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LITTLE WING  作者: ウザン工廠
沖学始まって以来の落ちこぼれ
5/5

第4話「考えるな、感じろ」

爺さんは、あまり関係ありません

 常夏の島・沖縄に、欧州から帰ってきた船団が寄港した。一隻の輸送船を、海軍第二艦隊第三護衛戦隊が囲むという構成から見るに、輸送船に乗船している人物は余程の大物だということがわかる。

「将軍、間も無く連絡船に乗り換えます。準備はよろしいですか?」

「将軍」と言われた老人は、とても柔らかい、穏やかな顔で頷いた。

「ではお手を。この船はまだ揺れております」

 部下とみられる女性が手を差し伸べると、老人はそれを手で制し、手元の軍刀を杖代わりに、ゆっくりと腰を上げた。

「ありがとう黒瀬君、気遣い無用。まだそこまで弱ってませんよ」

「失礼しました、将軍」

 立ち上がった老人は窓の外を眺めた。

「おぉ、沖縄!いつまで経っても美しい島よ…」

 窓から見える、青く透き通った海。それは老将の心を癒した。かつて地獄を見た、老将の……
















 大八島教官の特訓が始まってから早二週間が経とうとしていた。沖縄は本格的な夏に突入する頃だ。

 オレは大八島教官の特訓のお陰で、マトモに飛べるようになった。

 が………

「基礎は出来るようになったな」

 そう、『飛べるようになった』と言っても、まだ『人並みに』だ。このままじゃ目前に迫った選抜試験に合格することなど夢のまた夢だ。

 大八島教官は持ち込んだ愛機の、欧州にいる恩師から贈られたというEU-Jäger.V4から降りると、飛行中に書いた評価表を見ながらこっちにやって来た。

「飛行中HMDを見過ぎている。そのせいで一挙動一挙動が遅くなっている」

「はい……」

「無理に旋回しようとしてバランスを崩すのが目立ったな。人型飛行戦闘服の操縦において、バランスは大切だ。…まぁ、今のお前には必要十分な体幹はついているハズなのだが……」

 そう言うと大八島教官は評価表が挟んであるファイルをパタンと閉め、去ろうとした。

「今日はこれまで。後は自由にしろ」

「あの…!一つ、質問いいですか?」

 そう言うと、大八島教官は身体をこちらに向けなおし、「なんだ」と問う。

「あの……、もっとバランスを安定させるにはどうすればいいんですか?」

 オレの質問を聞くと、教官はまた校舎の方へ身体を向けなおした。そして一言。

「考えるな、感じろ」

 教官はそのまま去って行った。その時のオレにはその言葉の意味が理解出来なかった。何時もの教官なら、もっと論理的な返答をするのだが、今回はどこか感覚的な返答だった。




 放課後の人型飛行戦闘服を用いた自主練には申請書の提出が必要となっている。オレの申請書は大八島教官が事前に事務課に出しておいてくれているので、放課後はすぐ自主練に励むことができる。

 放課後、足早にハンガーへ向かうと、いつもなら誰もいないハズなのだが、人型飛行戦闘服の前に誰かいた。麦わら帽に、首に巻いた茶色がかったタオル。一見西洋人と見間違えるほど彫りの深い顔つきに、顔の右半分を覆い隠すほど長い髪の毛。フジクラさんだった。

