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作者: 頭山怛朗

 ふと気づくと見知らぬ村を歩いていた。


 人が住まなくなって何年も放置された朽ち果てた家屋が目立った。人が住んでいるらしい家もあるが、今、出かけているのだろうか人の気配はなかった。

 まるで、音がない。カラスが鳴く声も、雀のさえずりも聞こえない。川のせせらぎの音も無い。

 どうしてここにいるのだろうと考えた。まるで記憶がない。自分がどうやってここへ来たのか? 車で? バスで? いや、違う。歩いて……? それは絶対にありえない。

 では、どうやってここへ来た?


 突然、人の声、大勢の人の声がした。苔と何処から湧いてきたのか分からない水で濡れた石段を足元に注意しながら登っていった。

 数分で広場に着いた。

 そこに大勢の人がいた。宴会の真っ最中……。

 四十年も前に死んだ親父がいる。それから祖母。お袋もいる。親父、祖母、お袋は三年続けて死んだ。いつの間にか親父、お袋が死んだ歳を自分は越えていた。生まれたばかりの赤子もいる。兄貴と自分の間に生まれて数週間で死んだもう一人の兄だと直感した。

 微かに見覚えのある年寄りがいた。祖父だ! 祖父は自分が十歳になる前に死んだ。だからその顔は記憶が曖昧だ。でも、祖父に違いなかった。

 他にも大勢いる。顔の形、体型がどこか似ている人がいる。みんな一族だ。

 それから大勢の他人たち……。

 「おぉ来たのか? 座れ! 」親父が言った。「ご先祖さんと仲間だ。これからお付き合いをお願いすることになる。挨拶しろ! 」


 誰かが自分の体を激しく揺さぶった。声もした。「あなた大丈夫? 」そこに妻がいた。

「ひどくうなされていたわよ。 大丈夫? 」と妻が言った。



 あの不思議な夢を見てから数日が経った。もし、あの時妻が起こしてくれなかったらどうなっていたのだろうと思う。

 でも、生きるも死ぬも同じだなとも思う。

 死んでからも家族とあるいは他人とお付き合いなんてまっぴらだ。


 あの夢が正夢でないことを祈る。死後の世界など欲しくない。

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