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紅葉色のカケラ -Rino no omoi-  作者: 青賀崎 葉珀
第壱章 始まりのカケラ
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第1話 運命のカケラ

『こーちゃん!』

どこからか、俺の名前を呼ぶ声が聞こえる。

本当は、もう聞くことのできないはずの声が。

そうだよな、いつだってお前はそう呼んでいた。

子供のときから何も変わってないんだな。

俺の名前を呼ぶその声、まだ幼い子供みたいな無邪気な笑顔、変な性格、俺に対する優しさ。



――不思議だ、何で忘れていた事を突然思い出すのだろう―――



俺は小さいときから誰とも関わりたくない、と幼稚園生の時から遊びに誘われても断った。

友達も作る必要が無かったから今まで誰一人もいなかった。

そして全員が先生に甘える中、俺は先生には甘えたりする事は無かった。それは親にもだ。

俺の親は厳しい。小さい頃から英会話教室、塾、とにかく勉学に励むように俺を育てていた。

それでも、俺は一度も投げ出したりはせず勉学に励み続けた。

親とは手を繋いで遊園地に行った、お父さんと公園でキャッチボール、お母さんとお買い物、そういう事は一度もしたことがない。

要するに俺は親から『仲良くする必要が無い』と思われているのだろう。


【誰とも関わる事なんてないと思っていた

そんな俺を変えてくれた一人の少女がいた】


俺が小学一年のときに起こった出来事だった。

誰とも関わることなく、唯一クラスの中ではずっと1人だった。

他のクラスメートは、楽しそうに大人数で話している。

ある日の2時間目の休み時間、女子のグループが俺を指を差して笑ってる。


「こうようくんってーいつもひとりだねー」

「かわいそうー」

「はなしかけてきてあげなよー」

「やだーこわいーだってわたしたちとはぜんぜんちがうもんー」

「あたまいいもんねー」

「やめとこうよー」


その後に、バカにしたような笑いを明らかに俺のほうに向かってしていた。

俺はその女子のグループの連中がのっぺらぼうの同じような顔に見えた。

笑っている口は歪んだ三日月のような形をしていた。

悪口なんて別に覚悟していた事だ、どうせこの連中は大人になっても人の悪口を言い続けるような奴らだ。

やっぱり人と関わる必要なんてないな。

そう思って算数のドリルを始めたとき、俺に衝撃の出来事が起こった。


「みかちゃん、ゆみちゃん、かなちゃん、そんなこといったらだめ!」

そういった少女は俺の女子のグループの前に立ってそう言った。

「りのちゃん!」

女子のグループの三人が驚いた声でその少女の名前を言う。

「わるぐちはだめ!こうようくんがかわいそうだよ!」

「ご、ごめんね…」

「あやまるならわたしじゃなくてこうようくん!」

そう言った少女の台詞を聞いた後、女子グループの三人は俺の方を向いて謝って廊下の方に去っていった。

少女が俺の方へ近寄る。

「えっと…こうようくん…きにするひつようないとおもうよっ」

初めて話す相手だからか、それとも俺が余り喋らないから怖い奴だと思ってるのか、少し緊張しているように見える。

少女の名前は『春風 凛乃』。『はるかぜ りの』と最初は思っていたが、最初の自己紹介で『あつかぜ りの』と言っていた。因みに『春』は『あつ』とも読めるため、珍しいが間違ってはいない。

とりあえず俺は何とかここを凌がないといけないと思った。

…それでも一応そう言ってくれた奴は初めてだったから、ちょっと嬉しい…かったのかもしれない。

「…ありがとう ごめん」

出た言葉はそれだった。これでは謝りたいのか感謝しているのかさっぱり分からない。

「ありがとう」なんて言った事、無かったような気がする。

俺はいつの間にか下を向いていた顔を上げたら、そこには輝いた目をした顔があった。

「あははー!ありがとうっていってるのにごめんっていってるの。こうようくんっておもしろいこなんだね!」


…は?なんでそうなるんだ?

