3:異世界滞在1日目-1
王女様の状況説明。の巻
「アニー。あの、飛行機じゃない手段であなたの国に来たんだけど・・・いったいどうなってんの?」
「それはあとでちゃんと説明するわ。今は親友を抱きしめたい気分なのよ。ミオ、久しぶり。顔をあわせたのは3年ぶりよね?」
それにしてもアニーの着てる服はレースの襟にウェストがきゅっとした青みを帯びた紫色のシンプルなドレスだ。私の好きな名探偵が活躍する時代の服・・・ヴィクトリア朝の服に似てる。
「うん。私が就職した頃だから3年前だよ・・・・アニー、元気そうでよかった」
「おばあさまのことは驚いたわ。あなたの側にいられなくて本当にごめんなさい」
「そんな謝らないでよ。おばあちゃんが常々“ピンピンコロリで、美生に迷惑をかけないようにあの世に行きたいねえ”って言ってたのを知ってるでしょ。まさか、あんなに早くその通りになるとは思わなかったけどさ」
祖母が亡くなったのは、今から2年前のことだ。
「改めて言うわ。ミオ、ようこそカルナステラ王国へ」
そう言うと、アニーは抱きつくのをやめて私の顔を見てにっこり笑って手を握った。
「カルナステラ王国・・・・?それ、どのへんにあるの?ヨーロッパ?」
頭の中ではわかっていた・・・隣の部屋で光と強風を浴びながら来たここがヨーロッパじゃないってことは。でも、聞かずにはいられない。
アニーはちょっと考えるような顔をして、私の横にいたオディロンさんのほうを見た。
「殿下。まずはミオさんにお茶を勧めて・・・それから全てをお話されてはいかがですかな」
「そうね」
「で、でんか??」
私が驚いてるのを知ってるくせに、アニーはそこをさくっとスルーして私に笑いかけた。
「ミオ。ここでもいいけれど、私の部屋でお茶を飲みましょうよ。オディロン先生もご一緒にいかがかしら」
「いいですな。殿下、もちろんあれも呼んでいるのでしょう?」
「もちろんよ。」
「アニー、あれって?」
「まあまあ。とりあえず部屋を移動しましょ?」
どうやら、お茶を飲むまでは私の質問には答えてもらえないようだ。
通されたアニーの部屋はエンジ色の絨毯が敷かれ、失礼ながらオディロンさんの部屋にあった家具より高そうなアンティーク調の家具にかこまれていた。
そこで秘書だというヘルガさんを紹介され、お茶を出された。
「まずはミオに、状況を説明するわね」
「うん、よろしく」
私が言うと、アニーはこくりと頷いて、話し始めた。
「まずは、ミオに謝らなくてはいけないことがあるの。私、ミオやおばあさまに自分の素性を話してなかったでしょう。
実は私、このカルナステラ王国の継承順位第1位・・・現在の国王の第一子なの。」
「へ~第一子・・・・ん?てことは?“でんか”って・・・・王女殿下?アニーって王女様??」
「世間的にはそうね。でも、中身はミオが知ってる私よ。
それで、この国の場所なんだけど・・・・実は、この国はミオのいる世界と並行している別の世界なの。つまり、異世界ってことね」
「異世界!!う、うそでしょ??あのさ・・・その、異世界と、どうして隣の部屋がつながってるわけ?」思わず自分の頬をつねる・・・痛い。
「それは私が説明しましょう。正確な説明だと3日かかりますが、手短だと3分で済みますぞ」
オディロンさんが話しかけてきた。
「・・・・3分でお願いします」たぶん、3日かかる話を聞かされても私には理解できない。
「ミオさんの住んでいるマンションの位置が王宮の位置と一緒なのですよ。私は異世界移動ができるので、あちらに出かけるのが隠居後の楽しみで。
どうせなら異世界に拠点がほしいと探していたら、ぴったりだったのがあの場所で。部屋を購入したら、たまたまミオさんの部屋の隣だったというわけです。」
「はあ、そういうものですか」
「ええ。そういうものです」
オディロンさんがにこにこと頷くので、なんだか納得してしまった。その様子をみていたアニーがまた話を始めた。
「王族は20歳のときに一年間だけ、好きな場所で過ごせるという権利があるの。それで、私はオディロン先生から常々聞かされていた異世界に行ってみたかった。そして、ミオに出会えたの」
「なるほど・・・とりあえず世界が違うってのはわかったよ。は~・・・そんなことってあるんだね。」
異世界かあ・・・ネット小説で異世界恋愛モノとか好きでチェックしてたけど実際に滞在することになろうとは。
これが小説なら、イケメンが現れて・・・な~んてパターンだけど、ただの観光旅行だし。あっても困っちゃう。
そんな私のしょうもない妄想がアニーにばれると恥ずかしいので下を向いてお茶を飲んでいると、扉の開く音がした。
「アニー。私は忙しいのだが」
部屋に入ってきたのは、不機嫌なのを隠さない男性だった。この人ももちろんヴィクトリア朝の服だった。
読了ありがとうございました。
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親友と感動(?)の再会です。
オディロンさんが3日かかるといった「正確な説明」については
スルーしてください。作者、考えておりません。
ミオが好きな名探偵は、私も大好きで
彼の登場作品を読んでミステリーの面白さに
はまったのでした。
テレビ版のジェレミー・ブレットもイメージぴったりでした。