4:異世界滞在1日目-2
公爵様とご対面。の巻
入ってきた男性は、まずオディロンさんにお辞儀をして、アニーに視線を移し、私のほうをじっと見ている。
ああ、居心地が悪い・・・困っているとアニーが私に声をかけた。
「ミオ、紹介するわ。この男性は私の従兄でノア・クロンヴァール。ノア、彼女はミオ・オダジマ。私の親友よ」
「ノア・クロンヴァールだ。私の母親がアニーの父親・・・国王陛下の妹にあたる」
「ミオ・オダジマです。はあ、そうなんですか」
うわー、外見の期待を裏切らない俺様な口調が似合いすぎ。
アニーの従兄だから、きっと王子とか貴族なんだろうなあ・・・・セレブってやつですな。
世間的にイケメンの部類に入るだろう整った容姿。目の色は空の色・・・スカイブルーってやつか。髪の毛はブロンド。全体的に色素が薄い。
「ノア。ミオがおびえておりますわ。もう少し柔らかい表情はできませんの?」
「これが普通だ。・・・それより私は忙しいのだ。用件とは、この間の話だろう?」
それにしても、どうして私、アニーやオディロンさんはともかく他の人の言葉までちゃんと理解できるんだろう。どうみても日本語をしゃべっているように見えないんだけど。
今は聞ける雰囲気じゃないしなあ・・・あとでオディロンさんにこっそり聞こう。
2人が話している間、私は下を向いてケーキをつついていた。しっとりしたケーキの中にいちじくのような果実が入っていて美味しい。知らない国で美味しい食べ物に出会うって幸せだ~。
「・・・ね、ミオ」
いきなりアニーに話を振られて、私は思わずむせてしまう。ヘルガさんが大丈夫ですかと、お茶を入れてくれる。
「す、すみません。ごめん、アニー。何の話?」
「もー、しょうがないわねえ。私がミオをあちこち案内してあげたいんだけど、どうしても外せない仕事が入ってる日もあって全部に付き合えないのよ」
「そんなの全然かまわないよ。見所と行きかただけ教えてくれれば、私1人で観光とかするし」
「だめだめ!この国の治安は悪くはないけど日本ほど安全とはいえないわ。女性1人の行動が危ない地域だってあるのよ」
「それじゃ、アニーが忙しい日は王宮を散歩してるよ。案内図ってあるのかな」
「それはあなたに申し訳ないわ。だから私、思いついたのよ!ね、ノア?」
ノアさんの眉間にしわが寄ってるんですが・・・・無表情にそれがプラスされて、怖いんですが!!
反対にアニーとオディロンさん、ヘルガさんは何だか楽しそうなんですけど!!
「アニー・・・何を思いついたのよ?」
「実はね。このノアに、あなたのガイドをお願いしたってわけよ!
こう見えても、公爵家の当主だから、どこでも顔が利くわよ。それにノアには不届きな人間は近寄ってこないし。これほどあなたにぴったりなガイドはいないわよ」
ひゃー、ノアさんは貴族だとは思ってたけど公爵家当主ですか!!
「そ、そんな恐れ多い人にガイドなんて悪いよ・・・もっと、普通の人が・・・」
「ミオは私に不満か?」
「いえいえそんな!!滅相もないっ。」
ノアさんにじろりと睨まれて、背筋に嫌な汗がつたう。しかしいきなり呼び捨てか。さすがだな、公爵!
「私は忙しいのだが、アニーに頼まれてな・・・王女命令で。だから、了承してくれないと命令に背くことになってしまうのだ」
王国に忠実なんですね、ノアさん。顔は怖いけど誠実な人なんですね。アニーは、この人が断ることを見越してあえて王女命令を出したとみた。
だとしたら、私が断るとノアさんは困るってことだ。断るんじゃねーよってことですね。ええ、その雰囲気で分かりますとも。
「わ、わかりました。それでは、ガイドをお願いします。ノアさん」
「ノアでいい」
「へっ?いやいや公爵様を呼び捨てなんて無理ですから」
「ノアでいい・・・公爵命令だ。逆らうな・・・・いてっ!!」
ノアさんの横にいたオディロンさんが、ノアさんの頭をはたいた。
「この馬鹿者。もっと丁寧な言い方はできんのか。すまないね、ミオさん。これは昔からこうなのだが、人間的には信用できる。私の顔をたててノアと呼んでやってくれないか?」
「わかりました。オディロンさんがそうおっしゃるなら。よろしくお願いします・・・・ノア」
「こちらこそよろしく。そうだミオ、言っておかねばならぬことがある」
「は、はいっ。なんでしょう」
「午前中は仕事があるので、ガイドは午後からになる。それでもいいか?」
「それはかまいません。」
「そうか」
そう言ったノアさんの顔は、相変わらずの無表情だけど眉間にしわをよせていなかった。でも、どういうわけか口元がひくついていた。
・・・笑顔?それとも苦渋の表情?うーん、わからない。
読了ありがとうございました。
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2人が出会うまでに4話かかっております。
申し訳ありません。
ちなみにミオの心境は「ヘビににらまれたカエル」。