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41:異世界滞在13日目-3

旅行者、心がゆれる(前編)。の巻

「う~・・・おなかいっぱい。なんか1ヶ月分のスイーツを食べた気がする」

 部屋にもどった私がおなかをさすっていると、アイノさんからどろどろした濃い赤色の液体を渡された。一見濃厚なトマトジュース・・・・匂いは草。

「アイノさん、これは?」

「食べ過ぎに効く飲み薬で即効性があります。さ、ミオ様。飲み干してくださいませ」

「う・・・うん。なんか、草の匂いがするね?」

「原料の植物は、生えているときは緑色なのですがすりつぶすとその色になるんです。不思議ですよね。さ、ミオ様」

 アイノさんは本当に私の食べすぎを心配して、この真っ赤なヤツを持ってきてくれてるのは分かる。分かるんだけど、草っぽさが・・・・アイノさんの「早く飲んでください」という視線もあるし、ええい、ここは思い切って!!私はコップを手に取ると“これはトマトジュース”と言い聞かせてぐいっと飲んだ。

 飲み薬は確かに即効性で苦しかったおなかもすっきり。でも、強烈な草っぽい匂いに見合う強烈な味で、これを飲むくらいなら美味しくても食べすぎには気をつけようとまじめに思う。

 アイノさんが口直しにと入れてくれた水を飲んでふうと一息つく。

「今日の夕飯はどうなさいますか?」

「・・・今日は食べ過ぎたからいらないです」

「かしこまりました。あら、ミオ様どちらへ?」

 部屋にいても暇だし、おなかも大丈夫になったし。今度こそ図書室であの本を読む!!

「読みたい本があるから、図書室行ってくるよ」

「かしこまりました。念のためランプをお持ちくださいね」

「うん、わかった」

 私はソファから立ち上がると、図書室に向かった。



 もう少しで夕方になりそうな図書室は、まだ明かりは必要ではないけれどオレンジ色になり始めていた。

 私がオディロンさんにこの国のことや文字を教わったり、夜に行ってアニーとカールさんの密会に遭遇してびっくりしたり、ユーグ王子に密偵と間違われて捕まったり・・・そして、ノアさんに抱きしめられたのもここだった。

“ミオは私が守る”だっけ。うーんすごいな異世界。あれは映画のヒロイン気分になった。思い出すと赤面もののシチュエーションだけど、そうそうめったに経験できないことだった。

「ある意味、儲けものだよね」

 うんうんうなずいていると、後ろから声がかかった。

「-なにが儲けものなんだ?」

「うひゃあ!!!」

「うひゃあとはなんだ。失礼な」

 人間、やっぱり公共の場所でボーっとしてるのはよくない。私はノアさんが入ってきたのにちっとも気づいていなかった。


「ごめん。ちょっとボーっとしてた」

「ミオはいつもボーっとしてるからな」

「なにそれっ。ひどくない?」

「そうか?ところでアニーとのジョシカイで食べ過ぎただろう」

「なんで知ってるの?」

 私がぎょっとすると、ノアさんはちょっと笑った・・・ように見えた。

「私の仕事はここの薬師部の管理だ。今日、食べ過ぎ用の薬をもらっていったのはヘルガとアイノだけだが、薬師から2人に食べ過ぎの様子は見られなかったと聞いている。

 ということは、アニーとミオしかいないだろう?腹八分目にしたほうがいいぞ。あの薬はよく効くが味が強烈だ」

「・・・・それはもうわかってる。ノアさんの仕事、初めて知ったかも・・・」

「そういえば、教えてなかったか。通常、公爵家当主は王宮で仕事をし、他の一族は自分の領地で薬草・穀物の栽培、研究をしている。

 私が当主になったのは6年前で、父が薬草の研究をしたいからと私に当主の座を押し付けてきてな・・・あの当時は大変だった・・・・すまない、私は自分のことばかり話してしまったな」

 ノアさんは申し訳なさそう(推測)な様子だけど、私はなんだか嬉しい。

「ううん。いろいろ教えてもらえて嬉しいよ」

「じゃあ今度はミオのことも教えてくれないか?」

「私のこと?たいして話すことないよ」

「ミオのことを知りたいんだ」

 ノアさんはさらっと言うけど、その言い方がまるで私を口説いているみたいな感じで少し恥ずかしくなる。

 でも、私のことを知ってもらいたいってすごく思った。

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