なにゆえに
「……君は一体何がしたかったんだ」
今となっては、全くの謎だ。
犯人は、目の前にいるが黙秘を続けている。
社会を変えるため、という遺言の通り。彼が爆死したテロから1年間で、大企業や資本家を狙ったテロが頻発した。
それだけ、社会が二極化しているということなのだろうが、それも、しばらくして収まってきた。
その時、1件の事件が起きる。
発端は、やはり手野グループであった。
グループ全体の頂点にある持株会社、手野産業株式会社は、手野家の当主がその株式の3割を持っていた。
その当主を狙ったテロだ。
実権を未だに握っており、政財界、民間、芸能、さまざまな方面に人脈があると言われている人物である。
それゆえに狙われたのだろうか。
犯人は、黙して語らず。
ただ、本懐を遂げることはできなかった。
当主自身は、ボディーガードに守られていたからだ。
それゆえに、あっという間に捕まった。
以来、一言も発していない。