーん、横田基地暫定配備は正史に基づくとするとまずかったですかね……
いや、本編9話で開業じゃなくて25周年なのか”ゆめみやぐら”。じゃあ全然オッケーじゃん。だってまだスカイツリーは投稿日現在開業7年目だから……カルネアデスの本編って西暦2037年なの……?
ポロニウム210は今回の為に購入したわけではなくハイグレイズは普段からロシアから購入しています。
公安警察の頭痛の原因になってなければいいね。
日本国内で寿司からポロニウム210が検出されたら機構も頭痛薬飲まないと。
ポロニウム210の見た目はぶっちゃけ白い粉。
半減期は4ヶ月半。
皮膚で触れるくらいでは無毒だが体内に入ったら死のタイマーがスタート。
ロシアが祖国ったやつにプレゼントしてあげるらしい。
暗殺された有名な方は死ぬまで約2週間かかったらしいけど、当日中に体調不良は訴えてた。
因みにお寿司食べてたらドロッとした緑茶を飲まされたとか飲まされていないとか……