確かに、自分でもおかしいと思ったけれど、普通なら(何だコイツ…)ってなるはずじゃないのか?

人のこと言えないが普通の人と感覚がずれているのか?

それとも俺のその考えが間違っているのか?

俺が他人の事を考えるなんて、思いもしなかった。

「こうようくん、おともだちになろうよ!」

「え…」

「だってこうようくんはとっっっっってもおもしろいこだもん!」

「…」

よろしくね、と少女はそう言って俺の手を強く握り締める。

…友達、俺はその二字熟語は無縁だと思い込んでいた。友達、俺にはその意味がまだ分かっていなかった。


まあ、どうせ三日坊主と言う言葉がある通り、三日で飽きるだろう、とそう思っていた。

だが、俺の考えは大きく外れた。

明日、明後日、明々後日、弥明後日…と俺に挨拶したり、話しかけたりしてきた。

一週間後も、二週間後も、土日以外は毎日…。

思ったより続いている。

それにしても俺みたいな奴に話しかけてよく飽きないよな。逆に吃驚する。

…でも俺はいつの間にかこの少女と話す事が少し楽しくなっていたようにも思えた。


しかし、またもや事件は起こった。

少女と仲良くなってから二年が経ち、俺と少女は小学三年生になった。

奇跡的にまた同じクラスになった。二年生の時も一緒だった。

まあ、俺がこの少女としか仲良くないからと言うのもあるんだろうけどな。

事件発生は午前七時五十五分。まだ朝の会は始まっていない。

俺は教室に入ろうと扉の前に立った。

扉の透明な部分から、少女が囲まれているのが見える。大勢の男子と女子に。


「凛乃ちゃんって、なんでさあんな男の子と仲いいのー?僕の方がかっこいいよー」

「そうだよ、凛乃ちゃんかわいそう 紅葉くん暗いし、私達と一緒に遊ぼう!」

そして大勢の男子と女子は少女に向かって声を揃えて言う。

「紅葉くんとかかわらないほうがいいよー!」

ほら、やっぱりな。人間なんて皆こんなのだ。いっつもこんな奴しか居ない。

人の悪口を平気で言って、笑いまくる。

俺は教室に入ろうとした。何故かは分からなかった。

そんな時、少女は珍しく声を荒げて言い返しをした。


「紅葉くんのことそんなに悪く言わないで!紅葉くんのほうがカッコいいし暗くなんかないし人の悪口言う人達なんかと仲良くなったり遊んだりしたくない!」

まさか、少女がこんなに言い返してくれるとは思っていなかった。小学一年のときもそうだったけれど、三年のときは特に強い感情を感じる。

少女の言い返しに驚いた少女を囲んでいた連中も言い返しをする。

「そんな…だって紅葉くんと仲良くしてる割には一度も名前呼ばれた事ないじゃない!!」

連中の一人の女がそう言う。

「そ、れは…あの…」

少女は焦る。そして俺も気づく。

そういえば一度も名前を呼んだ事がなかった。

俺は教室の扉を思い切り開ける。

教室に居る全員が俺の方を見る。

そんな事気にしている暇はない。言い返してくれた少女の為に俺は何かしたい。


「凛乃、おはよう」

俺がそういった瞬間、教室は静まり返る。

『凛乃』を囲んでいた連中は、一気にばらまける。

凛乃は俺に向かって笑顔で挨拶してくれた。

「紅葉くん、おはよう~!」

むしろ自分は今まで名前を呼ばなかったのは何故だったのか。

照れてた?いや、それはない。多分。

とりあえず、俺は凛乃を助けたい、そう言う想いがあった。

凛乃が俺の近くに来て、話しかけてきた。

「あのっ…紅葉くん…」

「…?」

クラスメートは少しチラチラ見ているが気にしない。こんな奴ら気にして何になる。

