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4.本題

ようやく本題に差し掛かり始めました。

 毎週日曜の午後18時30分から放送されている国民的アニメ。

 あの時が止まっているとしか思えない7人家族が揃って食事をする居間を忠実に再現したと思われる民家。

 その居間に鎮座している円形のちゃぶ台を囲んでいる2はしらと1人の間には言いようのない緊張が走っていた。


 いや、正確には緊張した様子なのは2柱だけでもう1柱は落ちつかない様子であると言ったほうがよいだろう。そんな状況下で口を開いたのは2柱のうちの1柱、長く美しい銀髪をひっつめた方である。



「先ほどわしはお主に世界の調査をお願いしたいと言ったのを憶えておるか?」


「ああ、はい。 そういえば、何かそんなことを言われいたような記憶が……」


「当初、お主はわしが世界の調査と言った時、この家のリフォームと勘違いしておったがそのようなことなら最初からお主をここに連れてくるようなことはせん。 ここのリフォームなど神の力を使わなくても自動的に修復される機能が備わっておるからの」


「へ~。 凄いですね、神様の力って」


「うむ。 まあ、そんなことは横に置いといてな。

 世界の調査と言うのは文字通り世界の調査なのじゃ。

 詳しく言うとわしが管理を任されている幾つかの星のうちの一つについて調査をお願いしたいのじゃ」


「あの~、その前に一ついいですか?」


「なんじゃ?」


「ここまで話が進んでいて何なんですが、今一つあなた方が神様であると信じられないのですが……

 もしよければ、神様である証拠とか見せてもらうこととか出来ませんか?」


「……まだ疑っておるのかお主は」


「すいません。 話ばかりで具体的な物証を見てないものですから、どうにも信じられなくて……」


「……ふう、よかろう。 では、その証拠とやらを見せてやろう。

 そのかわり、見た後でそれでもまだ疑うというのは無しじゃからな?」


「はい、わかりました」


「よし、その言葉忘れるでないぞ。

 それでは御神、わしとお前でこやつにわしらが神であるという証拠をとくと見せてやろうぞ?」


 「は、はい!」


「それでは、始めようかの。

 御神、お前はこやつの右手を握るのじゃ、わしは左手を掴む」



 と言うが早いか、イーシアさんは俺の左側に立ち手を掴む。

 御神さんも同じように俺の右に来て手を握った。

 どうやら今から神様であることの証拠を見せてくれるみたいだが、俺はそんなことより美女2柱に手を握られて内心ドキマギしっぱなしだ。


 イーシアさんの風邪をひいて温かくなった手と御神さんのひんやりした手の感触とともに、何とも言えないイイ匂いが2柱から感じられて、頭がボォーっとしてきた。



「何をボーっとしておるのじゃ。 目をつむって、両方の手に意識を集中せんか」


「ええっ!? 集中したらムラムラしてきてしまうじゃないですか!!」


「アホ! なにを考えておるのじゃ!? 今からわしと御神でお主にわしらの力と意識を流すから集中して感じ取るのじゃ! わしらが神という証拠を見たいのじゃろう!

 ゲホ! ゲホ! ゲホ! ゲホ! ウゲェッホ!」


「そうですよ、孝司たかしさん。 ちゃんと手に意識を集中してください」


「は、はいぃぃ……」


(ううっ……左右からステレオで注意されたしまったよう)


「よいか、力を抜いて手に意識を集中させるのじゃ。 手から何かが入ってくるのを感じ取れるか?」


「はい、ちょっと待ってください。 集中しますから……」


 俺はそういって言われたように目を閉じると体の力を抜いて、手に意識を集中させる。

 すると、手を伝わって何かが体の中に流れ込んできているような感じが最初は弱く、そして段々と強くなってきた。

 

 

「なにか感じるか?」


「はい。 なにか……なにか、温かいものが流れ込んできます」


「よし、そのまま手を握っておれ。 力を強くするから気を強く持っておるのじゃぞ?」


「はい……」



 すると左右の手から流れ込んでくる温かい何かがどんどん熱く早くなってきた。

 そして……



「うおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉああああああああああ!!!!!?????」



 大声で叫びながら俺は畳に倒れ伏した。






 ◇






「………………………………ハッ!?」


「気が付いたかの?」


「あ、起きられたんですね。 良かったです」


 一体、何があったんだろうか?

