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3.話

そろそろ本題に差し掛かりたいです。

 俺はあせっていた。

 目の前の女性が自己紹介する前に俺の名前と年齢をあらかじめ把握していたからだ。

 先に断っておくが今、俺が身につけているサバゲー用の装備に名前を示すものは一切取り付けていない。

 勿論、年齢を示すものも何一つ付けていない。


 それなのに何故、この女性が俺の名前と年齢を把握していたのか?

 考えられる可能性は幾つかある。

 一つは、俺の職場である某ホームセンターに行って俺の名前を知ったという可能性。


 しかし、これは無いだろう。

 何故ならこんな美女が店に来たら、まず間違いなく忘れないし職場で話題になるからだ。

 直接、俺の名札を見ず職場の同僚に俺のことを尋ねてもなんらかの形で噂が耳に入ってくると思うが、そう言った噂はこれまでのところ聞いたことがない。


 もう一つは、俺の地元の市役所で住民基本台帳を確認するという可能性もあるが、個人情報保護法の観点から見ても、アカの他人であるこの女性に対し市役所の職員が俺の個人情報をほいほいと見せることは無いだろう、多分……


 まあ、男性職員が色仕掛けで堕とされたのなら話は別だが、ホームセンターのしかも地元雇用で入社した一契約社員の個人情報なんてそこまで手間を掛ける価値なんてないだろうからこれも除外。

 あと幾つかは俺の友達や親から聞き出したか、何かのキャンペーン募集の際に俺が記入した個人情報をネットなどなんらかの形で見聞きした可能性もあるがどうなんだろう?


 勿論、俺が登録している企業などから俺の個人情報を含めた様々な情報がビッグデータとして企業間でやりとりされている可能性はあるが、どこの企業からも個人情報がれたというニュースや噂、お詫びのメールなんて見聞きしたことがないし、友達や親からも俺の個人情報を探っている奴の存在なんて聞いていない。


 幾ら何でも目の前の女性が人外の存在であったとしても、なんの下調べもせずに俺の個人情報を把握するなんて神様でもない限り無理だろう。

 俺がひとり頭を巡らせている様子を静かに見ていた女性が口を開いた。



「お主が考えていることが手に取るように分かるぞ。

 無表情になって冷静さを装っているようじゃが、頭の中ではお主の個人情報をわしが握っていることに考えあぐねているのであろう?」

 

(っげ、バレてる……)



 普通、初対面の相手にしかもすんごい美女の口から自己紹介もしてないのに自分の名前や年齢を言われたら焦るし、なんで自分の事を知っているのかって考えることだろう。



「あのー、単刀直入にお聞きしますが、何故私の名前や年齢を知ってるんですか?

 自分でも言いたくはないんですが、どうして私の独身歴まで知っているのかって不思議でしょうがないのですが」


「ああ、それは簡単なことじゃ。 とある神物じんぶつにお主のことを聞いたからじゃ」


「ああ、そういうことですか。

 と言うかとある人物って一体誰なんですか、私の個人情報を貴女に漏らしたのは!?」


「それはの「それは、私の所為せいです」」


「うわあ! だ、誰なんですかあなたは!?」


(ビックリした!)



 いきなり俺のすぐ横に目の前の女性とは別の女性がいたのだ。

 それも、なんの前触れもなくそこにいたのである。

 気配すら感じさせずに本当にパッと現れたことに俺は大きな衝撃を受けていた。

 それにしても、この女性も俺の正面にいる人?に負けず劣らず凄い美人だ。



(うわ、巫女さんだよ、巫女さん!)



 生地の質感と着こなしで単なる巫女さんのコスプレでないのは一発でわかった。

 顔立ちについては日本人なのだが、彫りが深い顔立ちで畳の上に座っているとはいえ、きりりとした雰囲気を纏っている。


 そして目の前の美女ほどの長さではないにしても、腰まで届いている艶やかな黒髪が目を引く。その質感は日本のシャンプーメーカーのCMに出演していてもおかしくないくらいサラサラに髪の手入れが行き届いていた。



「おお、ちょうどよかった。 今、まさに主の話をしようとしておったところじゃ」


「え、この人の話?」


「うむ。 わしがインフルエンザに罹っているのは、最初にお主と会った時に伝えたであろう?」


「ええ、まあ……」


「で、わしにインフルエンザをうつしたのはそこにおる御神みかみという地球の神じゃ」


「はあ、そうですかぁ……」


(……ん? 今、この人なんて言った? 『神』って言ったか、この人?)



 仮に俺の隣に座っているこの人が神様なら、なんで目の前の女性がさも偉そうな口聞いているのだろう?

 聞いたところ日本の神様ではなく地球の神様ってことらしいけど、もし本当ならここにいる3人の中でも一番偉い存在ではないのだろうか?


 それこそ、超大国であるアメリカ合衆国大統領を凌ぐほどの権力者ということだから、まあ普通なら俺ごときが御尊顔できる訳ないのは当然としても、妖怪とも仙人ともとれないこの人より偉いんだから、本当に地球の神様ならこの女性も「神じゃ」とか言ってる場合じゃないだろう。

 


(絶対に嘘だ)

 

「ふふふ、疑っておるな? 御神が地球の神であるのかを。

 まあ分からぬでもないが、事実じゃ。 御神は正真正銘、地球の神じゃ」


「いや、そう言われてはいそうですかと信じる馬鹿が何処にいるんですか?