何を凛乃は言いたいんだ。

「『こーちゃん』って呼んでもいい…?」

なんだ、そんなことか。

人からあだ名で呼ばれるなんて初めてのことだ。

「いいよ」

「やったー!」

「俺のほうこそ名前中々呼ばなくてごめん」

「いいよ、こーちゃん」

この日以来、俺は凛乃とずっと一緒にいた。

土日も会うようになった。遊園地で遊んだりした。

当然、親には内緒だ。凛乃と仲が良いのはずっと隠している。

もし、凛乃と仲が良いことがバレたら大変な事になるからだ。凛乃に迷惑は掛けたくない。


小学四年の時は、半成人式で二人で「少し大人になったのかな」と言う話をした。

小学五年の時は、宿泊学習の時はキャンプファイヤーのダンスでペアを組んだ。

小学の卒業式、同じ中学に行けるから寂しくなんてなかった。

そして俺たちは中学生になった。

中学に上がっても、俺たちは一緒だ。

「こーちゃん、私こーちゃんとおんなじ高校に行きたいの!」

「え…」

大体の場合、高校で離れ離れになる事が多い。

将来によって進路によって行く学校も変わってくるからだ。

俺は親から偏差値75の『白埼高校』に通え、と言われている。

日本の中ではかなりのエリート高と難易度が高いと有名だ。

凛乃は頭が悪い方ではない。とはいえ特別良い方とも言えない。

「俺が教えてやる、今からなら遅くないぞ まだ一年だしな」

「ホント!?やったぁ、こーちゃんと絶対おんなじ高校行く!」

「…俺も一緒に行きたいな」

俺がそう言うと少し凛乃は顔を赤くしていた。今まで凛乃が顔を赤くする事なんてなかったはずなのに。


そういう事で、俺たちは毎時間ではないが、休み時間とかたまに放課後、一緒に勉強をした。凛乃のテストの点数は徐々に上がっていく。

「ありがとー!テストで50位に入れたよー!」

「やったな、凛乃。俺もまだまだ頑張るよ。」

凛乃は中学二年生になった頃には俺と同じ二十位以内に入れていた。

凛乃は意外と頑張り屋だから、俺が教えているとき以外でも勉強を頑張っていたのかもしれない。

凛乃と同じ高校にもしかしたら行けるかもしれない。

俺はそう考えると、かなり嬉しかった。

中学二年生の修学旅行で、俺は凛乃の異変に気づいた。

それは自由行動で二人で遊園地を周っていたときの事だ。

「こーちゃん、ジェットコースター乗ろう!とっ~ても怖いと思うよ~!?」

「そ、そんなに怖いのか?」

今までジェットコースターに二人で何回も乗った事はあるが…一度もビビったり叫んだりした事は無い。

凛乃がこんな事を言うのは初めてだから、よっぽどなのか…?

「初めてこーちゃんが叫んでるところとか見れるかもね!」

「お、俺は叫んだりなんてしない!」

凛乃はホントかなぁ~と言ってジェットコースターの乗り口へ向かう。

パスポートを拝見する女の人がいる。

凛乃と俺はパスポートを出した。

拝見する女の人が俺たちに向かってこう言ってきた。


「仲が良いですね、兄妹ですか?」

俺はこの言葉にまたか、と思った。別にそう思われるのは今回が初じゃない。

凛乃を見てみたら、少し怒っているように見えた。

ジェットコースターのシートに座る。

「こーちゃんと私ってそんなに兄妹に見えるのかな…」

「別に今回が初じゃないだろ?どうした?」

「…なんでもない」

おかしい。いつもの凛乃と反応が違う。

小さいときはよく「兄妹みたいに仲がいいんだよー!」って言っていたのに。

それなのに今回はどうしてこんなに怒ってるんだ?

