Ep10 02の説教
前回より痛い描写があります。
少々グロいです。
その日の夜、屋敷の地下室にはA班とB班、そして11人の天使達の姿があった。
「いいか、真っ正面から戦ってもほぼ確実に勝てない。だから目標の達成には作戦が必要だ。組織的な奇襲を仕掛け出来る限り速やかに優位に立たなければならない。しかし、我々の調査によれば裏切り者の存在がお前達天使の中に疑われている。何故なら天界が陥落した時の状況が出来過ぎているからだ」
その部屋の全員が黙って02の話を聞いていた。
「神が勇者を召喚したのと時を同じくして魔王の軍勢は天界を急襲してきた。必ず何か理由があるはずだ。そしてその可能性の1つとして裏切り者の存在を疑うことは当然の事だ。故に、疑念は晴らさねばなるまい」
そう言って02が取り出したのは市販のホームカメラっぽいものだった。しかしこれには嘘発見用のプログラムが入れられていて、マイクも外付けの単一指向性マイクにマイクスポンジを付けられた物がついていた。
と言ってもこの中途半端なよく分からない嘘発見機はダブルチェックの為の物に過ぎない。そもそもハイグレイズの隊員の半数以上には高度な魔法的な嘘発見能力があるからだ。
「1人づつ順番に尋問する。お前ら全員そこに並べ、単刀直入に短く尋問を行う」
緊張しているのは皆同じで、02以外の隊員達は皆武器を手にしている。
「まずはお前からだ」
1番左に立っていた天使にカメラを近付ける。
「おいお前、お前は自分が裏切り者であることを私に隠そうとしているな?」
「えっ!?」
嘘発見と言ってもそのままで、それが嘘であるかそうでないのかしか見抜けない為このようなストレートな質問の方が手っ取り早いのだ。
「何驚いてるんだ答えろ!」
02は質問の内容に戸惑う天使に圧力をかける。
「違います!」
「ならば自分が情報を洩らしてしまったかもという心当たりはあるか?」
「ありません!」
「我々に不利益を与える行動を企んでいるか?」
「企んでおりません!」
「お前が今1番私に話したくない秘密を明かしてみろ」
「はっ!?」
「お前が今1番私に話したくない秘密を包み隠さず言ってみろ!」
「はっ、えっ!?はっ!?」
言いたくない事を言えと突然言われ素直に言えるはずもないが……
「言え!!」
鬼畜な尋問を02は圧力で進めようとする。
「はいっ!私はっ……!」
「言え!」
「はっ!はい!私は、クラボーさんの事が信用なりません!」
溢れ出すやっちまった感。天使は02に何をされるのかと怯え冷や汗をぐっしょりかいていた。
「それが今1番言いたくなかった事か?」
「は、はぃ……」
「よし、次」
当然ながら02は手出しはしない。02に何もされなかった事に天使は驚き固まっていた。
「お前ら勘違いしているようだから言っておくがお前達が私の事をどう思っているかなんて正直この際どうだっていいことだ。例えお前達が私の事を心の底から憎み殺したいと思っていようが今回の作戦の実行に問題がなければそれでいいんだよ」
「えっ?」
「最初から言っているだろう?情報の漏洩が疑われているからこの尋問を行っているんだ。そもそも我々とお前達が関わるのは恐らくこれが最初で最後だ。確かに私がお前達の上官だとでも言うのなら部下に不満が溜まっていることはチームとして致命的な問題になるだろう。しかし私達とお前達の関係はそうではない。ただ一部の利害が一致しているから一時的な協力関係にあるに過ぎない。憎むなら憎め」
という形で10人の天使の尋問が終わった。02に全く関係のないプライベートな秘密を暴露させられていた天使もいたがそれは致し方ない。
そして02は11人目の天使の尋問に移る。1番目か2番目くらいに若そうな男の天使だ。しかし、その天使は02と同じ目付きをしている。
「お前は自分が裏切り者であることを私に隠そうとしているか?」
「……」
02の質問に天使は沈黙を貫く。
「黙秘は容認できない。お前が口を開こうとしないのなら死ぬまで拷問するぞ?死なせてはいけない情報源というわけではなさそうだからな」
