第五話 新しい場所で
自分の前を歩く三人の背を眺めながらぼんやりと足を動かし続ける。今日は天気が良く、日差しが温かい。
にもかかわらず、少し肌寒い気がするのは気のせいだろうか。少なくとも昨日まではそのように感じることもなかった。それに、何だか体の調子にも違和感がある。
あまり認めたくはないが、自分は具合が悪いのかもしれない。
夫の元に嫁いで以降、ここ二十年以上、体に不調を感じたことはなかった。おかしな話かもしれないが、体調を崩している余裕などなかったというのがその最大の要因だったように思えている。暴力的な男との夫婦生活、子育て、挙句の果てには娘を連れて二人きりの当て所ない放浪生活。何かあってもゆっくり療養などしていられるはずがなく、そんな中で必死に生きてきたのだ。
そして、それは今この時も同じこと。旅から旅への生活は依然として続いており、体調不良など考えたくもなく、きっと気のせいだと自分に言い聞かせたくなる。軽い違和感のまま治ってくれるのを祈るばかりだ。
「もう少しみたいだよ。あそこまで上りきったら見えてくるから」
「ほんと?」
「うん。一足先に異能で確認しちゃった」
「そっか。それじゃ早く、あそこまで行ってみよ!」
「ええ」
眼前の会話を聞き流していると止める間もなくミセリアとステラが足取りを早め、ついには走り出してしまった。
はしゃぐ娘に対し、極自然にステラは付き合ってくれている。今この時のみならず、共に旅をするようになってから連日目にしている光景だ。彼女の方も笑顔を浮かべており、迷惑に思わず娘の友人として接してくれているのならば、フィリアにとっても母親として嬉しい話だった。
自分自身も先日の戦闘で取り乱してしまった際にはとてつもなく世話になったし、正直彼女に対しては頭が上がらない。
加えて、ミセリア以外で唯一気を許せる人物でもある。
「……」
青空の下、ステラと手をつないで駆けるミセリアの後ろ姿を眺めていると、不意に昔の光景が思い出された。まだ彼女が死ぬ前の、本当に子供だった頃の光景。近所の子供と共に遊びに出かける娘の背中を毎日のように見送ったものだ。自身の中にある数少ない暖かな記憶の一つ。
「…………のんびり行きましょうか」
「はい……」
昔の思い出に浸っていると、この場に自分と共に取り残されていたキャスから声がかけられた。こちらの返事を聞き届けると彼は前方に向き直って、二人揃って静かにミセリア達の後を追う。
正直なところ、フィリアは彼のことが苦手だった。
服を引き裂かれ、半裸にさせられたり、馬乗りになって殴られたりした経験も手伝っているのかもしれないが、その根本的な原因については自覚している。彼が男だからだ。父や夫との記憶から、どうしても男性に対して恐怖心のような苦手意識を感じてしまうのだ。
勿論、世の中の男が全て父や夫のような暴力的な人物というわけではないのだろうと頭では理解しているし、そもそも彼に服を引き裂かれたり殴られたのは完全に自分の自業自得だという認識もあるのだが。
「二人とも、はやくぅー!」
「……はいはい」
暫く進んだ先、勾配の頂きで立ち止まって振り返ったミセリアの声が響き、次いで控えめにそれに答えるキャスの声が微かに自分のところまで聞こえてきた。急かす娘の声に応じて足取りを速めるべきかと思ったが、前を歩くキャスがのんびりとした歩調のままだったのでフィリアも早足になりそこねてしまう。
先程のキャスの台詞だと、彼女らのところまで辿り着けばいよいよ目的地である名所の姿も見えてくるのだったか。
ゆっくりとした歩みで時間をかけ、ミセリアとステラに追いついた。
「遅いよー」
「ごめんごめん。やっぱり空腹が勝っちゃって」
「うーん……仕方ないか。それよりお母さん、ほら、絶景だよ、絶景!」
そんな声を上げながら前方を指差されるまでもなく、当然フィリアにもその景色は見えている。周囲に存在するものよりも一際大きい緑の茂る雄大な山、陽光を受けて光り輝く湖、その傍らに位置する町並みの姿と、どこまでも広がっている澄み切った青空。