 大体、貴女の言うことを仮に信じるならば私の隣に座っている方は地球の神様なんでしょう?

 そのようなお方を前にして、何故貴女がそんな不遜ふそんな態度のままなんですか?

 地球の神様なら貴女より断然偉い存在でしょう?」


「ん? お主、わしの存在をどんな風に捉えておったのじゃ?」


「 え? どんな存在って、妖怪とか仙人のたぐいとかじゃないんですか?

 例えば、雰囲気的に狐とか?」


「狐……プッ、アッハッハッハッハッハッハッハッ! ゲェホ、ゲホ、ゴホ、ゴホ、ゴッホ!

 アハハハハハハハ! く、苦しい、可笑おかしくて笑いが止まらん! 苦しい!」


(いや、そこまで笑わなくてもいいでしょう、あなた……)



 自分でインフルエンザに罹っているって言ってたのに元気である。

 俺はそれまでずっと沈黙したままの暫定地球の神様に試しに話しかけてみた。



「あのー、何であの人はあそこまで笑い転げているんですかね?

 私、なんか間違ったこと言いました?」


「え? いえいえ、とんでもない! あ、いえ何ていうかそのぉ、アハハハ……」


(え? 何それ、その微妙な笑いは……)


「アハハハ! ……ハア、苦しかったぞ。

 そうか、お主にはわしが妖怪に見えておったか……そうかそうか」


(いやなんか、一人で納得してないであんたの正体バラすなら早くしてよ)


「あの、いい加減自分だけ蚊帳の外の状態はやめてそろそろ教えてくださいよ。

 一体何故、私がここに連れてこられたのか、貴女がたは何者なのかを」


「まあ、それもそうじゃな。

 わしもこのシチュエーションに飽きてきたところじゃし、いい加減わしの自己紹介もせんとの」


 

 よくよく思い出してみると、ここに連れて来られてから、この女性から名前を聞いていないのだ。

 俺がそんな頃を思い返していると目の前の美女が「オホン」と前置きして自分の自己紹介を始めたのだが、まさかその口から飛んでもないことが出てくるとは思いもしなかった。



「では……わしの名前はイーシア。 元地球の神で現在は別の世界の管理を担当している神じゃ。

まあ、ぶっちゃけお主の隣に黙って座っている御神の上司。 と言うより先輩じゃな」


「はあ?」



 多分、この時の俺の顔は今まで生きてきた中でも最も間抜けな顔になっていた。

 文字通りポカーンとしていただろう。

 そんな状態の俺に構うことなく、目の前の美女改め『イーシア』はどんどん話を進めて行く。



「で、どうしてわしが元地球の神なのかと言うと、わしが神として一人前になった時にちょうど地球で産業革命が始まってな、丁度良いからそこにおる当時ひよっこじゃった後輩の御神に神としての経験を積ませようと思って地球の担当を御神に譲り当時出来たばかりでまだ担当しんがいなかった世界の担当になったのじゃ」


「今、あの人が言ってることは本当ですかね?」



 俺は隣の地球の神様に聞いてみた。

 すると、御神さんという神様は若干焦った様子でこうのたまった。



「え!? えっとお……まあ大体合ってますけど、地球の担当を交代して私に経験を積ませると言うより、産業革命のあと地球で禄でもないこと(世界大戦)がのちに始まりそうな予感があって、管理が大変なことになりそうだから私に担当を譲ったとお酒の席で酔っ払いながら言っていた記憶が……」


「うわぁ……」



 正直言ってドン引きである。

 おそらく自分のために先輩がわざわざ担当を代わってくれたと思って、頑張って地球の管理をしていたのに酒の席で酔っ払いながら当時の事情を話されて可哀想に……

 しかも、明らかに面倒事(世界大戦)が将来起こることを予期して代わって(押し付けて)いたとは……



(ひどいわぁ……)


 そう言えば、以前勤めていた職場にもそんな上司がいた記憶がある。

 簡単な仕事は率先してやるくせに、ちょっとでも面倒そうな仕事になると俺や当時の同僚に振っていた糞野郎。


 しかし、そのせいかモンスタークレーマーや取引先企業の無茶な要求にもへこたれなくなったし、新しい転職先のホームセンターでも適度に仕事をこなすことが出来るようになっていたのだから不思議なものである。そんな過去を思い出してしまったせいか、つい俺は御神みかみさんに対し同情の念が湧いてしまった。



「大変ですねえ、神様も」


「ありがとうございます」


「ところで、お二人にお聞きたいのですが?」


「ん? なんじゃ? ちなみに、神の数え方はにんではなくはしらじゃぞ」


「ああ、はい。 じゃあ、あのお二柱に幾つかお聞きしたいのですが、良いですかね?」


「ん、なんじゃ?」


「はい、何でしょうか?」


「ここは一体何処なんですか? サバゲー中にいきなり連れて来られてきましたが、ここはサバゲーフィールドの近くなんですか? あと、何で私はここに連れて来られたのでしょうか?

 そろそろ、理由を教えてもらいたいのですが?」


(……あれ? 何で二人して目配せしたの?)



 二柱の神様は一気に表情を硬くした。

話が長くなると書き上げるのに時間が掛かりますね。

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