表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

気付けば檻の中

作者: 桜坂 花音

過剰なストーカー被害に合う、少女の話。

一応犯罪チックなので、観覧注意です。

相手の《××××》はご自由に名前を想像ください。

 日中だというのにカーテンを閉め、一人の少女が暗い部屋の隅で蹲って泣いていた。

 泣いても泣いても涙は止まらず、ただ服の袖をぐちゃぐちゃに汚す。

 部屋に響くのは、少女が鼻を啜る音だけ。

 少女は必死に口を押さえ、声を押し殺していた。



(このまま、呼吸が出来なくなって――――死んでしまいたい)



 頭では死ぬ方法を考えられるが、実際に行動は出来ない。

 頭では自身の心臓に包丁を突き立てられるが、実際に刺すことは出来ない。

 理由は、少女は怖がっているから。 

 血の臭い、痛み、冷たくなっていく身体、死んだ後に何が待っているのか……少女は怖くて、頭で浮かんだ内容を実行出来なかった。

 

 そして、今日も――――少女がここまで苦しむ《原因》が訪れる。



「……っ!!」



 暗い部屋に、小さな光が点滅した。

 少女はその光に気付き、顔を上げる。

 小さな光を発している物……それが携帯だと理解した少女は、口を押さえていない方の手で携帯を手に取った。

 ディスプレイには、《メール》の文字とその相手の名前《××××》が表示されている。

 それを見た少女は口を押さえるのを止め、両手で携帯を握りしめて何度もディスプレイの文字を見返した。

 どんなに見ても《××××》の文字は変わらない。



(違うッ!!!!届くはずがない!!!!何で、どうして!!?)



 少女は恐怖のあまり、全身を震わせていた。

 何故なら、このメールを送ってきた《××××》のメールが来ないように自分のアドレスを変更していたからだ。

 勿論、変更後のアドレスを《××××》へ教えていない。

 必死に心の中で否定をしながら、携帯を操作して《××××》から送られたメールを確認する。

 そこには、たったの五文字しか書かれていたなかった。



『どうして?』



 それだけだ。

 しかし、そのたった五文字だけでも……少女にとっては恐怖そのもの。

 震える手でメールを削除する。

 

 同時に、再び携帯が《××××》のメールを受信して光った。



『どうしてアドレスを変えたの?

 どうして俺に教えてくれなかったの?』


「だ、だって、それは……っ!!!!」



 ――――貴方が怖いから。

 少女がそう叫ぼうとした時、また携帯が光る。



『理由なんて聞きたくない。

 それより、俺を愛して? 俺を愛してよ、ねえ、ねえってば』

 


 まるで少女と対話しているように、文章は的確に打たれていた。

 それを見た少女は携帯を床に勢い良く投げ捨て、咄嗟に口を押さえる。

 


(……まさか……)



 床に這い蹲り、少女は恐る恐るカーテンの前へ移動する。

 そして、ほんの少しだけカーテンを開けた。



「っ、きゃあああああ!!??」



 少女は悲鳴を上げ、もがく様にカーテンから離れた。

 顔色が酷く、苦しそうに何度も咳き込む。

 

 少女が見た物――――それは「目」。

 大きく開かれた目が、こちらを見ていたのだ。

 そして、その目こそ……《××××》だった。



(嫌、助けて……誰か……誰かっ!!!!)



 外へ出れば、《××××》が少女を捕まえる。

 助けを呼ぶ事も出来ない。

 もしも警察へ連絡してしまったら、《××××》が窓を割って侵入してくる危険があるからだ。


 そのせいで、少女はただ部屋の隅で震えることしか出来ない。


 



 少女が飢えで死ぬか、《××××》が侵入してくるか。

 果たして、どちらが先だろう。








【気づけば檻の中】


 ――気付けば、少女は《××××》の檻の中から抜け出す事は不可能だった――

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