印象的で清々しい、安らげる光景だった。
これまで二十年ほど旅を続けてきたが、こんなにも美しく心洗われるような景色があっただろうか。そのようなことを考えた瞬間、自身の中で自然と浮かんでくる答えがあった。
多分、あったのだろう。
旅路の記憶を思い返してみると、そう思わざるを得ない。当時の自分が気付けていなかっただけ。思えばミセリアはそういったものに気が付いて、しきりに教えようとしてくれていたのだろう。丁度、今そうしているように。
それでも気が付けなかったのは多分、余裕がなかったからだ。自分達の秘密を知られないようにと気を張って、常に周囲を警戒していた。それが間違っていたとは思わないが、不安に囚われ過ぎていたのだと悟る。
目を凝らしていれば今目にしているもの以上の素晴らしい感動とも出会えただろうに、旅を始めて二十年も経ってから気が付くとは。
「……お母さん?」
自分の中に去来した想いに浸っているうちに、ミセリアから不思議そうな声。そういえば、先程かけられた言葉に返事をしていなかった。
「…………ええ、良い景色ね」
「うん」
何とかそれだけ返すと、娘は満足げな表情で頷く。これまでならば反応があまりに素っ気ないと不満の一つも返って来たのだが、今回に限ってはそういった言葉もなかった。何故だろう。
思えば、どうして今になって眼の前の景色に気が付くことが出来たのだろうか。
「……それじゃ、もう一息頑張って歩こうか」
「はい、頑張りましょう」
こちらの思考を他所にキャスが止まっていた移動の再開の音頭を取って、ステラがそれに続く。彼らに合わせ、フィリアとミセリアも足を動かし始めた。
先程の疑問の答えはやはり、この環境の変化ということになるのだと思う。自身に対してどのような影響があったのか、明確に自覚はしていないが。
考え事をしながら歩いていくうちに、徐々に町並みの姿も大きくなってきていた。
それと同時に、少しばかり体に感じていた不調が増してきているのも自覚してしまう。良くない傾向だ。
「町も綺麗だねぇ。落ち着いて暮らすならこういう所が良いなあ」
「そうだね。いつか腰を落ち着けて暮らすならこんな感じの場所が良いかも」
ミセリアとキャスの会話が耳に入ってきて、その内容に何とも言えない気持ちになる。
娘が今、何ということもなさそうに告げた願望は、おそらくこの先叶うことのない願いだ。不老不死の子供が腰を落ち着けて穏やかに暮らすことが出来る場所など、ありはしないだろう。その原因を作った身として、居た堪れない気分だ。
そして、キャスもまた人間でありながら人狼という不老不死の身のはずであり、同様に一所での定住など望むべくもないことは自覚しているはず。
一体、彼らはどういった気持ちで今の会話をしていたのか。
そこで暫く会話も途絶え、フィリアは周囲の景色に目をやりながら足を動かし続ける。遠くの山並みをぼうっとしながら見つめているうちに、いつの間にか町並みも直ぐそこと言える距離まで近づいていた。
「おー……」
不意に、ミセリアから感嘆の声が上がる。
「結構、賑やかなんですね。確かに、遠くから見てもそこまで小さな町じゃないと分かってはいましたが」
「本当だ。噂じゃ、結構長閑で落ち着いた所だって聞いてたんだけど」
町の中の様子までそれなりにはっきりと窺えるようになっため、その賑わい具合も分かる。フィリアもまた、彼ら同様に予想よりも人が多いらしいと窺える光景を目にして意外に思っていた。
「でも、賑やかなのも素敵じゃないですか」
「そうだね。これはこれで良い所かな」
あまり人混みは得意でないのだが、これだけ素晴らしい場所に位置している町なのだからこのくらいは仕方ないかと独りで自身を納得させる。
「……もしかして、何かあって他所から人が集まってるとか?」
