証
その日はまさに七月といっていいほどの猛暑日だった。規模は上等なパーソン高校だが、クーラー設備はされていない。生徒からしてみれば、教師との目の付け所が正反対といっていいほど違うので腹が立つだろう。
そんな灼熱地獄と化した教室で俺は二人の女の子に奇妙な話をしている。
その話を大事なところだけ抜粋した俺監修の文章にするとこうだ。
俺は風切奏といういたって普通の高校生であり、年齢は15歳の兄弟は無で、俺はこんなへんてこりんな世界にいた記憶は無くて、俺の記憶があるのはこことは違う高校に通い、大した感慨もなく普通に高校生活を満喫していた違う世界でのしかない。というのを伝えた。
「それって本当なのか?」
一美が聞いてきた。
「あぁ本当さ。絶対信じろとは言わないが、俺は1ミクロンも嘘をついてはいないぞ」
あぁそうさ、これは真実なのだ。ここは夢ではないという確証はまだないが、俺はそんなこと信じたくもない。
「でも、たしかに奏はこの三ヶ月間、わたしたちと過ごしてきていたよ、ねえ実」
実は首肯している。そうだ、そこもひっかかる。俺はパラレルワールドに来ちまったのか?だとしたらもう一人の俺がいるはずだ。
いやいや、そもそもそんなSFチックな話を信じたくない。そんな話が通用するのはどっかのミステリオタクだけだ。だが、俺はそんな胡散臭い話でも信じるしかないような体験をしている。わからん。自分でもわからん。いっそ死んでみればわかるかもしれない。
あいにく俺はそんな一か八かの行為はしたくない。
一人考えていると実が言った。
「私は信じるよ、奏くんのこと。だから一つだけ聞かせて。奏くんは……」
実は時が止まったかの様に喋るのを止めた。
「ううん、なんでもない。だとしたらまずは様子をみてみないとわからないよね、第一夢だっていう可能性もあるわけだしね」
満面の笑みを浮かべた実の顔には少し曇りがかかっていた。まるで祭りごとが過ぎるのを受け入れざるをえない少女のような顔だった。
「あ、あぁ。悪いな、なんか変なこと言ったりして。でも、これは本当なんだ。それだけは信じてほしい」
俺はせめてもの願いを口にした。
「なぁーにしけた事言ってんのよー、信じてほしいー?当たり前でしょ!信じるに決まってるじゃない!ねえ実!」
一美が少し怒りの入った口調で言った。実は笑顔で返答した。正直嬉しかった。
「ってことでさ、あのーじつに言いにくいんだけどー…」
「なに?」
「ええっとー、今の俺はお前たちのことも、この世界のことも微塵もしらないんだ。だからさ、そのー、いろいろと教えてほしいんだよね」
二つ目のせめてもの願いをした。
「いいよ、ね一美」
「うん!そういうことなら!」
二人とも快く賛同しあってくれた。
これから聞く話はとびっきり夢チックなものだった。