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ユートピアの鍵  作者: 奏
3/7

それにしてもリアルだ。

なんて事を上辺で考えながら、俺はグラウンド端のベンチに腰を下ろし、野球の試合を観戦していた。言われてみれば、ここは高校だ。だが、現実での俺が通っている高校よりもはるかに綺麗な校舎で、はるかに大きなグラウンドである。やはり夢だからスケールもスペクタクルも上等なものだな。

よく見渡すと、これは学校対抗野球大会らしい。スコアボードには、1-2やら3-5などといった学年と組を表す表記がされているしな。

と考察していると実さんとやらが歩み寄ってきた。


「けがはだいじょーぶ?」


「ああ、もう平気だよ」


優しい子だ。こんなマヌケな俺の気遣いをしてくれるなんて。


「それより、試合にいかなくていいのか?」


「うん、さっきの試合に負けちゃってもう出番はないんだ、わたしたちのクラスは」


どうやら俺の夢は中途半端なところからはじまっているらしい。実さんの話によると、前日の試合で全敗、今日の試合も全敗、という無惨な結果だったらしい。俺の所属してるクラスっていったい…。

といった感じに実さんとの対話を堪能していると、


「あ、一美が来たよ、おーい!」


とグラウンドの奥の方から走ってくる女の子に手を振っている。一美?そんな登場人物までいるのか、この夢は。

全速力で走って来た女の子は一美さんというらしく、俺と同じクラスの子らしい。なぜわかったのかと気になると思うが、理由は簡単。ユニフォームの学年クラスが一致したからである。1-6、そう書いてある。

その一美さんとやらはロングヘアーがとても似合っている方だった。


「奏、バカみたいに転んだんだってー?あたしも見たかったわー」


むむ、こういうキャラの設定なのか。ちょっと目上の人、大まかにいえば……姉。


「あ、あぁまあね、一美さ……お、お前は見てなかったのか?」


あぶねぇ。きっと一美さんなんて呼び方してないよなこの雰囲気的に。


「うん、まあね、実行委員だし。なんてったってマネージャーだからね、あたしは」


「あ、あぁそうだったな」


強い風が吹いた。それは突然。もちろん、感覚がしっかり伝わってきた。


「遠麻と里子はまだきてないのかー、あいつらチアだったわよね?」


一美さんが少しイライラしてるようだ。


「う、うん。もう少し待とっか」


実さんが嵐を沈めようと励んでくれている。

じつは俺は少し不安だった。

長すぎやしないか、夢といったってさすがに長すぎる。しかもどことなくリアルだし、感覚もある。よくよく考えたらおかしいぞ。


夢というものでは痛覚というものは、

断じていう。

決して味わうことはない。


俺は恐る恐る、自分の頬をつねってみた。


横では実さんと一美さんが談笑していた。


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