一方で、娘のミセリアはそんな推測を立てていた。
「何か、か。……取り敢えず行ってみよう」
「うん。お祭りとかだったら良いなあ」
そのまま町の中まで進んでいき、一旦、全員の足が止まる。
周囲を観察してみるうちに少々嫌な感覚を覚え、その原因は何であろうかと考えてみて武器を帯びている人の割合が他所の町よりも高いと気付いた。
「本当に何かあるみたいだね」
「ね。ちょっと物騒な気分にもなっちゃうけど」
キャスとミセリアも同じことに気が付いた様子。
「どうかしたんですか?」
ステラの方は特に町の雰囲気に対して疑問を抱かなかったようだ。
「冒険者が普通より多いでしょう? だから、何か理由があって他所から人が集まっているんじゃないかってことだと思うわ」
他の二人に代わって自分達が抱いている推測を伝える。冒険者が集まってくる理由など、大抵の場合碌でもない事態だ。
「成る程。どうしてなんでしょうね」
「どこかで聞いてみれば、直ぐに分かるんじゃないかしら」
「そうですね。それじゃあ……まずは、どうしましょうか?」
納得した様子を見せた後、ステラが次の行動についてキャスに問いかける。
「ご飯!」
「うん、僕もお腹へったな」
ミセリアから勢い良く声が上がって、キャスはその様に苦笑を浮かべながらも同意を示した。
「それより、先に宿を見つけて荷物を下ろしてからの方が宜しくないですか? その方が落ち着いて食事が出来そうな気がします」
反対にステラの方は宿の確保を主張。フィリアもまた、こちらの意見に賛成だ。どうせ暫くこの町に滞在するつもりなのに、態々荷物を携えたまま食事に出向くこともないだろう。
「お母さんは?」
「……出来れば先に荷物を下ろしてしまいたいのだけれど、いいかしら?」
「だって」
こちらの意見を聞き届けたミセリアが最終的な決断をキャスに任せる。
「なら、先に宿を探そうか」
主張が通って、先に滞在先を決めることに。
「うん。折角観光に来てるんだし、良いところ探そう!」
「そうだね。お金にも余裕があるし」
「わたしも、それが良いと思います」
「お母さんは?」
「…………ええ、私も、それで構わないわ」
フィリア自身はあまり宿泊先に対する拘りもなく、変に粗悪な場所でなければよいという程度だったが、他の三人がそのように主張するのであればそれで構わなかった。
ごく普通に答えたつもりだったのだが、何故かミセリアはこちらをじっと見上げてくる。
「……もしかして、具合悪い?」
体調不良を看破されたと分かる台詞が飛び出して、内心で驚嘆。きちんと平素通りに振る舞っているつもりだったのに、彼女にはこちらの不調が伝わってしまったようだ。
「そうなんですか?」
「え、ええ。実はさっきから、少しだけ」
「……珍しいね、お母さんが体調崩すなんて。初めてじゃない?」
「旅をするようになってからは初めてね。不甲斐ないわ」
それも、初めての仲間が出来て早々なこの時に体調を崩してしまうとは。
「…………どうしよっか? 仕方ないし、取り敢えず適当にその辺の宿にしとく?」
「いえ、大丈夫です。少し、宿を見て回るくらいなら」
キャスは気を使ってくれたようだが、もう少し歩き回るくらいは問題ない。折角皆が楽しそうにしていたのだし、水を差すのも嫌だった。
「本当?」
「ええ。それに、落ち着いて休むにもやっぱり、ちゃんとしたところが良いもの」
「分かった。それじゃあ……まずはあっちに行ってみよう」
「うん」
本当に大丈夫なのか年を押したミセリアが、こちらの返答を聞き届けて進路を決定。と言っても、ただ前方に続く道をそのまま指さしただけだった。
「無理はなさらないでくださいね」
「ええ、ごめんなさい」
流石に体調が悪いと知られた上で無理をするつもりはない。何かあったら余計に迷惑をかけてしまう。
「そういえば、他所の人が集まってきてるんなら宿の部屋も埋まってたりしないかな?」
「……まあ、それなりに大きな観光地なんだし、その辺は大丈夫なんじゃないかな」