 というか……俺はなんで畳の上に寝ているんだ?

 


(あ、お決まりの台詞を言わないと)


「知らない天井だ……」


「何を言っとるのだ、お主は?」


「いえいえ、何も。 ……いっつ」


「頭が痛むようじゃな? お主、2時間も寝ておったのじゃぞ」


「寝てたって? あいたたたたたたっ!

 それって、寝てたと言うより気絶していたの間違いでは?」


「まあ、そうとも言うの。 それはそうと、御神に礼を言っておくのじゃぞ。

 お主が倒れている間、甲斐甲斐かいがいしく介抱かいほうしてくれたのは御神じゃからな」

 

「え、そうなんですか?」


(ほほお、それは男として嬉しいなぁ)



 人間を超える神々しい超絶美人に介抱されるなんて生まれて初めてだ。

 しかし、よく考えたら俺はもう結婚できないかもしれない気がする。

 それぞれタイプが違えど、背筋がゾクっとするほどの美女がすぐ傍にいる上に手まで握り、介抱されれば人間の女性には戻ることなど難しいだろう。

 まさにOh My Godes.だ。



(ただし、1柱はジャージに丹前たんぜんだけどね……)



 それはそうと、とりあえずお礼は言っておかないといけないだろう。



「御神さん、私みたいな野郎の面倒を見ていただいてありがとうございます」


「いえ、元はと言えば私達が力を送り過ぎたのが原因なんですから、気にしないでください」


「それはそうと、お主はわしらが神であるという証拠を見ることが出来たかえ?」


「ええ、それはもう。 お陰様で、とんでもないものを見させてもらいましたよ」


「ほう? そんなにとんでもないものを見たか?」


「ええ……」


 そう、俺が2時間ものあいだ気絶というか寝ているというか、その間に夢とも現実ともつかない光景を見たのだ。

 一体、何を見たか?

 人類の誕生から今日こんにちまでの歴史を見たのだ。


 それも、どこぞの猫型ロボットがでてくる某アニメの日本誕生のような日本限定の歴史ではなく世界中の、それもこの神様達がていたと思われる視点で、だ。

 しかもフルカラーである。


 白黒モノクロではなく、フルカラー。

 昭和時代のブラウン管のような総天然色でもなければ、古い映像にデジタルで色付けしたものでもなければ、2K・4Kでもない肉眼で見るフルカラーだ。


 ツタンカーメンや織田信長、ナポレオンにペリーにヒトラーなど教科書に必ず記載される歴史上の有名な人物から、縄文時代にローマ帝国、桜田門外の変、明治維新、世界大恐慌に2つの世界大戦、キューバ危機にケネディ暗殺や地下鉄サリン事件、9.11テロなど歴史の転換点になる大きな出来事をものすごい速さで、しかし長い時間を掛けて観ていたような気がする。


 多分、この感覚は誰にもわからない。

 過去を覗き見るというより、そこに居たような感覚なのだ。

 まるで、自分がその時その時の登場人物になったかのようだった。



「本当に凄いものを見ましたよ。 あれは全部……」


「全部、本当にあった出来事じゃ。 産業革命までは、わしが観てきたもの。

 それ以降は全部、御神が観てきたものじゃ」


「本当に貴女方は神様だったんですね……」


「じゃから、最初から言っておったじゃろう? お主の聞き分けが悪かっただけじゃ」


「ええ、それについては謝ります。 疑って本当にすみませんでした」



 俺は2柱に対して、素直に謝罪した。

 今まで妖怪だ仙人だと疑っていた自分が恥ずかしい。

 『穴があったら入りたい』とはまさにこのことだ。



「では、わしらがお主にお願いしたいことも聞いてくれるな?」


「ええ、聞かせていただきます」



 正直、俺は腹をくくった。

 あんな凄い体験をさせてもらったし、相手は神だ。

 ただの人間が神から逃がれられるわけがない。

 俺はこの2柱のてのひらの中にいるのだ、ここまで来たら覚悟を決めるしか道は残っていないかった。



「それでは、改めてお主にお願いしたい。

 内容は簡単じゃ、わしがインフルエンザに罹ってしまったのは最初にあったときに伝えたが、そのインフルエンザの|所為せいでわしの担当している世界の管理が難しくなっての……お主にはわしが管理している幾つかの星の内、1つを調査してもらいたいのじゃ」