俺はその理由は敢えて聞かなかった。

何でだろう、凛乃が中学になってから少し変わったような気がする…。

昔はよく手を繋いでいたのに、最近は繋がない。

急に顔が赤くなる、とか。

凛乃はどんな事を考えているんだろう。

俺には全く分からなかった。


中学三年生の一月の日曜日、凛乃が電話をしてきた。

「もしもし、凛乃?」

「もしもし、こーちゃん、ごめん…用事がなかったら桜野公園で待っててくれる?」

「え、いいけど…どうかしたのか?」

「ど、どうしても話したい事があるんだ…電話じゃなくて直接…」

凛乃…?

凛乃、一体どうしたんだ?

直接、と言うことは何か余程大事な事なんだろうか…。

「分かった、待ってるね」

「ありがとう!午後三時に来るね!」

そう言って凛乃は電話を切った。

今は午後二時五十分。俺の家から桜野公園までは五分。

余裕を持って俺は家を出る事にした。


桜野公園についた。時刻は午後三時。少し遅めに歩いたからか。

凛乃はまだいない、待ってみるか。


三十分…


一時間…


二時間…


おかしい、どうして来ないんだ…

凛乃はちゃんと約束通りの時間にいつも来るのに。

まさか、まさか…事故とかにあったりしてないよな。

俺は凛乃の家まで走る。

凛乃の家のインターホンを押そうとした瞬間、凛乃の母が出てきた。

凛乃の母は泣いていた。


「紅葉君、り…の…が…」

凛乃の母は俺の肩に手を置いて泣いていた。

嘘…だろ…

「交通…事故…にあって…」


嘘だ…


「病院で…」


嘘だ…嘘だ嘘だ


「今…」


嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ


「な…くなったって…」


コレハ マボロシ ウソ ナノカ

ソレトモ ジブンガ シンジタク ナイダケナノカ

イイヤ コレハ 『ホントウノ』 コト ナンダ


あ…あ…あ…

俺ハ視界ガ暗クテ何モ見エナクナッタ ソシテイツノ間ニカ立テナクナッテイタ

凛乃ノ声ガ再生サレル―――


「こーちゃん!」

「こーちゃんありがとう!」

「こーちゃん大好き!」

「一緒の高校通いたいな…」

「こうようくん、おともだちになろうよ!」


あああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!


俺は、悲鳴を上げていた まるで獣のように

顔を曇らせながら 病院へ向かう

そこには綺麗な顔をして眠っている『凛乃』がいた


せめて自分が向かえにいっていれば

せめて自分が凛乃と仲良くしなければ

せめて自分が凛乃と出会っていなければ


『凛乃』の命はなくなる事は、なかったはずなのに


俺が 凛乃を 殺したんだ

俺の せいで 凛乃は この世界からいなくなった

一緒に 高校 行けると思っていた



三日後、俺は親に図書館に行くと嘘をつき、葬式場へ向かった。

凛乃の親に泣きながら謝った。

「すいません…俺の…せいで…凛乃が…!」

凛乃の親は首を振る。

「紅葉君は何も悪くないわ。凛乃を大切にしてくれて、ありがとう。」

「そうだ、紅葉君は何も悪くないぞ。轢いた人が悪いんだ。紅葉君みたいな素敵な人に出会えて凛乃も幸せだっただろう。学校から家に帰ってくるといつも紅葉君、君の話ばかりしていたくらいだからね。」

凛乃の親は、暖かかった。

俺の冷たい親とは違った。

こんな人殺しの俺を許すなんて…



凛乃は車に轢かれて亡くなった。車は未だに逃走中だ。

情報によると、その車は無免許運転だったようだ。

俺は絶対にこいつを許さない、いくら俺のせいだとしても。

しかし、その車が見つかる事はなかった。


俺の父親の転勤が決まり、高校は新しい所の方へ行く事となった。

偏差値は同じ75。でも、凛乃はいない。

俺はここを去った。

凛乃の事を俺は覚えていても良いのだろうか

それとも覚えていても良いしかくなどないのだろうか



「もう、俺は人と関わる事をやめる」



そう決断して三年、俺は大学一年になった。

高校では人と関わることなく、三年を終えた。

しかし、俺は思いもしなかっただろう。

大学で出会った五人と、まさか…

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