「うーん……。そうだね。心配しても仕方ないか」
いくらなんでも観光地の宿が全て埋まるほどの冒険者が集まっているとは思えないので、キャス同様、フィリアもあまり心配はしていない。
「もう少し人通りの少ない通りで探そうか」
それなりに歩き進んだところでキャスからそのような提案。確かに、その方がより落ち着いた環境で滞在できそうだ。宿を出ればすぐに大通り、昼間は路上の賑やかな喧騒が部屋まで伝わってくる、そんな具合だとどうにも気を休め辛い。
「え、何で?」
「いや、この雑踏に面した宿だと落ち着かないかもなって」
「あぁ、そうかも」
「じゃあ、向こうの通りに入ってみよっか」
「そうだね、行ってみよう」
前を行く二人の間でもそのように合意が取れたようで、進路を変えて脇にある小さな小道へと入っていく。
薄暗い路地に入ってみるとその道を抜けた先に大きめの建物が見て取れた。あれも宿らしい。
進んでいくうちに先程の雑踏が少しずつ遠ざかっていく。
路地を抜けきってその建物の前まで辿り着き、キャスとミセリアの足が止まった。それに合わせてフィリアとステラも止まる。
一つ奥の通りに進んだだけだが、先程とは打って変わった落ち着いた空気。比較的静かで人通りも少ない。
「ここで良いんじゃないかな? 結構、良い場所にあると思うんだけど」
「あたしも良いと思うな」
彼らはこの宿が気に入ったらしい。屋内の様子まではまだ分からないが確かに良い条件の場所だと思う。
「ここでどうかな?」
「はい、素敵なところだと思います」
ステラまで賛同して大方の意見が纏まったところでこちらに彼の目が向けられるが、フィリアにはこの宿でよしとする決定に対し、一つ気にかかっていることがあった。
「えっと……、私も良いと思いますけど、もう少し他所を探して歩いても大丈夫ですよ?」
こちらの体調を考慮して、早めに決めてしまおうとしているのではないかという可能性もあるので、一言断っておく。実際、歩き回る程度ならばまだまだ問題はない。
「いえ、結構良い立地だと思いますし……と言って、万が一部屋が埋まっていたりしたらどうしようもないんですけどね」
「では、一先ず中に入って確認してみましょうか」
「うん」
ステラに促され、キャスが宿の扉を開く。
「あら、こんにちは。お客さんかしら」
「はい」
中に入った途端、女性に声をかけられ代表してキャスが答える。
彼の返事を受けた女性が軽く自己紹介をしてくれて、宿側の人間だと確認が出来た。ここの主人の妻らしい。
「ところで……ご予約の方、でしょうか?」
「いえ」
「滞在期間の予定は、決まっていますか?」
「特に決まっていません。旅の途中で立ち寄ったのですが、急いでいるわけでもないので。……もしかして、部屋、空いてません?」
「そういうわけではないのですが……。今度のニムン山の登頂祭までは滞在なさるのですよね?」
ニムン山の登頂祭。ニムン山というのはあの大きな山の名前だったはずだが、その登頂祭というのは何だろうか。この地についてそこまで聞き及んでいたわけではないので分からなかったが、多分、表で予想以上に人が多いと感じたことと無関係ではなさそう。
「えっと、すみません、あまり詳しく聞いてやって来たわけではないので……。その登頂祭とは?」
「あら、ご存じなかったのですか。失礼致しました」
女性は一度意外そうな顔をして、それから登頂祭に関する説明をしてくれる。
「年に一回、誰でも好きにあの山に登れるお祭りがあるんですよ。普段は色々危険なものが彷徨いている山ですから、武器も取れない人は立ち入らないようにしているんです。けれど、この時期になると町の方で大勢の冒険者の方を雇って山や周囲の獣とか、魔物を狩って安全を確保して、そうやって普段は山に入れない人達も登れるようにするんですよ」
そういうわけで、冒険者らしき者の姿が多かったらしい。懸念していたような物騒な理由があったわけではない様子。