「それは分かりましたが、具体的にはどのような調査を行うのですか?」


「調査については、御神の方から説明させよう」


「あ、はい。 

 そのお、元々は私がイーシア先輩にインフルエンザをうつしたのがいけなかったのですが、

その所為で先輩の力が弱くなって世界に変調をきたし始めたのです」


「その変調と言うのは?」


「世界が崩壊し始めているのです。 それぞれ生物が存在する星ごとで症状が違うのですが、例としては異常気象や生態系の異常に不用意な戦争の頻発、魔力の不安定化、原因不明の疫病の蔓延などです。

 規模や度合どあいなどは、それぞれの星で違うのですがこのまま放っておけば確実のその星は滅亡します」

 

「と言うことは、私が調査する星というのも……」


「はい。 何かしらの崩壊の兆しがないか調査してもらいたいのです。

 ただ、孝司さんに調査を行ってもらう予定の星はだその兆しが見えてないのです」


「は? どういうことですか、それは」


「言った通りの意味です。 崩壊の兆しは未だないのですが、今までのデータから見るに遅かれ早かれ崩壊の兆しが訪れると思うので、その予兆をいち早く発見して私たちに報告して欲しいのです」


「ま、早い話がわしの管理する星に降りてぶらぶらしながら予兆を察して欲しいという訳じゃ」


「いやいや、ぶらぶらしながらって言いますけど、星ですよね?

 そんな人間にとって、巨大かつだだっ広い所を自分一人で調査するんですか!?」


(マジで?

 神様なら散歩感覚でサクッと終わらせちゃうだろうけど、こちとら人間ですよ?)



 まさか、自分達と同じ姿をしている人間ならば、なんとかなるだろうとか思っていたりしないだろうか?

 正直言って無理である。

 特に海とか海のように超巨大な大河とかは、船や航空機でないと渡ることは出来ない。


 何処かの剣士のようにオカリナを吹いたら、優しい鳥さんが迎えに来てくれるとかそんな特技や秘技は俺にはない。そんなことを考えていると、御神さんが説明を付け加えてくれた。



「あ、大丈夫ですよ。 いくら我々でもそんな無茶はさせません。

 調査にあたってもらう人達は複数いますので、一人で星の行かせようなどとさせませんから」


「そうなんですか? よかったあ!」


(ホッ、なんだびっくりした。 まあそりゃあそうだよね)



 でも、一人でないとしたらいったい何人で調査するんだろう?



(ちょっと聞いてみようかな?)



「因みに教えていただける範囲で結構なんですが、一人で降りないとしたらいったい何人くらいの規模で降下するんですか?」


「あ、ちょっと説明の仕方が悪かったですね。

 調査は基本的に一人で行ってもらうのですが、調査対象の星に孝司さんを含めて数人が降下してもらうことになります。 基本、大きな大陸に複数人で島嶼部とうしょぶなど比較的小さいポイントにはそれぞれ一人ずつ降りてもらいます。 孝司さんを入れて大体、10~20人前後の日本の方に降りてもらう予定です」


「結構多いですね……それだけの数の日本人が居なくなれば大騒ぎになりませんか?」


「あ、その点は大丈夫です。 

 孝司さんは生身のままですがそのほかの方々は、不幸な出来事ですでにお亡くなりになられた方々の魂です。所謂いわゆる、異世界転生という形で先輩の管理する星に降りてもらうことになります」

 

「そうじゃな、じゃから魂の状態で転生する日本人はわしの顔は知らん。

 彼らが知っているのは御神の存在だけじゃ。

 もちろん、孝司、お主のことも彼らは知らん」



(あ、今俺の名前初めて読んでくれた、ちょっと感動。 しかし……)



 でも、ちょっとだけ引っ掛かる。

 何で俺だけ生きたまま降下させられるのだろう?