「身の程を知れ」
そう呟くと腰の剣を抜きそのまま02の頭を切断した。これにグレイフォージャーの隊員達は報復しようとしたが、04はこれを止める。気づいた時には02の死体や血は消えており、02はその天使の背後に立っていた。
「私には話を長引かせる理由は無いんだ」
「っ!?」
ハイグレイズの隊員達は皆カウンター型の魔法使い。いつも戦闘は兵器に頼っているが、だからと言って弱いというわけではない。
「プライドなんてくだらない。死人に口無しだ。名誉ある死でも何でも死体は死体だ。死にたいならさっさと死ね、そうでないのなら我の命令に従え!」
「俺はお前の言いなりにはならない!」
2人は大声を出して睨み合う。
「では理由を聞こうではないか?何故だ?」
「俺はお前を認めた訳ではない!」
「なら何を認めているんだ!?言ってみろ!」
「お前にはわからない!」
「そんな事はどうだっていい!お前が求めるは強さか!?鎮圧されたいか!?」
02はビデオカメラを床に投げ捨ててナイフを構え、天使にも尚交戦の意思があり02と間合いを取る。04は他の全員を部屋の隅に押す。02を単独で戦わせるつもりらしい。
「かかってこい生意気武力主義野郎!」
普段の02ならまだ武力主義だかどうかわからない相手にこの様な挑発は行わない。決めつけは良くないからだ。何れにせよ天使は02の挑発に乗ってしまい、剣を構えた。
かかってこいと言っておきながら02は先制してナイフを投げる。勿論ナイフは剣に弾かれるが、02は天使に接近しつつナイフを弾いた剣の剣先に手を当てると、その剣を床に叩き付けた。そしてそのまま天使の親指を掴み、間接の曲がらない方向に無理やり手を曲げさせ姿勢を崩させる。
しかしハイグレイ08の場合も同じなのだが、天使の翼というのは魔法で推力を生む事が出来る。それを利用し天使は親指を犠牲に即座に姿勢を立て直すが、反対側の手を振ってしまった時点でもう02に負けていた。
次の瞬間02の拳は天使の胸の溝に触れており、体を瞬間的に沈められた事により02の体重が拳に伝わり天使は吐血した。
天使に明らかなダメージを与え優位に立った02だが攻撃を止めず、急所こそ外しているものの指や腕をあらぬ方向に曲げたり、拾ったナイフを翼に刺したりと痛め付けた。
「不毛。弱い。話にならない」
そう言いながら02は顔面を踏みつけた。
「そもそもこういう狭い場所に来るのにその装備の時点で油断してるよなお前。何が言いなりにはならないだクソ。いいか?これから我々が行おうとしてるのはもう後先が無い1回限りの最後の抵抗だ。この際過程なんてどうだっていい、死んだらそれでおしまいだ、あらゆる方法を駆使して敗北を回避する。プライドなんてゴミみたいなもの引きずってるならさっさと死んじまえ。お前役に立たないよきっと」
そして首にナイフを突きつける。
「死ぬ?素直な良い子になる?イェスメン?」
内心恥まみれの02であった。
そういえば02がぶちギレた事って一生でまだ1度もないんですよね……
怒ってもその感情を強く主張する事もないし、育ての親達のミームを考えればそもそもそんなに怒らない。
正拳突きには第2中手骨と第3中手骨を使用しましょう
。
間違った部位で突くと自分が骨折します。
体を瞬間的に少しだけ沈めるのは恐らく体重と重力加速度を利用する為のものなのでしょうね。沈身と言います。
ボクサーグローブは自分の手を守るものなんだそうです。
拳立て伏せは拳を鍛える意味もあるそうです。
02のパンチングはヒットする前に回転の多くを終わらせていますが、普通手首を捻るのはヒットする時です。
運動の基本ですが、肩使いましょう。
突きというのは腕だけでなく肩甲骨や腰も使うものなのです。あと体重。
02のはどこの武術かですか?ハイグレイズの隊員達が使用する格闘術は”FBCQC”という学術的根拠に基づき日々改良が続けられている軍隊式の格闘術です。