「お子様もいらっしゃるようですし、この機会に是非登ってみられると良いと思いますよ」
少しばかり説明が続いた後、女性から飛び出した台詞を受けてついミセリアの方に視線を落とす。帽子で表情は見えなかったが、おそらく「お子様」呼ばわりされて良い顔はしていないはずだ。
「じゃあ、そうしてみます」
「はい。ただ、それまでの滞在となると部屋が殆ど予約で埋まってまして。二人部屋が二つであれば用意出来ますが……」
「ああ……」
娘の機嫌について推測しながら話を聞いているうちに、宿泊について妙な条件が飛び出してきた。キャスもまた、その条件を聞いた途端に複雑な声を上げる。
「……どうしよっか?」
判断は任せたとばかりに自分達三人を見てそう告げた。
二人部屋が二つということは自分かミセリア、ステラのうち誰かが彼と同室になるということ。そしてフィリアにとって、その三者の中で彼と同室になり得ると思えるのはステラただ一人だけだった。今更男と同じ空間で寝起きするなど絶対に御免であったし、娘が男と二人きりで寝るなどというのも認めたくない。
そもそも、彼女とキャスの関係性とはどういうものなのだろう。当人から仲間になった経緯などは教えて貰っており、まだあまり長い付き合いではないとも知っているが、そういったこととは別な部分については尋ねられずにいる。
二人きりで旅をしていたし、恋人なのだろうか。多分、見ている印象からすると違うと思う。ただ、割とそれに近い距離なのではないかと感じていた。
だとすると、案外あっさり彼女は同室を承諾しそうだ。
「同室ですか。その登頂祭までは、後何日ほどかかるのですか?」
「今日から丁度、十日後ですね」
「十日……」
娘が何やら唸り声を上げている横で、ステラが宿の女性に祭りまでの日数を確認。
「その……わたしがキャスさんと同室でも構いませんか? 勿論、嫌でなければ、ですが」
予想が当たって、ステラが自分からキャスとの同室を申し出た。話はあっさり纏まりそうだ。
「いいけど……そっちこそ本当に大丈夫?」
「はい、わたしも構いません」
「ねえ、折角だし、あたしがキャスと一緒の部屋じゃ駄目?」
急にミセリアから飛び出した台詞に驚き、彼女の方に視線を向ける。無事に話が決まったばかりだというのに、何を言い出しているのだこの娘は。
「ちょっと、ミセリア?」
「駄目? いっつもお母さんとおんなじ部屋だし、たまには別室も面白いかなーって」
「そんなこと言っても……」
相手は男だ、駄目に決まっている。はっきりとそう言いたかったが、本人が隣にいる状況では言い辛い。
「あ、じゃあお母さんがキャスと一緒に寝るとかは?」
「……やめて」
すると、さも名案とばかりに考えたくもない選択肢が提示されてしまった。異性と同室で寝泊まりなど、冗談でも止めて欲しい。何が起こりうるのか考えただけで身震いしてしまう。
キャス個人が信用ならないというつもりは全くないし、自分の夫のような人物とは違うのだろうと思うが、間違っても昔のような経験は二度としたくなかった。
「うぅん……、どうする?」
再び少し考える様子を見せたミセリアが、今度はステラに向かって問いかける。
「分かった。それじゃあ、わたしがフィリアさんと同室ね」
すると彼女は承諾の返事をした。こうなってしまうと、フィリアもしつこく食い下がることが出来ない。単にキャスへの不信感を表明しているようにしか見えないだろう。
「ありがと。まあ、部屋割りは後で変えてもいいんだし、後半はキャスとステラが同室になるのもいいかもね」
「……うん」
「じゃ、決まり! お母さんも、それでいいよね?」
「………………ええ」
すっかり話が纏まってしまい、大人しく頷く他にない。
「キャスも、それでいいでしょ?」
「うん。よろしく」
「それでは、お部屋に案内致しますね」
四人全員の合意が整ったのを見届けて女性がそう申し出た。




