7:異世界滞在2日目-2
さあ、どこに行こう?。の巻
「おはようミオさん。私に聞きたいことがあるそうですな」
「おはようございます、オディロンさん。あの、どうして私はこちらの言葉が話せないのにアニーやオディロンさん以外の人と普通に会話ができるのでしょうか?」
「ふむ・・・それを正確に説明するには1週間かかるが、手短だと2分以内で済みますぞ」
またか・・・またこのパターンか。
「・・・2分以内でお願いします」
「それはのー、どうやら異世界を渡ってきたものの特権らしくてな。なぜか自分の言葉が相手にはその国の言葉に聞こえるらしいのよ。私もおかげで、どこ行っても困らなくって。はっはっは」
はっはっは・・・って。確かに2分以内で終わったけどさ・・・・。
「ただ文字を書くのだけは難しい。もし興味があるなら、ここの文字をお教えしますぞ?」
「えっ・・・」ただの観光旅行だから読めて話せれば、特に不便がなさそうだよなあ。これからさき、アニーとメールはやり取りしても、来ることはなさそうだし。
「いいえ・・・別にいい・・・「ミオ、習っておきなさいよ」
断ろうとしたらすごい勢いでアニーがさえぎってきた。
「午前中はオディロン先生に文字や、この国のことを教わったらどう?何も知らないより楽しめるわよ」
なるほど。アニーの言うことも一理ある。どうせ午前中はヒマなのだ。
「オディロンさん、よろしくお願いします」
私が頭を下げると、オディロンさんは嬉しそうに笑っていた。
文字を教わるのは明日の午前中から始めるということで、アニーと2人でどこに行くか話し合うことにした。
「私、王宮の中を見てみたいわ。王宮の中くらい1人で動けるようにしておきたいのよ」
「いいわよ。じゃあ、とりあえずこれを見てもらいながら説明するわね」
アニーから渡された “カルナステラ王国・王宮ガイド”は、王宮の平面図が一面に書かれて一般公開されている場所に注釈が書かれているものだった。
オディロンさんの執務室からまっすぐアニーの部屋に来たから、私はガイドで自分が滞在している王宮の外見をみた。壁は茶色で屋根は青緑色。平面図によると、中央に庭園があって囲むように建物が立っている。
「その庭園は一般公開しているのよ。中央は王宮内で仕事をしている人がいる執務棟。1階は国のさまざまな役所が入ってるの。
正門からみて左側にあるのは、歴史博物館と図書館、美術館がある文化棟。右側は兵士や魔道士が常駐してる警護棟。
王族の私室は中央棟の奥にあるの。それでね、出かけるときは王族専用の出入口を使ってもらいたいの。」
「わかった。それにしても、王宮って広いね~」
私がもらったガイドをみてしみじみ言うと、アニーはため息をついた。
「小さい頃は迷子になったもの」
「え、迷子?」
「100年くらい前まで増築と改築が繰り返されて、まるで迷路よ。今の王宮の全てを把握してるのは、お父様とオディロン先生・・・それにノアとカールくらいじゃない?」
「カール?」
「王宮の警護責任者で魔道士。ノアの親友だから、そのうち向こうから顔を出すわ」
ノアさん、友達いたんだ。なんかよかった。
「アニーは、王宮でどこが好きなの?」
「そうねえ、特別庭園と図書室それに厨房ね。そうだ!今から図書室と厨房、それからミオに一番案内したい場所を教えるわ」
「へっ?どこよ」
「それは到着してのお楽しみ♪さあ、行くわよ!時間は待ってくれないんだから」
「それ、アニーの口癖だよね。“時間は待ってくれない”」
「だって私の自由時間って、いつもすごく短く感じてしまうんだもの」
おばあちゃんが“アニーちゃんは「思い立ったが吉日」って言葉がぴったりだねえ”って言ってたっけ。
それにしても、どこを歩いてるんだかさっぱり分からない・・・確実に部屋から出たら迷子だ。
「はい、まずは図書室。ここでオディロン先生の授業を受けることになると思うわ。」
アイボリーの壁に、光のよく入る大きな窓に濃い緑色のカーテン。濃い茶色の書き物机に、赤い革張りの椅子、ゆったりと座れそうなベージュのソファ。
一つ一つの椅子を照らすように明かりが置かれたテーブル、天上にはシャンデリア。本棚も壁の色に合わせたアイボリーで、びっちりと本が埋まっている。
「いつでも好きなときに出入してね。ジャンルはいろいろ取り揃えてあるからさ」
「うん、ありがとう」
ああいうソファに座って本を読んでるだけで、気分はセレブだな。そして確実に寝てしまいそうだ。
「さて、次は厨房ね。厨房の責任者は私が産まれる前からここで働いているのよ」
「へえ~~」
「殿下!!こんな場所まで来てどうされました?」
責任者と思われる男性が慌てた様子でアニーのもとに歩いてきた。
「私の親友に、王宮でお気に入りの場所を案内してるのよ。」
「ああ、こちらの方が。初めまして、ここの責任者のジェリーノです。食事はお気に召しましたか?」
「こんにちは、ミオです。食事とっても美味しかったです。あと昨日のお茶にでたケーキも」
「ああ、それはよかったです。」
それにしても広くてきれいな厨房。たくさんある鍋もよく磨かれている。ジェリーノさんが隅々まで気をつかっているのが分かる。今は夕飯の下ごしらえの真っ最中のようで、あんまり邪魔しちゃいけないような気がする。
「じゃあ、ミオ。そろそろ本日最後の場所を案内するわね。ジェリーノ、下ごしらえの忙しい時間に来ちゃってごめんなさいね」
「何をおっしゃいます。今日の夕食は殿下のお好きな白身魚とポテトのオーブン焼きをお出ししますよ」
「まあ本当?それは楽しみだわ」
笑顔でジェリーノさんに見送られて厨房を後にした。
読了ありがとうございました。
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オディロンさんが1週間かかるといった「正確な説明」については
スルーしてください。作者、考えておりません。
ノアの出番がない・・・すみません。
ジャンル:恋愛です・・・頑張ります