(なんか気になるなあ)


「あの~ちょっと疑問に思ったのですが、何故私だけが生きたままなんですか?」


「あ、それは……」


「それは、わしのせいじゃ。

 本当はお主も死んでからわしの管理する星に降りるはずだったんじゃが、インフルエンザでボーっとしておったわしが勘違いしてお前に会ってしまったことで、お主が死ぬ運命から外れてしまったのじゃ」


「はあ!? 俺が死ぬ!? なぜ!?」


「そのお、本当はですね、孝司さんはえっとサバイバルゲームですっけ?

 そのイベントの帰りに車に乗って高速道路を使って帰宅するときに逆走してきた車で……」


「もしかして、その逆走してきた車と正面衝突で死ぬはずだったと?」


「いえ、その逆走してきた車をうまくやり過ごしてほっとしたのもつかの間、さらにもう一台逆走してきた車と衝突して亡くなる予定でした」



 ……ぬぅあんてこったい。



(ってことはあれか、このイーシアさんと言う神様は俺の恩人ならぬ命の恩じんってことなのか?)


「イーシアさん」


「なんじゃ?」


「私の命を救っていただきありがとうございました」


「気にするでない。 せっかく拾った命じゃ、わしに感謝しとるというのであれば、その分これから行う調査に励んでもらえればわしとしてはありがたいのう」


「はい」


「それでは、気を取り直して説明を続けますね。

 先ほど説明した亡くなられた方々の異世界転生ですが、彼ら彼女らはもうすでに転生して生活を開始しています。 しかし、彼らは世界の崩壊のことや予兆については知らされていません」


「え? では、どうやって彼らは崩壊の予兆を調査するんですか?」


「調査自体はお主が担当するのじゃが、彼らは要するにハンマーなのじゃ」


「ハ……ハンマー?」


「そうじゃ、ハンマーじゃ。 

 孝司、お主は壁の中の異常を地球ではどうやって調べるか知っておるか?」


「えっと、Ⅹ線画像検査装置で調べたり……」


「それよりもっと原始的な方法でじゃ」


「打音検査という検査方法で専用のハンマーで壁を叩いたり……って、まさか……」


「そう、その通りじゃ。彼らにはそのハンマーになってもらい、お主は彼らが壁をハンマーで叩いて異音が出たところをさらに詳しく調べて、わしらに報告する役目を負ってもらう。

 もし異常があればわしが直接、神の力を持って補修・修理する。

 それくらいのことが出来るくらいの力は戻って来ておる」


「でもそこまで上手く行きますかね?

 だって彼らは自分が転生した先の世界が崩壊するかもしれないなんて知らされていないんでしょう?」


「そこは気にせんで良い。彼らは多かれ少なかれ転生するときに御神から様々な力を授けられとるし、前世(地球)で過ごした記憶や知識、経験はそのままじゃ。

 降下場所はそれぞれかたよりが無いようにしたが、生まれる家庭や民族・種族はバラバラじゃからな。

 絶対に自分の経験や知識、特技、御神から貰った力を用いて自分の生活環境を向上させたりそれこそだ見ぬ異世界を見てまわろうと旅行や冒険を画策しようとするはずじゃ。

 そんなことになれば異世界転生者のつね、必ず何かの騒動なり事件に巻き込まれる。

 仮に本人たちが大人しくしていても、周囲の者達が放って置かないであろう」


「と言うことは、その転生者達が起こす騒動の現場に行けば……」


「そう。 これはわしだけではなく、他の神々からフィードバックされたデータでもあるのじゃが、地球に関わらず、異世界に何らかの力を持って転生した者がいた場合、大なり小なり必ず騒動が起こる。

 そして、その騒動によってその星を管理していた当の神自身が気付かなかったバグや変調が浮き彫りになる。 本来ならそういったバグの修正と調査はわしがするべきところじゃが、生憎あいにくとインフルエンザに罹っておるせいで、細かい力が使えんゆえ調査のみをお主にお願いしたいと言うことになったのじゃ。 まあ、お主が生身で行くことになったのは予想外じゃったがの」


「そうですね。 私がうっかり先輩にインフルエンザをうつしたばっかりに……」


「まったくじゃ」



 本当にまったくである。

皆さんは異世界転生したいですか?

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