第二話 浜辺の合流
野晒しにしたままなのも気が引けるからとセイレーンの死体を翼一枚残して浜辺に埋葬してやり、ステラはキャスの帰りを待っていた。
何とはなしに座り込んだ状態で手元の砂を弄ったり、月明かりに照らされた海原を眺めたりしている。
夜の海というのも中々に綺麗だ。
この中に入っていった彼が今もその先に広がる未知の世界を走り回っているのかと思うと、少し羨ましい。それはきっと、普通の人ならば一生お目にかかることのない光景だ。どんなものを目にしているのだろう。
お願いしたら、自分も連れていってもらえるかな。
そんなことを考えつつ、時間は過ぎていく。
月は殆ど円状で、明日は満月のようだ。
更に時間が過ぎ、夜空も青空へ。
ステラは大きく欠伸をした。一人きりで周囲に誰もいないために気が緩んでいて、キャスやミセリアの前ではしないような大口を開いたものになってしまう。
故郷にいた時には散々、今自分がしたような粗相を母親がしているのを見て、内心ではしたなく感じていたことを思い出してしまった。あまりだらしなくならないよう、気をつけないと。
昔のことを思い出したからか、最近は凄く心の晴れた毎日だなと比べってしまった。色々あったが、故郷を飛び出し、思い切って出会って間もない彼と旅を共にすると決めたことは、この上なく正解だったと思うことができている。
そして、これからも様々な場所を旅しながら、そう思い続けることが出来るのだろうと信じていた。
日が昇ってだいぶ経った頃、ようやくキャスが姿を見せる。遠くで海面が割れて、そこからのんびり歩いてこちらに向かっていた。
ステラも立ち上がって合流を目指す。
「ただいま。そっちも、上手くいったみたいだね」
キャスの方は問題なく、一人だけで海底の戦いを制してきたらしい。異質な環境での戦闘だったはずだが、やはり守り一辺倒の自分とは力量が違うようだ。
「お帰りなさい。キャスさんも、無事で何よりです。中々戻ってこないから、心配したんですよ?」
「ごめん。向こうを追いかけてたら、随分遠くまで行くことになっちゃって。……昔、人魚たちが暮らしてた町まで行ったんだ。何だか、凄いところだったよ」
「それは凄いですね。後で色々、聞かせてください」
人魚の町とは、また随分と珍しい話を聞かせてもらえそうだと期待が膨らむ。一緒に行けなかったことを残念に思う気持ちもあるが、今回は仕方がない。
「うん。それじゃ、ミセリアも待ってるだろうし、急いで戻ろうか」
「…………そうですね。行きましょうか」
ミセリアの名前に一瞬だけ考えたが、本人の希望を優先し、今はまだ黙っておく。
来たときとは異なり、今度は日に照らされた浜辺を、二人並んで帰っていった。




