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番外編1:王女様は少しため息

アニー視点です。


「アニー、ビセンテの婿入りが決まったよ。本当はもっと早く決めるはずだったんだけど、長い間煩わせて悪かったね」

 エルネストがにっこり笑って教えてくれる。


「まあ、それはおめでとう。お相手はどんな方?」

「それがね、今の国王が静かに過ごしたいからと離宮を造らせた島があるだろう?」

「確か国王陛下と側室の方が、毎年何日か過ごされているとか」

「そこの島の管理を任せている男の一人娘にビセンテが手をつけていたことが発覚してさ。おかげで、相手を探す手間が省けちゃったよ。

ビセンテは王族じゃなくなるけど、愛の前には小さいことさ。弟の結婚に私は喜んで賛成したよ」

「それはなによりね」

「あちらの親子はもちろん乗り気だし、父上も側室殿も最愛の息子の側で永住。双方丸く収まってよかったよ」

 恐らく、エルネストの言う“丸く収まった”というのは、ビセンテや国王陛下、側室の方にとっては・・・・いや、これ以上考えるのはやめよう。我が国に関わることでもないし。

 エルネストはそんな私の様子を見て、ちょっと笑うと話を続けた。

「陛下はそろそろ政務をこなすのが辛くなってきたらしくてね。私に王位を譲ることに快く同意してもらったよ。島は何もないところだが静かに暮らすのにはうってつけな場所だし、何よりビセンテの義父になる男は“私に対して”とても忠実だからね」

「・・・・ミオを駆け引きの材料にしたわね?」

 エルネストは私の指摘を否定も肯定もせずに微笑んでお茶を飲んだ。まったく、この人は。

「ところで、ミオがこちらで生活するそうだね」

「ええ、そうなのよ。ノアが頑張ったの」

 私が顔をほころばせると、エルネストもなんだか楽しそうな顔になる。

「あのノアが?それは興味深いね」

「邪魔をするなと言っても無駄だろうから、ほどほどにね」

「おや、私は邪魔などした覚えはないんだけどね」

 ノアって結構、人に振り回されているわよね・・・そして一番振り回してるのは私かも。



 そして1週間後、現在のペルジェス国王陛下が退位し、半年後にエルネストが次期国王になることと、三男のビセンテが結婚し王族を離れることが正式に発表された。

 ペルジェスではさしたる反論もなくあっさりとその知らせは国民から受け入れられ、むしろ喜ばれたらしい。

 その知らせを聞いたノアは何を今さらと言った感じで、驚く様子もなかった。

「あれは女好きの腹黒だが、それ以外はちゃんとしているからな。もともと政治の実権は握っていたのだから遅すぎるくらいなんじゃないか?」

「ノア、その“女好きの腹黒”呼びはやめなさいって」

 ノアの言い分に“そんなことない”って否定もしにくい。確かにエルネストの女性関係は華やかだから。

「ふん、あいつの人間性を的確に表してるじゃないか」

「まったくもう・・・ま、いいわ。ノア、ミオは元気?最近忙しくて会えないからつまらないのよ」

「・・・・元気だ。アニーが会いたがっていたと伝えておく」

 ノアがちょっと照れている。ミオと恋人同士になってからノアはだいぶ表情が柔らかになった。

「それで、ミオは公爵家での生活には慣れた?」

 ミオはノアとともに王国に戻ってきたものの、すぐに公爵家に連れて行かれてしまった。そこからセルマのチョコレート屋に通勤していて、休日には叔母様から王国のしきたりなどを教えてもらっているらしい。

「屋敷の者とも気軽に話しているし、母上とも仲がいい。最近は父上もこちらに顔を出すのだ」

「それはよかったじゃない。でもなんか面白くなさそうな顔しちゃって」

「・・・・最近、私だけ忙しくて屋敷に戻れない。つまらん」

「私のまえで拗ねないで下さる?ノアお兄様」

「拗ねてなどいない!・・・そろそろ仕事に戻る」


 恋は人を変えるとは言うけど・・・・あれほど変わるのも珍しいわね。拗ねるノアなんてはじめて見た。

 なんだかんだ言っても幸せってことね、いいなあ。無才はいなくなったけど、私とカールの間にはまだ問題がある。

 一人のときならいいわよね・・・私は少しだけため息をついた。

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