13:異世界滞在4日目-3
植物園に行った後。の巻
ノアさんが薬草と穀物のエリアに食いついた。
そこに居合わせた職員さんを呼び寄せると、なにやら聞きたいことがあったらしく私に、このエリアから出ないようにと言うと、植物談義に入ってしまった。
私も迷子になりたくないので、おとなしくノアさんの言うとおりにエリアの中をうろうろ。
もしかして彼は、ここのエリアに来たくて植物園に行こうって言い出したんじゃないだろうか。
それにしても、今ノアさんの相手してる職員さんはたいしたものだ。案内を申し出てきた職員さんよりも若そうだけど、怯えるでもなく媚びるでもなく。すごくニュートラルな感じがする。
なんだかノアさんも話すのが楽しそう・・・に見える。断言できないのが残念だ。
植物談義を終えたノアさんに連れられて、植物園のカフェでお茶を飲むことにした。
「ミオ、先ほどはすまなかったな」
「ううん。私もハーブがいろいろ見られて楽しかったよ。ところで、ノアが植物園に来たのって薬草と穀物エリアが目当てだったんじゃないの?」
「・・・・なぜ分かる」
あれで分からないほうが変だろう・・・と言いたいけど、アニーの従兄だしスポンサーみたいなものだし。
「えーと、雰囲気?」
「何だそれは。まあ、確かにあのエリアが一番の目当てだった。だけどミオをここに案内したかったのも本当だ。いい場所だろう?」
「そうだね。とても静かで落ち着く場所だよ。お茶もケーキも美味しいしさ」
私がそういうと、ノアさんの目が穏やかになる。ちょっとホッとしてる・・・のかな。
「やっぱりミオは果物の入ったケーキが好きなのだな」
そういうと、ノアさんは優雅な手つきでお茶の入ったカップを手に取った。
確かに、私が頼んだのはリンゴとラズベリーのタルトで。見透かされてるようで恥ずかしくなってくる。今度はチョコレートのケーキにしてノアさんの意表をついてやるっ。
というか食べること前提か、私。一人ノリツッコミしてどうする。
植物園から戻って部屋でのんびりしていると、仕事を終えたアニーが顔を出した。そこでノアさんと植物園に行った話をした。
「それはよかった~。ノアにしては気が利いたことするわね」
「なんかね薬草と穀物のエリアが見たかったみたい。ついでにガイドもしようって思ったんじゃない?」
「・・・私、人選間違えた?」
「あははは。いいよ、植物見てると癒されるし、お茶とケーキも美味しかったから」
「ノアってさー、あの無表情を差し引いても家柄良し、資産ありなもんだから、昔っから女性とデートはしてたんだけど、行く場所が仕事絡みの場所ばっかりらしくて誰とも長続きしなくて」
「それは・・・ごめん、何となく分かるわ。でもまあ、いいよ。一人でのんびり見ることができたから」
私がそう言うと、アニーが私をしみじみと見た。
「なに?」
「ノアのこと、受け入れてくれてありがとね」
「なにを急に。だってアニーの従兄だし、いまだに喜怒哀楽は分からないけど、悪い人じゃないのは分かるよ」
「子供の頃はそれなりに表情あったのよ。私、笑った顔見たことあるもん」
なんですと?!あのノアさんが小さい頃は笑っていたのか!!
アニーが私の食いついた表情を目にして、自分やノアさん、カールさんの小さい頃の話をしてくれた。
今頃、ノアさんはくしゃみをしているだろうか・・・・ぷぷぷっ。
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くしゃみをした。
「ノア様、風邪ですか?」
「・・・違う」
「それならよろしいのですが」
ライナスは私の机にお茶を置いてくれたが、なぜか動こうとしない。いつもなら、失礼しますと引き下がっているのに。
「・・・どうしたライナス」
「ノア様。嘘はいけませんよ」
「何のことだ」
「本邸と王都の館が改装中だとは聞いておりません」
「これから改装の予定なんだ」
「大奥様とミオ様を会わせるのが嫌だからって大人気ないですよ、ノア様」
「・・・・・」
母がミオを見たら・・・・息子がアニーの命令とはいえガイドをしている若い女性→意に沿わないことは陛下の命令でもあっさり断る息子が了解している→すなわち、近頃全然そういう気配のない息子が気に入っている!!
こんなおめでたい方式ができあがりそうで、恐ろしい。ミオのことは嫌いではない。アニーの親友だし、くるくる表情が変わる様が楽しい。
それだけなのだが、きっと母上には分かってもらえないだろう。
読了ありがとうございました。
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ミオが少しずつノアの機微が分かってきているような気が・・・