15:異世界滞在5日目-2
旅行者、着せ替え人形になる。の巻
「ミオ様の髪の毛はとてもさらさらですのね。それにきれいな栗色」
「瞳の色は黒なのですね。こちらの国にはない色ですわ」
「お肌もなめらかですわ。スタイルもよろしいのですね」
服を脱いだら脱いだで、この羞恥プレイは何。アニーのほうをみると慣れた感じでメイドさんにいろいろ服を持ってきてもらって楽しんでいる。
スタイルがいい?ただの中肉中背だって。とはいえ、いいことばっかり言われてると気分が高揚してくる自分もいるんだけどさ。
「ミオ様、こちらの若草色の服はいかがですか?百緑色の襟と袖、同じ色のリボンが胸元のポイントです」
アイノさんが持ってきてくれたのは春をイメージしたような黄緑色の外出着で、ごく薄い緑色のリボンが胸元に飾られている。ボタンは灰色がかった緑青色のくるみボタンだ。
ウエストがきゅっとしまってすそにかけてはフレア。この国のスカート丈はマキシが普通のようだ。
「うわあ、かわいい!」
思わず弾んだ声をあげてしまい、アイノさんたちの満足気な様子にちょっと恥ずかしくなる。
この国の服は確かにヴィクトリア朝ちっくな服だけど、一人で着られるような作りになっているのは助かる。私はアイノさんから服を受け取ると試着してみた。
「まあ!お似合いですわ。まるでミオ様のために作られたようです」
「・・・それはちょっと言いすぎだと思う」
「ウエスト部分も特に直す部分はございませんね。苦しくありませんか?」
そう言われて、とりあえずウエストをひねったりかがんだりしてみるが少々ゆとりがある。何かを食べておなかぽっこり・・・というのはなさそうでほっとする。
「袖とすそがちょっと長いようですね」
確かに袖は手が半分隠れてるし、すそも床を引きずっている。うーん・・・体格差ってやつですね。
メイドさんがてきぱきとすそにマチ針をさしていき、袖は折っていく。
「この程度でしたら、今日の夜にはお届けします。さあミオ様、次は何をお持ちしましょうか」
「へっ?あれ一着じゃないの?」
「王女殿下から滞在中に着る服を見繕うように言われておりますわ。さあ、どんどん選んでくださいませ」
「はああ?ちょっとアニー!?」
私は思わず椅子に座って靴を試しているアニーのところに駆け寄る。
「どうしたの、ミオ。気に入った洋服はあった?」
「その前に!!なんで滞在中の服って」
周囲に聞こえないように声を潜めて言うと、アニーはちょっと悲しそうな顔をした。
「実はノアが忠告してくれたの。ミオの服装って、この国では相当目立ってしまうみたいなの。安全に観光をしたければ、この国の衣装のほうがいいだろうって・・・・ごめんね」
「でも、こんなに洋服作ってもらっても、税金の無駄遣いみたいで悪いよ」
「あ、その点は大丈夫。もともとこれらの服ってデザイナーの試作品で1点ものなのよ。私たちが着ることでその人たちの宣伝になったりするからさ。いわば広告塔ね。だから気にしないで好きな服を選んで?」
私の服装って、そんなにこの国では浮いてたのか・・・確かに、パンツ姿の女性を見たことなかったな~。異世界に来たんだなあとしみじみ感じてしまう。
「アニー、ありがとう」
「いいの。私がミオに我が国の服装をしてほしくて考えたんだから。実はそれが一番の目的だったりするわけよ」
「は?」
「そして、お忍びで街中をぶらぶらしに行くの!楽しそうでしょ?」
そういうとアニーはパチンとウインクした。いや、それは無理だろう・・・だけど、やりそうな雰囲気がぷんぷんなんだよなあ。
結局、私は着回しできそうな生成りのブラウス数枚とスカート、ジャケットなどを選んで衣装替えを終えた。
靴のほうは見えないからいいだろうと今履いてるバレエシューズと持参したローヒールですませることにする。
アイノさんにお茶を入れてもらい、椅子に座ってほっと一息ついていると、ヘルガさんから耳打ちされたアニーが「まあ、叔母様が?・・・そうね、今なら大丈夫だから入っていただいて」とメイドに指示している。
ドアが開き、ココアブラウンの髪の女性がアニーの方向に歩いていくのが見えた。
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洋服描写・・・一着分書いただけで挫折しました。
ここは読者様の想像力におまかせします。