「あの……」

「ん?あぁ、すまない西郷君。邪魔だったか。すぐに退くよ」

 そう言うと、フジクラさんは掃除用具を持って立ち去ろうとした。

 あ、そうだ。大八島教官の言葉の意味、フジクラさんなら解るかもしれない。そう思ったオレは、フジクラさんを呼び止めた。

「あの、フジクラさん。あそこで一体何してたんですか?」

 フジクラさんは足を止め、こちらに振り向いた。

「懐かしくてね、かつての戦友が」

「あの……、もし良かったら、その話、ちょっとだけ聞かせてもらえませんか?」

 フジクラさんは白い歯を見せ、「あぁ、いいとも」と言うと、こっちに戻って来た。

「お前さんらが練習機として使ってるコレ、『60式人型飛行高等練習服』、元は『43式人型飛行戦闘服』ってんだ、知ってんだろ?」

「えぇ、まぁ」

「こいつぁ、最高の機体だった、第1世代型のクセに今の現役のモンに勝るとも劣らないぐらい操作性が優れててな。まるで自分の手足のように動いてくれた」

 フジクラさんは近くにあった用具箱を椅子代わりにして、そこに腰掛けた。

「草創期のパイロットはみんな元々戦闘機パイロットだったんだ。もちろん、お前さんの父ちゃんも、おじさんもな。

 乗り換えた当初は、そりゃ驚ぇたもんよ。戦闘機じゃ絶対不可能だったマニューバも出来たからな。みんな喜んで色んな機動を試したもんさ」

 フジクラさんは、昔を懐かしむような顔をして、ズボンのポケットからスキットルを取り出し、洋酒らしきものを飲んだ。勤務中……だよな?

「一応言っておくが、こいつぁ、ブランデーなんかじゃないぞ?こいつぁ、ブランデー風味の水だ。いいな?間違っても大八島にゃ言うんじゃねぇぞ?」

 何故大八島教官に言わないように念を押すんだ?

 フジクラさんはグイッともう一口呑むと、話を再開した。

「お前さんの父ちゃんなんざ、スゲェもんだった。アイツは理論よりも直感で飛ぶタイプだったが、誰よりも華麗に、繊細に飛んだんだ」

 瞬間、オレの頭に電撃が走った。

「理論よりも、直感」……?なるほど!そういうことか!教官は、こういうことを言っていたのか!

 フジクラさんは続けてこう言った。

「まさに、『人機一体』ってのはあのことだったな。アイツにとっちゃあ、43式はただの機体じゃなくて、本当に身体そのものだったのかもな」

 さらに電撃走る。

「考えるな、感じろ」って、すなわち「機体をただの機械と思うな、それは身体なのだから、自分の手足のように動かせばいい」ってことなのか!

「………よくわからんが、何かしらの悩みが解決したようだな」

 オレの心の変化を感じ取ったのか、フジクラさんはニヤリとしながらオレの顔を覗いていた。

「はい!フジクラさんのおかげです!早速試してみます!」

「そうか、『命短し挑めよ青年』!話はまたいくらでも聞かせてやるから、今はそっちに挑んでみな!」

「ありがとうございます!」


 フジクラさんの元から駆け出し、機体に登って飛行準備をした。いつでも出れる状態にした後、オレは深呼吸した。呼吸する度に、機体の震動などが伝わってくる。そのうち、あたかも自分が機体と一体になっているような感覚になった。

 まさに、翼を得た感覚だった。

 滑走路まで出てくると、全身に風が感じられ、蒼い空はいつもよりも広く、近く感じた。

「行くぞ」




 フジクラはハンガーから出ると、空を見上げた。そこには、まるで鳥籠から解放されて、自由の身となった鳥の如く飛び回る、一人の青年の姿があった。

「へへっ、西郷よ、直にお前さんが楽しみにしてた日が、来るかもしれねェなァ」

 フジクラはスキットルの中身をグイッと飲み干し、歌を口ずさんで仕事に戻った。



 to be continued……

なんか途中、訳わからんことになっとったな……

まぁ、文才無しの連載ものなんざ、こんなモンですよ、えぇ。

行間空けた方がよろしいんでしょうけどね、そこまでの技術がねぇんですぁ。

ファン…………、おらんでしょうな。いたら嬉しいけんども。

もし、ファンだという方がおられたら、それは大変ありがとうございます!感謝感謝です!(もし、絵描きさんなら、キャラデザ案を差し上げますので、描いて……欲しいです…)

まぁ、次あたりからはここにキャラの軽い紹介でもしますぁ。

次回、LITTLE WING、第5話「シャィンッ‼︎スパァァァァァぁぁぁぁぁク……(仮)」、乞うご期待!

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