16:異世界滞在6日目
王女様のたのしみ。の巻
前半アニー視点。後半はミオ視点。
休憩中、ヘルガの持ってきたお茶を飲みながら窓の外を見るのが好きだ。
文字ばかり見ている瞳に、庭園の緑色や晴れた空の色は優しい。雨の日のしっとりした庭園も悪くない。
もっとも今、私を楽しませているものはそれだけじゃない。今日はミオがこちらにやってきて6日目だ。
ミオがなにやら両手で抱えて歩き、隣をノアが彼女の歩調に合わせて歩いている。今ミオは先生から文字の書き方や、我が国や周辺国について教わっている。
「公爵様たちは、どちらへ行かれるのでしょうか」
「あの方向だと大広間だけど・・・ああ、あの近くに東屋があったわね」
「まさか・・・」
ヘルガが心なしか顔を赤らめるのをみて、私は笑いながら否定した。
「ヘルガ。あの2人はまだそんな雰囲気じゃないわ。私としてはさっさとそうなってほしいけど」
「僭越ながら・・・殿下の計画はミオさんは笑って許してくれそうですが、公爵様はお怒りになるかと」
「ノアは、私がやたら公務をいれてるのを怪しみはじめてるのよね。“普通友人を招待するとしたら公務が少ない時期ではないのか”って言われてしまったわ」
ミオは“忙しいんだな”くらいにしか思っていないからいいけど、さすがにノアには通じなくなってきてる。
「そろそろ殿下もミオさんと一緒に行動する予定を増やしたほうがよさそうですね」
「衣装合わせで決めた服はもうミオの部屋に届いてるのよね?」
「はい。アイノが受け取り部屋に保管してあるとメイド長から報告が届いております」
じゃあ、明日は2人で街中をお忍びってのもいいわね~。美味しいケーキの店に連れていってあげよっと。
「殿下、明日はペルジェスから王太子と第二王子が定例会議のためいらっしゃいます」
「あ・・・そうだったわね」
「それからミオさんと街中に行く場合は必ず護衛の者をお連れくださいませ」
ヘルガったら・・・どうして私の考えが分かるのかしら。まあ、いいわ。そういえばミオに伝えてなかった。ミオの行動範囲とあの2人かち合うことってあるかしら・・・・もともと好奇心旺盛なミオは、王宮内を散策することが最近気に入ってるらしい・・・ということは、ばったり会ったりして。
私の親友はどんな反応を示すだろう・・・あら、ちょっと楽しみかも。そのときのノアの反応も見たいわね。
とりあえず、今日の夕飯時に教えておけば問題ないか。
ノアが連れてきてくれたのは、前に言った大広間の近くにある東屋だった。
「ここは風が通って気持ちいいねー」
「そうだろう。図書室にこもるのもいいが、外で読書も気持ちがいいぞ・・・さて、今日はどのくらい進んだ?」
「えっと・・・このあたりまで・・・」
私はつづった部分をノアに見せる。
「ミオ、3つ目の単語の綴りが間違ってる」
指摘されて辞書をめくると、確かに違う。読むのと話すのはできるけど、書くのはまた別だなあ。
思わず頭を抱えていると、別の手の感触が。
「・・・・ん?」
「大丈夫だ。先生もミオが筋がいいと言ってただろう?私もそう思うぞ。短期間でここまで書けるようになったらたいしたものだ」
そういうと、ノアさんが私の頭をなでる。えっとー、私は子供ではありませんが?ノアさんをちらっと見ると、背がちがうせいか座っていても見上げる形になって目があった。
「・・・・悪かった。これは子供にするしぐさだな・・・ところでミオ。明日は少々忙しくて昼1時ではなく昼3時に部屋に来てくれないか」
「わかった。そういえば、なんだか王宮のメイドさんや女官さんたちが楽しそうだったよ。また衣装合わせでもあるのかな」
そういうとノアさんの手が止まり、なんだか難しい顔(のような気がする)になった。
「ミオ・・・明日も王宮内を散策する予定か?」
「うん!せっかくオディロンさんから地図もらったんだもん。歩いてるといい運動になるし」
「そうか・・・じゃあ、明日はこちらに足を向けるな」
「なんで?」
「明日は王宮に女好きの腹黒とガチガチの堅物が来る。ミオ、いいな」
ノアさんの心配そうな顔を見て、私は思わずうなずいた。
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新年あけましておめでとうございます。
なんとか更新することができましたので
今年も楽しんでいただけると嬉しいです。




